鳥越神社のお膝元、浅草橋。この界隈は歴史ある個人店が今なお元気です。昭和44年創業の町蕎麦『すぎ栄』もそんな一軒。二代目が守る温かな雰囲気と、そばつゆを活かした肴、そしてスパイスと出汁が融合した名物カレーせいろ・カレー南蛮が評判です。地元で愛され続ける、下町の心意気に触れてみませんか。
神社とともに、町に根ざす蕎麦屋の温もり

JR浅草橋駅から少し歩き、蔵前橋通り沿い。東京を代表するお祭り「鳥越まつり」で知られる鳥越神社のすぐ近くに、『すぎ栄』の暖簾はあります。流行を追う店とは一線を画す、これぞ蕎麦屋という佇まい。

暖簾を潜ると、「いらっしゃい」とご夫婦が迎えてくれました。二代目となるご主人と女将さんが切り盛りされています。店内は4人がけのテーブルが並ぶ、昔ながらの落ち着いた空間。ご近所の方でしょうか、ご隠居さんがテレビを眺めながら沢の鶴をちびりとやっています。こういう光景こそ、町蕎麦の醍醐味。
ひっきりなしに出前の電話が鳴り、ご主人がスーパーカブにまたがり軽快に走り出していく。名前を告げられただけで、すっと届け先がわかる。そんな長年の信頼関係が、この店の活気を支えているのです。
蕎麦屋ならではの肴で蕎麦前を

まずは瓶ビールをお願いしました。出してくれたのはキリン一番搾りの中瓶。お通しの枝豆は、きりっと塩が効いていてビールを進ませます。それでは、乾杯!

肉豆腐

蕎麦前には、そばつゆを使った甘辛い「肉豆腐」を。

しっかりと味の染みた豆腐に、厚切りの豚バラ肉がごろっと入っており、満足感は十分。

ぴしっとしたかえしの辛さが、さすがは江戸の蕎麦屋といった味わいで、お酒との相性も抜群です。
名物は、出汁が決め手の自家製カレー

さて、〆の蕎麦。常連さんたちの注文に耳をすませば、「カレーせいろ」や「開花丼」が人気のようです。とくにカレーは、先代から受け継ぎ、カレー粉から作る自家製とのこと。これは期待が高まります。私は温かい「カレー南蛮蕎麦」をいただくことにしました。

運ばれてきた一杯は、出汁の香りとスパイスの香りがふわりと立ち上ります。とろみの強いカレーつゆは、宗田節とサバ節から引いたという深いコクのある出汁がしっかりと効いており、かなりスパイシー。ですが、辛いだけではなく、つゆの甘みと旨味が全体をまとめています。

蕎麦はやや太めで、もちっとした食感。この力強い蕎麦が、濃厚なカレーつゆをたっぷりと持ち上げてくれます。夢中で啜れば、じんわりと汗が滲む。これは、案外日本酒と合わせてもおもしろそう。

ごちそうさま
半世紀以上にわたり、この町の人の暮らしに寄り添い、お腹を満たしてきた『すぎ栄』。浅草の名店とはまた違った、下町の風情に浸れるいいお店でした。
伝統の味を守りつつ、揚げ餅がのる「冷やし磯力そば」のようなユニークな品書きも揃えていて値段も手頃。通し営業ですから、のんびり昼下がりの蕎麦前もぜひ。
店舗詳細
品書き




店名 | 生蕎麦 すぎ栄 |
住所 | 東京都台東区浅草橋3-34-8 |
営業時間 | 11:00~20:30 土曜日は15:00まで 日曜日定休 |
創業 | 1969年 |