市場や漁港で食べる刺身や煮魚、海鮮丼は格別です。近所の市場も遠くの魚河岸も、行ってみればそこは非日常、魚好きの楽園です。今回はそんな市場や漁港で楽しむ朝酒・昼酒の老舗や人気店をご紹介します。
いつかの旅行のプランにお役立ていただけたら幸いです。(2023/5/15加筆修正)
北海道
札幌『札幌中央卸売市場場外市場 / 定食 めし屋』
北海道唯一の中央卸売市場の場外には数多の鮮魚店が立ち並んでいます。道内各地から集められた魚介類が揃うため、魚種は非常に豊富。飲食店は、とくにディープでお得感があるお店をご紹介します。その名もずばり「定食めし屋」。
朝限定の四色海鮮丼は1,500円(写真の雲丹は追加トッピング)とは思えない豪華さです。生ビールはなくお酒はサッポロクラシックの缶ビールのみですが、楽しい朝酒になること間違いありません。
釧路「釧路和商市場 / 市場食堂 | 竹寿司」
北海道三大市場のひとつに数えられる釧路の民間市場「釧路和商市場」。道東観光の拠点であるJR釧路駅にも近いことから、出張や観光の乗り継ぎ時間を使っても利用することができます。
人気は市場のの刺身などを自由に組み合わせて自分だけの海鮮丼をつくる「勝手丼」。それだけでなく、市場併設の食堂や寿司店でも、比較的手頃で新鮮な釧路の海の幸が味わえます。
厚岸「厚岸漁業協同組合直売所」
漁協直営の直売所。名産の真牡蠣をはじめ、毛ガニやホッキ貝などがかなりリーズナブルに販売されています。牡蠣は1個単位で購入可能で、なんと120円という驚きの安さ。
宅配や持ち帰りがメインですが、場内にイートインコーナーがあり、電子レンジで簡単にできる蒸し牡蠣やお刺身が追加料金なし楽しめます。缶ビールや日本酒の販売もあります。
函館「はこだて自由市場」
函館は駅前の市場のほかにも「自由市場」という主に地元向けのマーケットがあります。函館名物のイカをはじめホタテなどを扱うお店が多く、お店によってはその場でお刺身にもしてくれます。
店頭に並ぶイカは新鮮そのもの。隣接するコンビニでお酒を購入し常識的な範囲内で持ち込むこと可能です。
また、場内にある食堂『市場亭』のヤリイカ刺しみ絶品。70年続く老舗です。
東北地方
岩手・宮古「宮古市魚菜市場」
三陸沖や素潜り漁が盛んなリアス式海岸など、多様な漁場がある三陸。港町の宮古には豊富な魚が集まります。
宮古市魚菜市場にはそんな三陸の魚介を扱う鮮魚店がいくつもあり、店頭で買った刺身などはその場で食べられます。併設した食堂でご飯を購入し、鮮魚店で買い集めた具材を乗っければオリジナルの海鮮丼の完成です。場内のコープスーパーで缶ビールやコップ酒が調達できます。
秋田「秋田市民市場」
秋田市民の台所、秋田市民市場。JR秋田駅から5分の場所にある協同組合型の市場です。早朝からお昼にかけて賑やかとなり、旬の日本海の美味しい魚介類が売買されています。アクセスの良さもあり、新幹線や飛行機の時間など、このあとの旅程があるというときにでもさくっと「市場で朝酒」できるので、ぜひ立ち寄られてみてはいかがです。
食堂、回転寿司店などのほか、鮮魚店から買ったものをその場で楽しめるイートインスペースも完備されています。お酒の販売あり。
市場内で魚介類を買い集めてオリジナルの丼ぶりをつくる「のっけ丼」も人気です。
福島・いわき「小名浜漁港 / うろこいち」
小名浜漁港に隣接する水産仲卸が直営する大箱の鮮魚店兼食堂のうろこいち。
小名浜で水揚げされるベタやキンキ、カレイ、遠洋のカツオやマグロなどが豊富に揃ろいます。観光用ではなく、主に水産関係者が利用する職域食堂といった感じですが、市場酒好きとしては、むしろそちらが嬉しいくらいです。
関東甲信越
茨城「那珂湊おさかな市場 / 久楽」
那珂湊漁港は、根魚やカツオだけでなく、マダイやメジマグロ、伊勢海老にアワビなど多種多様な魚類が水揚げされる、茨城を代表する漁港のひとつです。とくに茨城の県魚でもあるヒラメは県下最大の水揚げを誇ります。
併設の飲食店はどこも大人気。比較的古くからやっている久楽の海鮮丼はおすすめ。
千葉「松戸市場 / 江戸ッ子寿司」
市場の開設は1966年(昭和41年)。約4万6,000㎡の敷地に、水産、青果、関連物販の施設があり、6軒(取材時点)の飲食店を併設しています。
場内にある『江戸っ子寿司』は朝9時から暖簾を掲げる市場の寿司屋。市場仕入れの新鮮な魚介類が楽しめます。寿司だけでなく、刺身盛り合わせも絶品で、午前中からお酒が進むこと間違いありません。
東京・築地「築地場外市場 / 多け乃・本種」
言わずと知れた東京の魚タウン築地。中央卸売市場は豊洲に移転しましたが、仲卸が入る区営の施設や、昔からの場外市場はいまも活気に満ちています。
寿司店に代表される通り、市場酒スポットも数多。市場らしい雰囲気を楽しむならば、昭和10年創業の「多け乃」が筆者のおすすめです。
寿司も刺身もつまみたい、日曜日にも利用したい!という方には、本種もおすすめ。アルミサッシが入り口の不思議な屋台風の店です。奥は宴会もできる大部屋完備。夜は居酒屋になります。
東京・豊洲「豊洲市場 / 磯寿司」
築地の市場移転に伴い、場内にあった多くの飲食店も豊洲へ引っ越しました。新しい飲食店が入るエリアは商業施設のレストランフロアのようで、昔の築地の場内のようなゴチャゴチャ感がなく、ちょっぴり寂し気もします。ですが、お店の皆さんは築地時代のまま。
よく利用するお店は、築地時代から10年ほど通っている磯寿司です。
移転前の場内市場・磯寿司の様子はこちら
東京・北千住「千住大橋 / とくだ屋」
東京都唯一の魚介類専門の市場である足立市場。ここの市場内にある仲卸の直営の海鮮食堂「とくだ屋」は素敵な市場酒スポット。朝8時からやっています。定番の海鮮丼だけでなく、海鮮天丼やフライなども充実しています。
食堂ですが地酒も揃えられているのが特長で、朝から本格的に飲めてしまいます。
東京・大田「東京中央卸売市場 大田市場 / 三洋食堂」
東京都中央卸売市場大田市場。1989年(平成元年)に秋葉原の旧神田市場、五反田の旧荏原市場(蒲田分場)を、平和島の旧大森市場と一体化して開設さた、比較的新しい施設です。
市場内の食堂では、場内の仲卸から仕入れた魚を豪快に盛り付けた海鮮丼や天ぷらが楽しめます。
神奈川・横浜「横浜中央卸売市場 / さがみや」
横浜中央卸売市場の場内、関連棟にはいる「さがみや」は、なんと明治10年の創業。
市場関係者がワイシャツネクタイに作業着姿で次々やってくる市場の人向けの寿司店です。深夜から早朝にかけて働く市場関係者は、仕事終わりのお昼頃にはお酒を楽しむということも珍しくないそうで、明るい時間から独特の市場酒の楽しい雰囲気に満ちていました。
神奈川・新杉田「南部市場 / 南部亭」
かつては公設市場だった横浜の南部市場は、いまは商業施設と一体化し、地元密着の食のテーマパークになっています。市場の機能はそのまま維持されており、公設時代から食堂として営業していた店舗も営業中。レトロな食堂コーナーで、手頃な価格で豪快な盛りつけの海鮮丼が楽しめます。
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新潟・古町「青海ショッピングセンター / 本町鈴木鮮魚」
新潟古町エリアには、複数の鮮魚店が立ち並ぶエリアがあり、朝から市場のような活気があります。青海ショッピングセンターという古くからある長屋型の商店街の奥は、知る人ぞ知る市場飲みスポットです。
お酒の持ち込みも可能なので、新潟の朝食は缶ビール片手に鮮魚店のスペシャルな朝食を楽しみませんか。
新潟・古町「青海ショッピングセンター / 古川鮮魚」
のどぐろ入りの刺盛りと小鉢、ビールがついたちょい飲みセット(1,500円)がとってもオトク。3代目が毎朝魚河岸で仕入れています。佐渡沖の新鮮な魚介類を満喫できるおすすめの一軒。
中部・北陸
静岡・沼津「沼津港 / にし与」
魚の水揚げ量は県内一位の沼津港。観光向けの大型の飲食店も多数ありますが、古くからの食堂でビール片手に飲むのもいいものです。
おすすめは関係者や地元の魚好きが集まる市場の食堂「にし与」。
朝6時からやっています。
静岡「清水港 / どんぶり君」
1989年からやっている、清水の漁協事務所に隣接した食堂「どんぶり君」。
刺身や海鮮丼よりも、揚げ物が充実している珍しいタイプのお店です。窓の外は清水港、浜の潮風を感じながら、朝から瓶ビールを1本つけて楽しいひとときを。
福井「福井市中央卸売市場 / 喜多亭」
越前の海の幸が集まる福井市場にはいる食堂へ。山盛りの海鮮丼は市場関係者にも評判。駅からバスで向かう距離ですが、行く価値は十分にあります。
福井・小浜「若狭フィシャーマンズワーフ / とれとれ寿司」
小浜港にある蘇洞門めぐり遊覧船の発着場を兼ねた鮮魚店や飲食店が入る施設。ここにある「とれとれ食堂」では、店内で売られている魚介類をそのままイートインコーナーで楽しめます。紅ズワイガニが1パイ1,200円ほどとかなりリーズナブル。朝8時30分から営業。
愛知・名古屋「名古屋中央卸売市場 / 一力」
名古屋の台所、中央卸売市場の管理棟にある創業70年の食堂「一力」。安くてボリューム満点の魚が大量に並び、自分で好きな組わせで定食を組むことができるなど個性もあります。
写真の海鮮ちらし丼(朝6時30分から数量限定)は、これでなんと900円!名古屋の朝酒スポットはとってもお値打ちです。
西日本
大阪「大阪中央卸売市場本場 / 大輝」
起源を豊臣秀吉の大阪城築城の頃まで遡る、大阪の大規模食品市場。「天下の台所」とまで呼ばれたこの街の食料流通を支え、関西食文化を生み出す基礎の役割を果たしてきました。
ここで市場関係者に親しまれている食堂が「大輝」です。
岸和田「岸和田青果市場 / 市場食堂」
兵庫・明石「明石市地方卸売市場 / みなと食堂」
淡路島を結ぶ淡路島ジェノバラインの発着場の目の前にあり、水産物市場の目と鼻の先にある食堂です。朝7時からやっており、早朝から飲めます。
ここも漁業・水産関係者が集う地元向けのお店です。創業は昭和15年。
境港「鳥取県営境港水産物地方卸売市場 / かいがん」
市場前で一軒だけポツンと営業している『お食事処かいがん』は漁港・市場関係者御用達の店。水産流通で働いていた大将が2006年に開店。カレーライスから海鮮丼まで幅広く扱いがあり、単品ではモサエビ刺身なども揃えています。週末は観光客が多く、境港が漁獲量日本一を誇る紅ズワイガニの食べ放題を頼む人もいるそうです。
愛媛・八幡浜「八幡浜港どーや市場 / どーや食堂」
魚が豊富にあがる八幡浜は、市場内に並ぶ魚も驚くほど安くて新鮮。漁港の魅力度としてここは非常に高いです。
どーや食堂は市場直営の食堂です。写真のまかない海鮮丼はこれで600円!朝から営業、生ビールの用意もあり、フェリーで四国上陸する際の四国一杯目としてもおすすめです。
高知「高知市場 / 幸寿し」
京都市場に次いで二番目に長い歴史を持つ市場。
港に突き出した構造で、接岸した漁船から直接市場への搬入が行われています。水揚げ直後の魚介類はすぐにセリにかけられ、昼には高知の飲食店に届く。高知で食べる魚が美味しい理由のひとつがここにあります。
市場内の老舗寿司屋は安くて新鮮です!
山口・下関「下関港 / 一善」
港湾エリアが中心市街という下関。ここで歴史ある朝酒可能な食堂といえば「「一膳」です。マナガツオやタチウオなど地元でとれた魚介類がずられと並びます。なかでも、貝汁やくじら汁といった汁ものが人気で、大きめのお椀一杯にだしてくれます。
港町の朝から飲める食堂には特有の空気感があり、これが非日常でなかなかいいものです。
九州
福岡「福岡市中央卸売市場 / 博多魚がし」
なんと中心街のすぐ近くにあります。しかも、全国的にも珍しい、漁業者が直接漁船を接岸して市場内に水揚げできる「産地市場」の機能を有しています。
場内にある「食堂博多魚がし」は市場らしい朝型の営業時間で、7時から14時過ぎまで。居酒屋づかいできる店ですが、夜は営業していません。その代わり、朝から飲みたい人には最強の一軒です。
長崎「長崎地方卸売市場 / 水産食堂」
長崎で朝から美味しい魚をつまみに飲むならば、長崎魚市場の食堂『水産食堂』!漁業・市場関係者向けの施設ですがお酒も提供されており、一般の方も利用可能。長崎市中心部から路線バスを利用すれば、気軽に行けます。
鹿児島「鹿児島中央卸売市場魚類市場 / 市場食堂」
鹿児島中央卸売市場魚類市場内にあり、70年以上の歴史を持つ老舗の職域食堂です。錦江湾をはじめとした鹿児島の海から水揚げされたばかりの新鮮な魚介類を手頃な価格で味わえます。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)