新宿・歌舞伎町で貴重な大衆酒場『やきとり萬太郎』。備長炭で焼き上げる串は1本150円、赤星大瓶620円、突き出しなしの明朗会計の店です。新宿の喧騒が嘘のように、店内は典型的な家族経営酒場のあったかいムードに満ちています。
目次
靖国通りの先にも、いい店はたくさんある
宴会シーズンになると毎回メディアで取り上げられる、歓楽街のトラブル。眠らない街・歌舞伎町はその最たる場所として紹介されますが、この街にも良心的な店はたくさんあります。焼鳥、大衆中華など、意外と老舗は多く残っており、飲み慣れたお客さんが圧倒的に多いのが特徴です。
小さな店が連なる思い出横丁やゴールデン街、老舗居酒屋が多い新宿三丁目末広亭界隈にとどまらず、ときには歌舞伎町の酒場を覗いてみるのも楽しいと思います。きっと新宿の新たな表情に出会うはずです。
2代目が守る萬太郎
今回ご紹介する萬太郎は、そんな新宿歌舞伎町の路地に店を構える、昔ながらのやきとり酒場です。
皿の一枚まで昔のままの店ですが、10m横では、地上48階建て・高さ225mの「東急歌舞伎町タワー」が建設中。変わりゆく歌舞伎町にあって、ここはタイムカプセル的な存在としていつまでも続いてほしいです。
外観
やきとり萬太郎がここで店を開いたのは1993年(平成5年)のこと。初代ご主人は埼玉で肉料理の修行を経て、1972年(昭和47年)に独立。立川で焼肉店を営み、その後新宿に移転しました。新宿からは焼鳥・豚もつ焼きの「やきとり」業態にするも、牛センマイ刺しや豚足など、焼肉店時代からの名物料理が引き継がれています。
2020年以降の飲食店を取り巻く状況の変化等もあり、初代ご主人は引退され、現在はお子さん兄妹が二代目として店を守っています。萬太郎は、同店のほかに歌舞伎町内に『萬太郎 Jr.』という支店を1998年から営業し、二代目のお兄さんは両店を行き来しています。
内観
常連さんや一人客が集うカウンター席と、6人テーブルを3列を配置したコンパクトなつくり。道路に面した焼台には初代の姿はもうありませんが、築60余年の建物にはいる同店の雰囲気は、あの頃と同じ、しみじみとした趣があります。
乾杯は大瓶のサッポロラガーで
この雰囲気に一番しっくりくるのは赤星でしょう。トクトクとビヤタンを満たして、では乾杯。
品書き
飲み物
ビールは樽生がサッポロ黒ラベル:500円、瓶ビールはサッポロラガー大瓶:620円、キリンラガー大瓶:620円。
割り物・サワー系は、ホッピーセット白・黒セット:500円、中:280円、外:220円、レモンサワー:420円、男梅サワー:420円、デュワーズハイボール:420円など。日本酒は東京の酒場での定番酒には珍しい盛岡のあさ開:440円。
なお、サワーやハイボールは「濃い目で」とお願いするとサービスしてくれます。(店内に記載あり)
料理
串はスナギモ、鶏つくね、カシラ、タンなど1本150円がほとんどで、22種類と豊富。
お店のオススメ料理は、モヤシナムル:280円、ハツモトの甘辛煮:330円、牛スジの煮込み:580円。昔はレバ刺しやユッケも人気メニューでした。
短冊とホワイトボード
ホワイトボードには辛口ヤリイカの塩辛、ガツ刺しポン酢、豚耳の玉ねぎ和え、韓国風サキイカの和え物など。黒い短冊は以前の木製のものから新しくなりましたが、それでも味わいがあります。
世代は変わっても、変わらず美味しい人気メニュー
モヤシナムル(280円)
ほどよくクタッとした、ごま油の効いたもやしがクセになります。ボリュームがあり、焼き物を待つまでの時間、ずっと付き合ってくれる頼もしい一品。
ハツモトの甘辛煮(330円)
筆者のイチオシは、ハツモトの甘辛煮。甘辛くて、しっかりとした食感の中から濃厚な旨味がにじみ出て、これが赤星(サッポロラガー)と抜群によくあいます。手頃な値段ですし、ぜひ頼んでみてほしい一品。
手羽先(200円)・ピーマン(170円)
パリッと皮が張った手羽先は見た目同様、香り、味ともにとてもいいです。ピーマンと一緒に頬張り脂と苦味を交互に楽しみました。
梅サワー(420円)
梅サワーは梅干しを使用したしょっぱいものではなく、梅シロップベースのほんのりと甘いもの。
キリンラガー(620円)ともつ焼き(150円)
若いのに飲みっぷりや振る舞いが黒帯級のノンベエ二人組、ジャンパーに野球帽姿の常連さんたち。いろんな人が思い思いに、雰囲気を壊さないように飲んでいるのは新宿の老舗らしくて素敵です。
昭和歌謡が延々と流れる中、炭火の香りがついたタンを頬張りながら、もう少し新宿で心をチャージしたいと思います。
ごちそうさま。
系列店
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 萬太郎 |
住所 | 東京都新宿区歌舞伎町1-28-6 中銀新宿第三ビル 1F |
営業時間 | 営業時間 16:30~23:30(L.O.23:00) 定休日 日曜日、祝日 |
開業年 | 1972年(新宿に店を開いたのには1993年) |