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観音裏・言問通り沿いで現存する最古の酒場『さくま』。戦後すぐに開業し、長い年月を経て今も営業を続けています。名物は、半世紀以上も続けられているという牛すじ煮込み。調理をメインにこなす娘さんとベテラン女将の会話から、下町酒場の真髄を感じることができます。
目次
正統派大衆酒場に浸る楽しさ
浅草寺の裏側は「観音裏」や「奥浅草」と呼ばれるエリア。観光客で賑わう雷門周辺とは全く異なる大人の雰囲気が漂うこの街には、数多の老舗飲食店が常連さんたちとともに歴史を歩んでいます。寿司、料亭、割烹、おでん、美味しいものはなんでも揃いますが、酒場といえば『さくま』でしょう。
外観
開店は1947年（昭和22年）。それまで酒屋を営んでいた初代が「牛すじ煮込み専門店」に業態を変えて開きました。開店当時はなんと24時間営業だったそう。
初代が考案した煮込みを看板料理に、刺身や大皿料理を揃えており、まさしく下町の正統派酒場と言える内容です。
現在も二代目のベテラン女将が店に立ち、常連さんだけでなく若い一見さんにも気遣いいっぱいで接してくれます。そんな女将を支える娘さんとお手伝いさん、3人のチャキチャキとした会話は、煮込みと並ぶ『さくま』の名物と言えそうです。この雰囲気に浸りたくて『さくま』に通う常連さんはきっと多いでしょう。
内観
テーブル席がありグループでも利用できますが、『さくま』の醍醐味はカウンターでの一人飲みです。酒場に浸る楽しさをきっと再発見できると思います。
品書き
お酒
- アサヒビール大：600円
- ウイスキーハイボール：500円
- 酎ハイボール・ウーロンハイ：400円
- 緑茶ハイ：450円
- 日本酒2合：700円
料理
- 元祖牛すじ煮こみ：600円
- 自家製ポテトサラダ：500円
- さしみもり合一人前：1,200円～
- まぐろぶつ切り：700円
- たこぶつ切り：700円
- 若鳥からあげ：600円
- 人形町日山おいしい肉 牛ステーキ 生野菜つき：3,800円
- 油あげ焼：500円
- 自家製こはだ酢
- 豆あじ南蛮揚げ
- 大皿煮物料理いろいろ盛り合い
歴史の分だけ美味しなった、牛すじ煮込み
酎ハイボール（400円）
酎ハイではなく「酎ハイボール」という言葉に誘われて、一杯目から焼酎ハイボールをいただきます。それでは乾杯！
キリッとしたドライな味で、スラスイレモンが甲類特有のアルコール感を包み込んでいます。
元祖牛すじ煮こみ（600円）
カウンター内側の大鍋で煮込まれた牛すじ煮込みが『さくま』の名物です。お客さんのほぼ全員が注文するほどの人気。なにせ、この煮込みは先代から女将、そして娘さんへと、継ぎ足しを続けながら守られてきた味です。
老舗が多い浅草ですが、これだけ長く守られてきた料理はそれほど多くはないはず。
なによりも、この煮込み。目を見開き思わず頷いてしまうほどいい味です。牛すじは長年人形町の精肉「日山」から仕入れているそうです。トロトロの脂の甘さとすじ肉の旨味、適度に入る豆腐とこんにゃくが脂を吸っていて、一皿すべてが絶品。
自家製こはだ酢
名物以外も手作り料理がずらりと並んでいます。刺身は盛り合わせもありますが、下町の酒場で「自家製こはだ酢」なんて書かれた短冊を見つけたら頼まずにはいられません。
漬け具合が絶妙です。下ごしらえがよく、ふっくらやわらかく仕上がっています。連想ゲームのように、テンポよく日本酒もお願いしました。
日本酒 あさま正宗
お酒は長年「あさま正宗」（浅間酒造）が定番とのこと。あまり首都圏では飲む機会がないお酒ですが、酒の名の通り、浅間山の麓、吾妻郡長野原町でつくられるお酒です。燗にすると旨味が広がり、燗冷ましはさわやかな味。
鳥皮小鉢
カウンターに並ぶ日替わりの大皿料理も名物で、とりあえず煮込みと大皿から取り分けた小鉢で一杯、というのが基本形。鳥皮と葱のピリ辛炒めはもちろんお酒を進ませる味付けです。
ごちそうさま
女将さんや娘さんの会話は終始、落語のようなテンポの良さがあり、そこに通い慣れた常連さんが加わり、まるで舞台を見ているような気分。長く続く酒場は、それぞれに唯一無二の魅力があります。改めてそう感じたひとときでした。浅草を訪れた際は、ふらりと暖簾をくぐってみませんか。
近くの老舗酒場
（取材・文・撮影／塩見 なゆ）
| 店名 | さくま |
| 住所 | 東京都台東区浅草3-4-2 |
| 営業時間 | 営業時間 [火～土] 17:00～21:30 定休日 月曜・日曜・祝日 |
| 開業時期 | 1947年 |