明治時代に鮮魚店として創業し、1955年に大衆酒場に業態を変えた海鮮酒場『魚三』。門前仲町にある本店のほかに、家族が開業させた支店が新小岩と常盤(森下)にあります。老舗の熱量と、驚きの安さ、豪快な盛り付けで、魚三に魅了される人は跡を絶ちません。
目次
新しいけどレトロ、森下にある魚三常盤店
立派な常盤魚三ビル
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今回紹介する魚三は、地下鉄新宿線・大江戸線の森下駅近くにある『魚三常盤店』。お店はどこかと探さなくても、バス通りの清澄通りに3階分の高さを有する巨大な電照袖看板に「大衆酒場魚三」の文字があるのですぐにみつけられるでしょう。
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老舗酒場ではあるものの、お店は比較的新しい9階建てのビルの1階に暖簾を掲げています。ちなみに、建物名も「常盤魚三ビル」です。
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開店時間の午後4時が近づくと、店の前には行列ができます。客層は幅広く老若男女に親しまれていることがわかります。10年数年前に初めて飲みに行ったときは黒帯のノンベエさんばかりでしたが、最近は若いカップルや酒場好きのグループが噂を聞きつけてやってきます。
乾杯は「アサヒプレミアム生ビール 熟撰」で
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にぎやかな店内。巨大なコの字カウンターを1人で忙しく行ったりきたり働くお姉さん。壁一面を埋め尽くす膨大な短冊の品書き。圧倒させられますが、ここから料理が来るまでが魚三の山場。
いざ注文となるわけですが、最初が肝心です。料理をじっくり見る前に、まずはお姉さんのテンポにあわせて、1杯をさくっと注文。アサヒプレミアム生ビール 熟撰で乾杯!
品書き
お酒のメニュー
生ビール「アサヒスーパードライ」小:470円・大680円、瓶ビール「アサヒスーパードライ」大瓶:550円、黒ビール「アサヒドライブラック」小瓶:400円、お酒:190円、大徳利:1,450円、大関:400円、枡酒「白鹿」:400円、生酒:600円、ウイスキーブラックニッカ:380円、ワイン:1,100円ほか。
100品近い短冊メニュー
膨大な品書きが店の各所にはられているので、ざっと見渡して気になるものを素早く見つけたいです。正面左が刺身、右はフライや煮物と大雑把に別れています。
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刺身は、赤身まぐろ:440円、中とろ:670円、大とろ:880円、まぐろ中おち:410円、甘えび:360円、たこぶつ:380円、青やぎ:380円、〆さば:370円、かわはぎ:570円ほか。サザエ刺し:670円や、肝付あわび:660円など、高級食材もさらっと混ざっています。もちろんリーズナブルに。
副菜では、玉子焼:290円、べったら:170円、煮こごり:350円、ままかり酢漬け:280円、湯豆腐:260円、おつゆ:100円など。
煮魚は、破格のあら煮:50円や、赤魚煮:390円、いわし煮:360円、あじ煮:410円、いいだこ煮:350円など。
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揚げ物は、はぜ天、めごち天、キス天(各420円)と、東京らしい小魚系の天ぷらをはじめ、あさりかき揚げ:390円、海老フライ:570円など。
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焼き魚は右に回り込んで貼られており、こちらも要チェック。鯛かぶと焼:400円~、さんま焼き:470円、うなぎ蒲やき:690円など。
なお、品切れや入荷がない料理もあり、第2候補を考えておくとよりスムーズです。
一通りまわって感じる、おさかな天国!
久しぶりに魚三を訪ねると、その品数、価格など、そのパワフルさに驚き、その努力につくづく感動します。単純に「コストパフォーマンスがイイ」と表現するだけでは、とても魚三の魅力を説明しきれません。
代々受け継がれてきた魚三の仕入れルート。その恩恵を受けて楽しませてもらいましょう。なにせ、築地市場が完成するより前から、東京の魚河岸を出入りされていた魚三ですから。
赤身まぐろ(440円)
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まずは赤身から。目立つスジがなく、しっかりと濃紅の身はみるからに美味しそう。弾力があり、噛むとねっとりとした旨さが舌を包みます。
生ビール大(680円)と大とろ(880円)
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思わず、「ふへへ」とへんな笑いが溢れてしまいそう。大トロと大生の贅沢な並びです。ねっとり美味しい本マグロの大トロを、この量で1,000円以下で食べられるのです。
鯛さしみ(470円)
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鮮度がよいようで、かなりコリコリとした食感。上品な脂の旨味が噛むほどに溢れてきます。
魚三は仕入れる魚のほとんどが丸魚で、刺身や焼き魚、あら煮などで使い切ります。右奥のお客さんが鯛かぶと焼を食べていましたが、眼を見張るほど巨大でした。相当立派な真鯛だったのでしょう。
うに(時価)
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魚三なら、時価と書いてあるうに(箱雲丹)だって、勢いで頼んでも予算オーバーの心配なし。
焼ハマグリ(500円)
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本日のおすすめとして加わる料理があります。定番ではないものの、焼ハマグリは日本酒をたっぷり飲みたいときにはぜひ頼みたい逸品です。
お酒(190円)
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お酒を注文すると、あっという間にグラスがセットされ、5合は入るような大徳利から勢いよく注いでくれます。予め温まっているので、熱燗もあっという間。
銘柄を気にせず、ぐいっと飲んでもりもりと魚介類を頬張れば幸せ間違いなし。
穴子天(390円)
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揚げたての天ぷらも刺身同様にリーズナブル。とくに食べごたえと老舗の情緒、なにより美味しさで満足度が高いのは穴子天(390円)です。
白魚かき揚げ(410円)
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ザクザクと食べて、旨味が心地いい白魚のかき揚げ。
大関(400円)
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酒場ならではの定番銘柄の小瓶。瓶ごと湯煎でお燗がつけられることで重宝されていますが、魚三でもとても似合いますね。
〆はおつゆ(100円)
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常連さんの多くが最後に注文する、おつゆ。隠れた名物です。100円ととても安いですが、ブリや鯛、カワハギなどのアラがたっぷり。濁りがなく、風味も澄んでいて、これがなかなか美味しくお酒を誘います。瓶ビール大瓶やお燗酒を追加で頼んでしまいます。
ちなみに、おつゆを豪華にした、お大臣さま向け的な料理、その名も「スペシャル」(530円)というものが存在します。ハマグリなど高級な魚介類が入る潮汁に卵をおとした豪華仕様。
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魚三は怖くない。お互い敬意を払って
安くて美味しいのでお客さんが次々やってきます。お店の人も、お客さんも、みんなで心地よく過ごせるために、配慮と敬意が大切です。
- 開店後、もし満席ならば店内に並びます。
- お姉さんの席への誘導を待って座ります。
- カウンターの店です。お客さん同士の距離も近い(アクリル設置)ので、両隣に簡単な会釈を。
- 箸とお皿を出してくれるタイミングで1杯目のお酒を注文。注文は事前に決めて、短時間でシンプルに。
- 注文は少しずつ。
- 忙しいので、呼びつけないよう注文はタイミングを見計らう。
ルールというほどのことではありません。店員さんのタイミングを考慮しつつ、大きい声で呼びつけることなく、アイコンタクトがとれるぐらいを心がければ、きっと心地よく過ごせます。
魚が美味しくなる今の季節、魚三で魚介料理を心ゆくまで楽しみたいですね!
ごちそうさま。
近くの居酒屋
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 魚三酒場 常盤店 |
住所 | 東京都江東区常盤2-10-7 常盤魚三ビル 1~2F |
営業時間 | 16:00~22:00(日祝定休) |
開業年 | 1955年(鮮魚店としては明治創業) |