日本全国の酒場情報をお届けしてきた酒場めぐりマガジン『Syupo』酒場案内人・塩見なゆが、2022年に掲載した300軒以上の酒場の中から、選りすぐりの20軒をご紹介!
この酒場に再び行くために旅に出たい!そんな名店ぞろいです。
目次
1.東京『ふくべ』
東京駅前の八重洲で80年以上前に創業した居酒屋。菊正宗の樽や全国の地酒を揃えた元祖地酒居酒屋的な存在。1合1勺入る徳利に注ぎ、銅壺の湯煎で燗をつける昔ながらのスタイルを貫いています。
まだ緊急事態宣言等でお酒の提供が規制されていた頃、店は建て替えのために閉店してしまいました。それが、12月19日、ついに建て替え完了・営業再開したのです。
新しい建物になっても、変則的な構造を含め昔の雰囲気を色濃く残しています。日本酒好きならば一度は「ふくべ」へ!
2.長崎『安楽子』
2022年は、長崎に新幹線が開業したメモリアルイヤー。ということで、久しぶりに長崎へも取材に行きました。とくに気に入ったお店は、長崎の地魚を揃えた老舗酒場『安楽子』。
サス、ヒラス、穴子、サザエなどの地のものに地酒「杵の川」や黒ラベルをあわせた取材時のことは忘れられません。個人的な旅行でもまた飲みに行きたいです。
3.川崎『丸大ホール』
なんと昭和11年から続いているという、川崎駅周辺で最も古い食堂・酒場です。
朝8時30分から営業しており、朝から夜勤明けの人たちのオアシスになっています。はじめて訪ねたのは15年ほど前。ときどき取材等で伺ってきましたが、今年、数年ぶりに訪ねて、その素晴らしさを再発見。
人情たっぷり、お客さんの笑顔で溢れる爽やかな店はいいものです。
4.鹿島田『上州屋』
川崎市内から続けてエントリー!今年のはじめ、コミュニティ「Syupo酒場部」の皆さんと飲みに行った、鹿島田『上州屋』も素晴らしいお店でした。
南武線沿線でしかも駅から徒歩10分ほどというロケーションで、近隣の人以外にはあまり知られていませんが、ここは首都圏在住の魚好きの方ならば絶対行くべき一軒。
すぐ近くにある地方卸売市場南部市場から仕入れた全国津々浦々の魚が揃います。
5.小岩『鳥正』
1966年から続く小岩の『鳥正』。実は長年の課題店でした。今年、やっと時間がとれて飲みに行きましたが、今まで行かなかったことを後悔する名店だったのです。長いカウンターに、ずらりと並ぶ板前さんたち。活気に満ちています。
料理もお酒もしっかりとしたものを一回り安価で提供している印象です。魚介料理と鶏料理の二枚看板で、どちらも美味しいからつい注文過多になりがち。
6.北加賀屋『大衆酒場おく』
関西の人以外は馴染みのない地名かもしれません。大阪メトロ四つ橋線の南端寄りにある駅で、大阪のベッドタウンです。
大阪は駅前ビルや天満、京橋、ミナミと魅力的な飲み屋街がたくさんありますが、北加賀屋にも騙されたと思って飲みに行ってほしいです。
それだけの価値は十分にあるどころか、リピートしたくなること間違いなしのお店『大衆酒場おく』。100品を超える膨大な黒板メニューに感動すること間違いなし!
7.福島『つやこ』
ここは、駅前の駐輪場の中にポツンと立つ平屋の戸建てという強烈なお店。インパクトは立地だけでなく、なにより料理の素晴らしさ、そして満員御礼の盛況ぶりも大きいです。
看板料理の餃子の盛り付けは日本一豪快(Syupo調べ)ですが、その美味しさでさらに驚かされます。こういう店に出会えるから、地方都市巡りはやめられません。
8.南平『よっちゃん』
南平のよっちゃんも10年ぶりくらいに訪ねましたが、素晴らしかったです。飲み屋街でもない、急行が通過する私鉄の小さな駅前にありながら、早い時間からお客さんで満席になる理由がよくわかります。
ニンニクおろしをたっぷり塗りつけて食べるジャンボ焼き鳥はやみつきになります!
まだ飲みに行ったことがない方は、高尾山観光の帰りにでもぜひ京王線南平駅で途中下車を。
9.雑色『よし成』
2021年に新装開店をした『よし成』。蒲田に近いとはいえ雑色にあるためなかなか飲みに行く機会がなかったのですが、今年はじめて新店訪問。
どの料理も素晴らしく、仕入れ力や包丁の技を感じる素晴らしい鮮魚酒場でした。
明るく清潔、接客よし、なにより味よしの店。酒場マニアだけでなく、友人や家族に積極的に紹介したい店です。
10.下高井戸『鳥たけ』
渋谷を代表する老舗酒場のひとつ『鳥たけ』の暖簾分けで、昭和38年から続く下高井戸の店。これほどの良い店を今まで気づかず下高井戸で飲んでいたなんて…。
渋谷大竹由来のぼっか串の巨大焼鳥をはじめ、自家製もポテトサラダや刺身類もハズレなし。レトロな雰囲気もあいまって、ここは別世界に感じます。
11.横手『かしらや』
秋田県の横手は日本有数の豪雪地帯。ここに、東京風のもつ焼きと焼酎梅割りをだすやきとり屋があることをご存知でしょうか。
ルーツをたどると、戦後すぐの東京・上野のもつ焼き屋にたどり着く店で、本州最北の「梅割り」を出す個人店。とろみのあるカシラ焼きは東京のそれとはまた違った美味しさがあります。
雪道をかきわけて飲みに行く価値ある一軒でした。
12.小出『やまに』
新潟・魚沼の小出駅から徒歩15分の場所にある『やまに』も衝撃的な店でした。小出の中心街はお世辞にも活気があるとはいえませんが、やまにの店内は満席です。小出にこんな店があるのかと、狐につままれたような気分になりました。
北海道・道央でよくみかける豚ホルモンの焼肉を食べさせてくれます。公共交通ではやや行きにくい場所ですが、名店中の名店なので、ここを目的地としてもいいくらい!
13.岡山『まつや』
白魚と黄ニラの卵とじなど、岡山の昔ながらの郷土料理を食べさせてくれる老舗の料理屋。お客さんは皆さん地元の食いしん坊という感じで、とてもあたたかい雰囲気です。
岡山といえば天満屋のある俵町や駅東口側が飲み屋街のイメージがあり、西口ははじめて歩きましたが、こんな店に出会えるとは。下津井のタコは忘れられない美味しさでした。
14.天王寺『森田屋』
ときどきお客さんも店の人も、猛烈に楽しそうにしている酒場に出会います。森田屋は、店全体が幸せに包まれているような店。陽気で人懐こい大将が中心となって切り盛りしています。
美味しいものを集めて安く食べさせる夢のような空間で、老若男女、若いカップルから黒帯ノンベエまでみんな満足顔。
大阪はうまい店がある、それを改めて感じさせてくれた一軒でした。
15.一之江『はむら』
白木の一枚板がピシッと伸びる店「はむら」。鉄道駅からはどこからも徒歩15分以上と鉄道空白地帯にあり、なかなか飲みに行けなかった店。一度行けばその魅力にとりつかれ、二度・三度と都営バスを乗り継いでいくようになりました。
正統派大衆割烹は数を減らしていますが、「はむら」のような名店はいつまでも続いてほしいです。
16.京成小岩『三平』
「昔から続く家族経営の店で、開店と同時に地元の人ですぐに満席になる――」暖簾を潜った瞬間に「あ、ここはイイ!」と思えますよね。小岩の三平は、大人気の酒場です。
鮮度のよい豚モツを豪快に焼き上げ、特製のタレで味をつけて提供する。これに色付きの焼酎ハイボールをきゅっとあわせれば、もう大満足です。
下町(広い範囲で)の酒場好きとしては、『三平』の記事はもっと早く書いておくべきだったと反省しています。
17.沼津『海老や』
元漁師がはじめて30年の店、『海老や』。名古屋から普通列車を乗り継いで東京へ帰る途中、沼津駅での乗り継ぎ時間をつかって立ち寄りました。ここの特徴は何と言っても、ほかでは食べられない地魚の数々。
アカザエビなど地物がこの値段でいいの!?と驚く安さで食べられます。地元のお父さんたちで賑わう理由のわかる一軒。次回も沼津で乗り継ぐときがあれば『海老や』は必ず立ち寄ります。
18.広島『権兵衛』
大阪のおでん、金沢のおでん。おでんも地域色がありますが、広島のおでんがこんなに特徴的だと知ったのは、広島の『権兵衛』で飲んでからのことです。
カスビ貝というのをはじめて食べましたが、つぶ貝に似た甘さ。しかもつぶより1.5倍近く大きく満足感はさらに高め。
清酒「本洲一」の飲み比べなど、ほかではできない体験をさせてもらいました。
19.天神『満龍』
40年続く老舗屋台『満龍』は、私の福岡屋台のイメージを変えてくれました。せわしなく、味より雰囲気重視。観光地価格というネガティブな気持ちを『満龍』が払拭しました。
味よし、雰囲気よし、価格も適正。人情たっぷりの楽しい屋台です。飲み慣れた人たちにこそ訪ねてほしい一軒。明太子入り玉子焼きが絶品!
20.札幌『揚子江・黄金寿司』
なんと寿司と中華のハイブリッド業態。最近はなんでもありのまぜこぜネオ大衆酒場もありますが、ここは昭和39年から続いている老舗なのです。
カウンター席から厨房を眺めていると、その不思議な光景だけでビールが進みます。だって、手前では刺身をきったり寿司を握っているのに、その隣では中華鍋がカコンカコンとリズムを刻んでいるのですから。
札幌は酒場が山ほどありますが、今年一番記憶に残ったのは揚子江・黄金寿司です。
おわりに
来年も素敵な酒場にたくさん出会えますように。そのために、健康第一でしっかりと全国取材に励もうと思います。
取材でお世話になった全国の飲食店様、酒類事業者様、お客さんの皆さま、お騒がせしました。そして大変お世話になりました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)