大崎のオフィスビル群に、まるでそこだけ時が止まったかのような一軒の町中華があります。創業は1941年(昭和16年)、80年以上もこの地で働く人々の胃袋を満たし続ける町中華『幸楽』。名物のチャーハンは、茶色い見た目の期待を裏切らない、お昼からビールが飲みたくなる深い味わいです。
変わりゆく街で、変わらぬ灯りをともし続ける

JR大崎駅といえば、巨大なオフィスビルが林立し、多くのビジネスパーソンが行き交う近代的なターミナル。その新東口からわずか3分、ビルの谷間に吸い込まれるような路地に『幸楽』はあります。駅周辺が今のような姿になる遥か昔、鉄道施設が街の中心だった頃から、この場所で暖簾を掲げてきました。いまも幸楽には鉄道員の姿があります。

昼時ともなれば、近隣のオフィスワーカーたちでたちまち行列ができるほどの人気ぶり。長年通うリピーターも多く、客層が落ち着いているのも、お酒飲みとしては嬉しいポイントです。

赤い合板のテーブル席が並ぶ店内は、外から見るより広く感じます。奥には座敷もあり、昼は活気あふれる食堂、夜は仲間と集う憩いの酒場といった雰囲気。長年使い込まれたテーブルや椅子が、この店の歴史を物語っています。
驚いたのは、その歴史ある佇まいの中に、Suicaなどの交通系電子マネー決済の端末があること。伝統は守りつつ、利用者の利便性に応える柔軟な姿勢。これこそが、世代を超えて愛され続ける理由なのでしょう。意外にも、夜はWEBで宴会予約もできます。
主役はチャーハン、最高の相棒はビール
瓶ビール

取材はお昼ですが、まずは瓶ビールをもらって、ひとり乾杯。きりっと冷えたサッポロラガーが、午前中の別件インタビューの疲れをすっと癒してくれます。厨房から聞こえるリズミカルな鍋振りの音と香ばしい匂いが、最高の肴です。
チャーハン

ランチタイムを過ぎても、多くの人が注文するのが名物のチャーハン。運ばれてきた一皿は、ラードでコーティングされ、キラキラと輝いています。

見た目は濃いめの茶色。レンゲですくうと、しっとりとしているのに、口に運ぶと米一粒一粒が感じられる絶妙なパラパラ感。これはまさしく熟練の技です。

味の決め手は、自家製チャーシューとその煮汁から生まれる、深いコクと香ばしい醤油の風味。細かく刻まれ、カリッとした食感になったチャーシューやネギは、あくまで風味づけ。

主役であるご飯そのものに、しっかりとした旨味が染み込んでいて、これがビールと抜群の相性なんです。
半チャンラーメン
周りを見渡せば、一番人気はやはり「半チャンラーメン」(1,100円)のセット。ラーメンは、鶏ガラや豚ガラを丁寧に煮込んだ、どこか懐かしい王道の醤油味。ほんのり香る生姜が食欲をそそり、歯ごたえのある中太麺がスープによく絡みます。そして、ここにも存在感を放つ厚切りのチャーシューが。
このラーメンとチャーハンを交互に頬張る幸せ。大崎の食いしん坊たちがこの味に惹かれて列をなすのも、大いに納得です。
ごちそうさま
創業80余年。変わっていく大崎の街で、いつでも温かく迎えてくれる「サラリーマンのオアシス」です。
ランチピークは行列必至ですから、少し時間をずらした13時過ぎ(ラストオーダーは13:30)か、夜にゆっくり訪れるのがおすすめ。大崎に立ち寄る際は、ぜひこの味わい深いチャーハンを体験してみてください。
店舗詳細
品書き

- アサヒスーパードライ・サッポロラガービール中瓶 各800円
- 生ビール アサヒスーパードライ 400円~
- 各種サワー 450円
- オムライス 800円
- ソース焼きそば 850円
- 餃子 500円
- チャーシュー 1,000円
- 3時間飲放題付きコース 6,500円
店名 | 大崎 幸楽 |
住所 | 東京都品川区大崎1丁目19−9 |
営業時間 | 11:00 – 14:00 17:00 – 23:00 土日祝日定休 |
創業 | 1941年 |
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