浅草のまん真ん中、新仲見世通りにある『つるや』を訪ねます。こちらは、創業は昭和6年という鰻と天丼の名店。手頃な価格で本格的な味が楽しめるため、近隣で働く人や浅草っ子が日常的に通う一軒。門前町の店として参拝者や冠婚葬祭でも利用されてきました。今回は、浅草一丁目らしい、由緒ある老舗の魅力をご紹介します。
浅草の歴史とともに歩む111席の老舗

東京を代表する観光地、浅草。そのまん真ん中、土産物店が立ち並ぶ新仲見世商店街にやってきました。昔は喫茶店のメッカでしたが、現在は外国人観光客向けの華やかな飲食店が増加中。

そんなエリアで、変わらず落ち着いた日本家屋の風情を残す和食の店が『つるや』です。昭和6年に創業し、東京大空襲をはじめとした幾多の困難を乗り越え、まもなく百年を迎えようとしています。

1階から3階まで計111席を備える立派な造りで、用途に合わせてフロアが分かれています。1階はテーブル席と小上がりが中心となっており、ご隠居さんから仕事帰りの若いお一人さままで、老若男女問わず食事やお酒を楽しんでいる様子。
外国からの旅行客も立ち寄る土地柄ながら、一見客だけを相手にする手抜きは一切ありません。地元の人々に長く愛され続けている理由は、この誠実な商いにあります。近隣で代々ご商売をされてきた店主さんらも太鼓判のお店です。
鰻と天丼は東京の郷土料理

席に着き、まずはビールを注文します。樽生はヱビスを用意していますが、今日はサッポロ生ビール黒ラベルの中瓶の気分。グラスを満たして、一人静かに乾杯といきましょう。
看板料理は鰻と天丼。浅草は、鰻も天丼も名店がひしめき合う街ですが、両方揃う老舗は案外珍しい。

今回は地元で人気、日常使いできる天丼を注文しました。立派な海老天が2本と、半分に切られたキスが乗った正統派。良質なごま油で揚げられた衣が食欲を刺激する仕上がりです。野菜天を盛った天丼も増えましたが、本来の天ぷらは魚介類だけを用いたもの。昔ながらのスタイルを貫いています。

揚げたての天ぷらは、秘伝のタレに直接くぐらせてからご飯の上へ。蓋を締めて軽くご飯の上記で蒸らして完成です。

丼ぶりで軽く蒸されているので『つるや』の天丼の天ぷらはしっとり系。衣の奥深くまでタレが染み込んでいるのに、重たさを感じさせません。タレは色が濃すぎず、出汁の旨味がしっかりと効いた味わい。ほんのりと生姜の風味が香り、揚げ物の油を中和してキレを生み出しています。
たれが染みたごはんでお酒が進む

しっとりとした衣の海老を一口かじると、身がぷりっと弾ける感触。昨今はサクサクの天丼がもてはやされる傾向にありますが、天丼の醍醐味はタレが染み込んだしっとり感にあると思います。
天ぷらもメインながら、たれが染みたごはんの存在も見逃せません。丼の底までタレがしっかり染み渡り、これだけでお酒が進む立派なおつまみになります。優しいおだしのお吸い物を一口飲めば、思わず「はぁ~」と自然に声が出ちゃうはず。
喧騒を離れて浅草の粋を味わうひととき

天丼と並んで、関東風にふっくらと蒸し上げられたうなぎ料理も評判。甘さを控えたキリッとした醤油ベースのタレは、大人向けの洗練された口当たりなんです。地酒も揃っていて、高知県の銘酒「船中八策」など、辛口の日本酒と合わせるのも一興。
自店仕込みの新鮮なドジョウを使った柳川をはじめとしたおつまみも揃っており、通し営業ということもありお昼すぎからお酒を楽しむ黒帯ノンベエさんも多いです。
浅草のまん真ん中で、変わらぬ味と空間を守り続ける老舗。散策の合間に訪ねてみては。
| 店名 | つるや |
| 住所 | 東京都台東区浅草1丁目33−2 |
| 営業時間 | 11時30分~20時00分 水定休 |
| 創業 | 1931年 |
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