9月5日が誕生日のホップ『ソラチエース』北海道だけでなく、本州でも育て始めたワケとは?

9月5日が誕生日のホップ『ソラチエース』北海道だけでなく、本州でも育て始めたワケとは?

2023年9月5日

1984年9月5日は、世界的に使用されている北海道上富良野生まれのホップ「ソラチエース」が品種登録された日。研究開発したサッポロビールの原料開発研究所がある上富良野では、ホップ農家の皆さんが「ソラチエース」の生産をしており、収穫されたホップは、主にサッポロ『SORACHI1984』で使用されています。

上富良野で収穫されたソラチエース(サッポロビール原料開発研究所にて撮影 ※一般非公開)

北海道うまれ、今後の北海道ホップの主役になるであろう「ソラチエース」が、実は2023年から本州でも育てられていることをご存知でしょうか。今回は、ソラチエースの誕生日に合わせ、「ソラチエース」に対するサッポロビールの取り組みをご紹介します。

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海を渡ったソラチエース。今回は津軽海峡を渡る。

サッポロビールは、ビールの2大原料である「ホップ」と「麦」の研究開発を行う世界でも珍しいビールメーカーです。美味しいビールを作るため、「ないものは、つくるしかない」という開拓精神が約150年、脈々と受け継がれてきました。

黒ラベルで使われているホップなど、様々なホップを生み出してきた北海道上富良野にある研究所。自社製品向けの課題解決だけでなく、ウイルスにより品質低下したチェコ・ザーツ地方で栽培されているホップの回復にも貢献しています。

そんな同研究所では、ヒノキやレモングラスのような華やかな香りを持つホップの新種を開発。1984年9月5日に「ソラチエース」として品種登録されましたが、サッポロビール製品に使われることはなく、ホップは太平洋を渡ります。

アメリカ発のソラチエースを使ったビールが欧米の関係者やファンの間で話題になっていること、ドイツ留学していたサッポロビールの技術者、新井さんもヨーロッパの地で知ることになりました。

SORACHI1984ブリューイングデザイナー 新井 健司さん

こうして、ソラチエースは凱旋帰国の機会を得ました。

世界的なクラフトビールブームの中、いよいよサッポロも「ソラチエース」を使ったビールを定番ラインナップに加えることを決定。2019年4月、『SORACHI1984』が全国発売となりました。

『SORACHI1984』のホップは100%「ソラチエース」ではあるものの、現在はアメリカ産を中心に、一部北海道上富良野産(2020年に定植)を使用しています。

いまでも十分に付加価値があるビールですが、新井さんをキーパーソンにした、サッポロビール『SORACHI1984』チームには長期的な「夢」があると言います。それは、「ソラチエース」の国産比率をいつか100%にすること。新井さんは、これを”ロマン”と語っています。

いつか、国産ホップだけで定番商品(数量限定ではなく)を製造し続けるだけのホップ生産量になってほしい。そのために、ソラチエースの苗が今度は津軽海峡を渡ることになりました。

新たにソラチエースの栽培を行うことになったのは、岩手県北部の軽米町や青森県の海峡の町・田子町にある5つの農家。これらの農家では長年サッポロビール向けのホップ栽培が行われており、「サッポロ生ビール黒ラベル 東北ホップ100%」などの原料をつくってきました。

ツル植物のホップは越冬しますが、寿命は10年から20年。定期的に植え替えの必要があります。長年、地元の農家さんと「協働契約栽培」で協力関係にあったこともあり、軽米町では2023年6月、ホップの植え替えが行われました。

こうして、ソラチエースの生産量を増やすべく、東北地方での育成が開始されました。ホップは苗を定植した年は収穫がありません。そのため、本格的に収穫され、私たちの手元にビールとして届くのは2年後になります。

定植の様子

軽米町の山本町長(左)と、ホップ農家の中里さん(右)

2023年6月21日、軽米町のホップ農家・中里さんの畑でおこなわれた定植の様子を取材しました。軽米町(かるまいまち)は、東北新幹線の二戸駅から、JRバスで60分の場所にある山間部の町。1962年頃からホップの生産がおこなわれてきました。

中里さんの畑では、これまで「リトルスター」などのホップを栽培してきましたが、その一部が「ソラチエース」になります。

定植には、軽米町の山本町長やサッポロビールの皆さんも参加しました。

『SORACHI1984』関連ではすっかりおなじみ、サッポロビールの新井さんも植えています。

くるくるとツルを巻き付けていきます。

まずはスコップで掘り――

「塩見さんもやってみましょう!」

ということで、なんと私も挑戦させていただきました。大変光栄です。

中里さんの指導のもと、チャレンジ。

  1. 苗の根がしっかり埋まるほどの穴を掘る。15cmくらい。
  2. 根が下へ伸びるよう、根の先端を下に向けて入れ、苗の境が土より2cmほど下になるようにする。
  3. ツルを時計回りに糸へ巻きつける。

糸に巻きつけていきます。

いかがでしょう。無事、植えることができました。いつか、この苗から収穫されたホップでつくる『SORACHI1984』が飲めることを楽しみにしています。

無事に定植が完了しました。なお、今回の苗は上富良野から届けられたものです。少しずつでも、国産ホップが広がっていくといいですね!

国産ホップで見えてくる、ビールの新たな価値

日本の大手ビールメーカーがつくるビールは残念ながら、国産原料の比率が高いものは限られています。また、年々、ホップ畑の面積は減っているのが現状です。

これまでにない個性的な味である『SORACHI1984』はもともと付加価値があるビールですが、国産ホップ比率が上がると、味だけでなく生産地と繋がれるという魅力が加わります。ホップ畑を見に行き、実際に風土を体感できるというのは素晴らしいことですを

本ビールを通じて国内ホップの生産量が拡大することを期待したいと思います。

SORACHI1984誕生日イベント

本日、18時30分からYouTubeでSORACHI1984のバースデーイベントがライブ配信されます。

イベント名

ソラチエースバースデーフェス2023

-SORACHI NIGHT(ソラチナイト)-

実施日時

9月5日 18:30~20:30頃 ※YouTubeは18:10より配信開始

内容

  • 書家 小杉卓氏による書道パフォーマンス
  • クラリネット&サックス奏者 辻本美博氏による演奏
  • アルプス音楽団によるオクトーバーフェスト定番ソングの演奏
  • 19時8分4秒に参加者全員で乾杯 他

当サイトで紹介した飲食店で、SORACHI1984を扱うお店

掲載されているお店でも、期間限定等で現在は取り扱いが終了していることがあります。お店にお問い合わせください。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)