「旅先の市場は好きだけど、持って帰れない…。できれば、ここで食べたい!」そんなニーズに応えてくれる市場が増えました。『秋田市民市場』もそのひとつ。鮮魚店に並ぶ魚介類を捌いてもらい、オリジナルの海鮮丼がつくれます。市場内の酒販店で売られている日本酒とあわせて、最高の市場酒タイムを!
市民の台所は、秋田駅前の朝・昼飲み処
取材出張でやってきた秋田。冬の秋田は日本海から吹き付ける風と豪雪で足止めされることも多いので、旅程に余裕を持たせています。
時刻は10時過ぎ。列車は定刻に秋田駅につきました。遅れたら駅ナカの蕎麦屋かなと思っていましたが、約束の時間まで余裕があるので、「市場」で遅めの朝食を食べようと思います。
2017年、秋田駅は秋田杉を壁一面にあしらったぬくもりのある空間にうまれかわりました。その中央に鎮座するのは巨大な秋田犬。改札前の新名所です。
秋田市民市場はJR秋田駅から徒歩7分ほど。雪みちを慎重に歩いてやってきました。「市民市場」の名の通り、公営の市場(しじょう)ではなく、1951年(昭和26年)開設の商店組合「朝倉市民市場」を原点とする歴史ある民間の市場(いちば)です。
早朝から多数の鮮魚店や青果店、酒販店、雑貨店が営業しています。近隣飲食店が仕入れにくるほか、地元の買い物客の姿も。市場内には回転寿司や食堂があり、食事処としても賑わっています。
のっけ丼は酒屋がスタート地点
市場内を自由に回遊し、気になるものを購入し海鮮丼の具材にできる楽しみ方が”のっけ丼“です。出来上がった丼ぶりは市場内のテーブル席で楽しめます。もちろん飲酒もOKです。
のっけ丼の案内や容器を提供してくれるのは、酒屋兼案内所を兼ねた「あきた市民市場メイト」。酒屋がスタートならば、まずは日本酒を購入しなくては。
「のっけ丼をやりたいです」と伝えると、トレーと地図、割り箸や醤油など一式手渡されます。この地図にある対象店(なんもだ協力店)を巡り、好きなもの組み合わせるという流れです。
地図をみながら、市場内を探検
- のっけ丼一式をゲット
- 割り箸だけでなく、醤油や皿、お手拭きまで揃っています!
- 1.ご飯をゲット!
- 市場内の惣菜店「惣菜市場」で丼ぶりごはんを購入します。160円ほど。もちろんご飯はあきたこまち。
- 2.市場を歩きトッピングを探す!
- 市場内の対象店を巡り、好きなものを選びます。丸魚や魚をその場で裁き、刺身にしてくれる店あります。
相原鮮魚店では、ソイのサクを海鮮丼用に切り分けてもらいました。
1軒目でホッキ貝、2軒目でソイ。もう1品ほしいので、今度は魚卵を扱う店へ。すじこを一口サイズ200円ほどで購入。こういう買いものめぐりが市場の楽しみですね!
- 3.揃ったら、テーブル席へ
- 専用スペースでゆったりと市場の景色を眺めながら、特製の海鮮丼をいただきます!
土地の魚と酒があわないはずがない
純米吟醸 鳥海山
市場内の酒販店は秋田の地酒が勢ぞろいしています。駅ナカの酒販店もすごいですが、市場も負けていません。
高清水、刈穂、天の戸、雪の茅舎、まんさくの花、天寿、爛漫、太平山など並ぶ錚々たる顔ぶれ。しかも市場内で飲みやすい300ml瓶も豊富で、コップまで用意してくれます。
選んだお酒は由利本荘の酒蔵・天寿酒造の『純米吟醸 鳥海山』。酒屋の小売価格ですからとってもお手頃。のっけ丼を頼まなくても市場内の席で飲酒、試飲ができるので、ここもある意味角打ちです。
それでは乾杯!
果実のような酸味が心地よい純米吟醸鳥海山に舌鼓を打ちながら、買ってきた魚を並べていきます。ソイもこんなにたっぷりで数百円。もちろん鮮度がよいのは言うまでもありません。市場飲みって素晴らしい!
のっけ丼の完成
数分前に捌いてもらった活ホッキの横にソイをずらっと並べ、すじこもトッピング。お酒をあわせても1,000円台でつくれた、オリジナルの朝飲みセットの完成です。
まずはホッキから。シャキシャキとした歯ごたえと、広がる上品な甘味。活ホッキならではの味わいです。あとから追いかけてくる旨味が実に心地良く、すかさず鳥海山をきゅっと一口。
すじこは彩り程度と思いましたが、これも実にいい味です。柔らかく弾ける食感と濃いめの旨味がたまりません。
ソイは鮮度がよくてまだかたいですが、噛むほどに脂の甘さが溶け出してきます。口中香が上品でその余韻が吟醸酒と実によくあいます。
まぐろやタイ、ひらめ、甘エビ、ホタテ、赤貝など組み合わせはあなた次第!秋田の朝は、秋田市民市場で地元食材でつくる「のっけ丼」と地酒を楽しみませんか。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)