上野『北畔』はいった瞬間、そこは青森。山菜と刺身に桃川をあわせる

上野『北畔』はいった瞬間、そこは青森。山菜と刺身に桃川をあわせる

2021年5月14日

上野で60余年続くみちのく郷土料理の店「北畔(ほくはん)」。演出された青森という雰囲気ではなく、暖簾の向こうは青森の酒場そのものです。

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暖簾をくぐると昭和の青森に着く

昨今、低価格酒場が次々と誕生し、日中から若者を中心に賑やかな飲み屋街へと姿を変えてきた台東区上野、アメ横・JR高架周辺。そうした一帯にも、いくつかベテランのお酒好きが昔から変わらない時間を過ごしている居酒屋が存在します。

北畔は明治生まれ青森出身の初代が昭和34年にはじめた郷土料理の居酒屋です。お店の雰囲気は長く変わることなく、世代交代したいまも、昭和のみちのくの雰囲気をそのまま残しています。

かつて東北の玄関口と言われた上野には、いまも多くの東北地方の郷土料理店が暖簾を守り続けています。そうした中でも北畔はひときわ、青森のムードが濃厚です。季節で掛けかわる暖簾をくぐった瞬間、景色は新幹線よりも早く青森に染まります。

初代の息子さんは陶芸家で、店内に飾られた作品の数々も店の雰囲気をより濃くしています。

酒場は半世紀をこえると付喪神が宿ったように、お客さんが少なくても賑やかな雰囲気を感じられるから不思議です。

喧騒の上野の空気を入れかえるように軽く息をはき、ビールをいただきます。サッポロ生ビール黒ラベル(中びん600円)で乾杯。

品書き

ビールはサッポロ。樽生も瓶もともにサッポロ生ビール黒ラベル。青森といえば地酒が有名ですが、北畔では桃川田酒じょっぱりと3種類が用意されています。

定番の料理は手元の品書きにあるものの、お手伝いさんが今日のおすすめを説明してくれますから、そちらをまずは注文するのが一般的です。

一人飲みならば、酒の肴盆(1,400円)で、ばい貝とんぶりしらたきとタラコの煮物カニ味噌もずくなど、これだけでおつまみは十分すぎるほど盛り付けられてきますから大変おすすめです。

時節柄品数が絞られていますが、通常は夏の、秋のきのこ、冬は名物にもなっている津軽雪鍋なども登場します。

しみじみ美味しい料理の数々

お通し

お通しは、旬のたけのこと肉厚のわかめ。上品な昆布出汁であまく煮てあり、この小皿だけでも店の料理に対する向き合い方が感じられます。

刺身盛り合わせ(2,250円)

せっかくならば、お刺身を頼んでみましょう。刺身盛り合わせ(2,250円)は、少し値は張るものの、期待にこたえてくれる立派な内容です。

こだわりはやはり旬の魚介類。肉厚で脂がのったカツオぶりホタルイカ真鯛昆布〆松皮造り。切り身は厚く、二人でつまんでも十分な食べごたえです。味がいいことは言うまでもありません。

お酒はじょっぱり

あわせるお酒は、じょっぱり。 青森県弘前市、JR奥羽本線の撫牛子(ないじょうし)駅近くにある酒蔵です。品書きには2合(1,100円)とありますが、一合からも注文可能のため、飲み比べても良さそうです。

あの暖簾の向こう側は賑やかな上野。本当に、ここは不思議な空間です。

上野で山菜を食べるならば…

通年あるわけではないようですが、山菜を食べさせてくれることが多い北畔。今日の天ぷらは明日葉です。鮮度がよく味が濃い。だからわずかな塩でも甘さが引き立ち、それを天ぷらの脂が上手に味をまとめています。

お酒は桃川にして、もう一品、なにか頼みましょうか。もうカメラは置いて今日は心の底から旅情に浸ろうと思います。

上野の老舗がこれからもずっと続きますように。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名北畔
住所東京都台東区上野6-7-10
営業時間営業時間
17:00~22:30(L.O.22:00)
定休日
日曜日は基本定休日
開業年1959年
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