大阪・野田『大輝』市場奥深く朝5時開店、自家製出汁の海鮮丼と麦酒

大阪・野田『大輝』市場奥深く朝5時開店、自家製出汁の海鮮丼と麦酒

2021年12月23日

朝酒楽しむならば市場へ。大阪中央卸売市場の場内にある食堂『大輝』をご紹介します。旅館の料理長から市場の職域食堂へ転身した大将の店です。朝の安治川散歩からの海鮮丼とキリンラガーはいかがですか。

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野田は市場の町、大阪中央卸売市場本場

起源を豊臣秀吉の大阪城築城の頃まで遡る、大阪の大規模食品市場。「天下の台所」とまで呼ばれたこの街の食料流通を支え、関西食文化を生み出す基礎の役割を果たしてきました。1918年には全国に先立ち大阪市による公設小売市場が設置されています。

水運、陸運に長けた野田の町に大阪市中央卸売市場が開場したのは、1931年(昭和6年)のこと。なお、東京の築地市場の開設は1935年でした。東洋一の総合市場として、開設翌年の1932年では取扱量は39万トンに、1970年には120万トンを記録します。現在は市場の役割が多様化しつつも、大阪の食を基礎を支えています。(参考:大阪市 中央卸売市場 本場業務管理グループ)

アクセスはJR野田駅や地下鉄阿波座駅から徒歩10分。遅めの朝食がてら、ふらっと飲みに行くのには丁度いい場所です。ここは卸売市場ですので、千人規模の人々の職場であり、物流の拠点。お邪魔させてもらう気持ちで、安全第一でそっと訪ねます。

大阪市中央卸売市場綜合直売協同組合のホームページによると、関連事業者である飲食店は11軒あり、寿司、カレー、中華料理、うどん店などが入居し、市場で働く人々の胃袋を支えています。

大輝は市場の職域食堂

外観

正門から8分近く市場内を歩いた先にある『大輝』。存在を事前に知らないと、関係者や周辺住民でもない限り、なかなか入りにくい場所にあります。ターレーやフォークリフトが行き交う中ですが、一般の人も利用可能。

内観

テーブル席が並ぶ店内。アットホームな雰囲気です。市場特有の、午前中なのにすでに夕方のムードが漂っているのも素敵です。営業時間は朝5時から13時過ぎまで。

長靴にウインドブレーカー姿の市場関係者、事務、トラックドライバーなどに混ざって、こちらもいただきます。

壁には市場マップが大きく張り出されています。お客さんや店員さんの会話から、やはり市場でその日仕入れたものを食堂の料理として提供しているようです。

乾杯は瓶ビール「キリンラガー」で

朝酒を市場で楽しむことが多い筆者。大都市は朝からお酒を提供する店はいたるところにありますが、市場の食堂を選ぶには理由があります。ここは、すでに深夜・早朝勤務を終えた人たちが安堵の表情で飲んでいます。お酒は一人で飲んでいても、店全体の飲酒ムードが結構大事だと思います。市場の食堂は、非常に健康的で爽やかな朝酒スポットではないでしょうか。

では、キリンラガー(中びん550円)で乾杯。

品書き

お酒

瓶ビール中瓶キリンラガー):550円、瓶ビール大瓶キリンラガー):600円、新ジャンル・のどごし生:250円、日本酒1合:400円

日替わり黒板メニュー

大輝定食・とん平焼き定食:800円、サバみそ煮定食:800円、鮭カマ煮定食:1,000円、紅鮭塩焼定食:750円、カレイ煮付定食:750円、マグロホホ肉タタキ定食:1,500円。※仕入れ次第で変更

定番メニュー

海鮮丼:1,600円、サーモンいくら丼:1,700円、まぐろ鉄火丼:850円、親子丼:700円、鳥照り焼き丼:600円、出汁巻き定食:700円、肉うどん:700円、粕汁:350円、豚角煮:200円、海老天:100円、イカ天2切:150円など。

スタミナ系定食から海鮮丼まで揃う

名物・海鮮丼(1,600円)

市場内で仕入れたての魚介類をふんだんに載せた海鮮丼。市場といえば海鮮丼というのは安易な考えと思うかもしれませんが、それでも市場ごとの個性があって面白いものです。地域の食材だったり、大阪や東京のような大都市の卸売市場では全国の魚が一堂に会していたりと、バロメーター的なものだと思います。

ご主人がつくるお店特製の出汁醤油をつけて食べるのが大輝の海鮮丼の特徴です。盛り付けは日々の仕入れで変わりますが、取材時は縞海老をはじめ、ほたて、ぶり、ひらめ、イカ、まぐろがごろごろと入り、中心には珍しく温泉卵がのっています。

刺身はどれもものがよく、魚を食べ慣れているであろう市場関係者もお造り定食を食べている理由がよくわかります。

広く浅く薄く刺身を敷き詰めた海鮮丼とは真逆。食べていくと具の下からさらに具がでてきます。本質的な魅力を伝えるのは難しいのですが、この内容でビールをつけて約二千円ならば十分に価値があると思います。

東京の中央卸売市場本場と違って、観光地化はまったくといってされていません。入りにくい雰囲気ですが、そこには本来の市場の食堂の姿が今も残されています。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名大輝
住所大阪府大阪市福島区野田1-1-86 大阪市中央卸売市場本場 市場東棟1F 南4通り Q-4
営業時間5:00~14:00(臨時休場日は11:00~14:00・日祝定休)
開業年2009年頃