500円あれば美味しい“アテ”とお酒が飲める。それが大阪です。物価高騰の今でもそれは変わりません。西成で安・旨な店といえば、ホルモン料理の立ち飲み『マルフク』です。ピリ辛味のホルモン(190円)に樽ハイレモン(270円)をあわせて460円。朝8時の開店。ここには西成流の「モーニング」がここにあります。
西成は、いまや人気の飲み歩きスポットに
外観
はじめて西成を歩いたのは約25年前。当時小学生だった私は、父親とその友人に連れられて朝からやっている食堂にいきました。驚くほど安いサバ塩焼き定食を食べたことを今でも覚えています。あのとき感じた新今宮駅(動物園前駅)の南側のイメージは強烈なものがありました。
酒場好きになった私は、大人になってから何度も西成で飲むようになりましたが、それでも店を選ぶときは他の街よりも慎重でした。勇気がなく、なかなか入れずにいたお店が、実は今回ご紹介する『マルフク』です。
堺筋に構える屋台のよな小さな立ち飲み店で、開け広げた店先からは美味しそうな香りを漂わせています。基本的に無休で、朝8時から夜22時過ぎまで営業しており、いつ来てもジャンパーや野球帽姿の黒帯飲兵衛さんたちで満員だったのです。
そんな『マルフク』も、街の変化とともに客層も変わっていき、いまでは若い人の姿も多くディープな雰囲気は幾分薄まりました。
内観
道路側に向いたふたつの鉄板では、常にホルモンなどの肉類が焼かれ続けています。途切れることないお客さんが次々注文するので、一度に大量に炒めた看板料理のホルモンも、みるみるうちに山が消えていきます。
鉄板の後ろは豚足煮・煮玉子用の鍋や、水冷式の冷蔵庫、チューハイ用のディスペンサーなどが所狭しと並べられ、L字型のカウンターが回り込んでいます。このカウンターが朝から閉店まで常に満員状態になるのです。お店の方の案内や、先に飲んでいるお客さんたちが譲り合ってくれるので、意外と満員に見えても入れます。
品書き
お酒
ビールはアサヒスーパードライ大瓶:490円、小瓶:270円。
そのほか、樽ハイレモン:270円、角ハイボール:270円。日本酒は神戸酒心館(神戸市)の福寿:270円。泡盛:270円、芋焼酎黒霧島:270円など。
料理
ホルモン:190円、レバー:190円、豚アブラ:190円、トントロ:270円、豚ハラミ:270円、豚足煮込み:270円、牛スジ:270円、牛ハラミ:350円、牛バラ:350円、煮タマゴ:100円、キムチ(自家製):100円など。希少部位のハナスジ(豚の鼻の筋)湯引き:270円もあります。
一度は食べたい、西成の味
アサヒスーパードライ(490円)
なにはともあれ、ビールから。芯までよく冷えたアサヒスーパードライがでてきました。プラコップに注いでいただきます。それでは乾杯!
ホルモン(190円)
右の大きな鉄板にはホルモンとレバーの山。左では牛バラや豚タンなどを焼いています。
ホルモンはボイルしたものを一度に炒めておき、注文を受けると、鉄板中央で旨辛のタレと和えて軽く炒め直してから提供されます。
2022年10月に価格改定し190円になりました。それでもやっぱり安い!破損の心配のないトレーに盛るのが、ここのスタイル。
鮮度がわかる、プリプリの歯ごたえ。甘辛いタレの味付けもあって、ホルモン特有のクセはそのまま美味しさに変化しています。ネギや七味をかけて味を引き締めて食べるのも人気。
豚ハラミ(280円)
ホルモンだけでなく、牛や豚のハラミやタンなども途切れることなく注文が飛んできます。豪快に盛り付けられたハラミは、このボリュームで280円。スタミナたっぷりの味付けは、ビールが進むこと間違いなし。
樽ハイレモン(270円)
だんだん口の中が脂で重たくなってきたところで、樽ハイレモンの存在が嬉しくなります。中身はアサヒビールが製造するほんのり甘い樽ハイ倶楽部レモンです。これまたペコペコのカップで、なんだか縁日で飲んでいるような気分になります。
さて、次回西成『マルフク』を訪ねた際は、豚足煮にしましょうか。自家製だというキムチも美味しそうです。
敷居の高さを感じるディープさがあるものの、店の皆さんはとてもフレンドリーです。一度勇気を出して飛び込んでしまえば楽しめるはず。好きな人にはたまらない雰囲気です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | マルフク本店 |
住所 | 大阪府大阪市西成区太子1-6-16 |
営業時間 | 8:00~22:30(無休) |
開業年 | 1983年 |