入谷では有名な、1947年(昭和22年)創業の『栄龍』。戦後の賑わいを今に伝えるこの老舗は、地元の人々の胃袋と心を掴んで離さない”ザ・町中華”です。名物の大ぶりな自家製海老入り焼売を頬張り、〆には懐かしのチキンライスを。今回は、町中華飲み好きにはたまらない台東区の名店をご紹介します。
映画館の灯りが消えても、街の食卓であり続ける

東京メトロ日比谷線の入谷駅から地上へ出ると、そこは昭和の面影が色濃く残る下町。目指す『栄龍』は、かつて映画館「金美館」の名を冠した「金美館通り」にあります。昔はきっと、映画の帰りに多くの人々が、『栄龍』の中華料理で空腹を満たしたことでしょう。
時代の流れとともに映画館は姿を消しましたが、『栄龍』は、戦後復興の中で掲げた暖簾約80年も守り続けています。入谷で暮らす人が世代を超えて通ってきたタイムカプセルのような存在ですね。

夕方5時の開店に合わせ訪ねると、すでに店内は半分以上が埋まっていました。それからわずか数分、一階はカウンターもテーブルも、家族連れや飲み会を楽しむご隠居さんなど、地元の人々で全て埋まりました。ひっきりなしに鳴り響く電話は出前の注文。店の前のスーパーカブが、この店が地域の食卓としていかに深く根付いているかを物語っています。
女将さんを中心としたご家族の阿吽の呼吸が心地よく、活気がありながらも不思議と落ち着く空間。常連さんがテイクアウトを待ちながら談笑する姿が、人々の距離が近い下町らしくて素敵です。
まずは、自家製焼売で乾杯!

ラーメン店ではなく、ここは町中華。品数の多さと、お酒の充実ぶりに酒飲みの心は躍ります。肉団子にパーコー、砂肝の山椒揚げ。魅力的な小皿料理が並ぶなか、まずは瓶ビール「アサヒスーパードライ」をお願いしました。
ビアタンを満たして、それでは乾杯!
海老入り焼売

『栄龍』に来たら、これを食べずには帰れません!自家製ならではの無骨さがむしろ美味しそう。

箸で持ち上げるとずっしりと重く、一口頬張れない嬉しい大きさ。

凝縮された豚肉の旨みがジュワッと口いっぱいに広がります。

町中華らしい、力強く、食べ応えのある一品。肉々しい餡の中にプリっとした海老の食感がアクセントとなり、ビールを飲む手が止まらなくなります。
〆は夜限定、王道のチキンライス

焼売とビールで心地よくなったところで、〆の一皿を。炒飯も評判ですが、夜限定という言葉に惹かれて「チキンライス」をお願いしました。昼時は、人気の炒飯づくりで手一杯なのでしょう。

目の前に置かれたのは、メロン型で美しく成形された、ケチャップの赤が目に鮮やかな一皿。幼少の頃、荻窪駅前の中華屋さんで食べたような、正統派のチキンライスです。

しっとりと炒められたケチャップライスは、見た目以上に味がしっかりとしており、具材の鶏肉の旨みと玉ねぎの甘みが溶け込んでいます。この少し濃いめの味付けが、またお酒を誘うのです。レモンサワーなど、さっぱりとしたお酒との相性も良さそうです。
二階にも席があるため、一階が埋まっていてものんびりお酒を飲んでいられるので安心です。

街の温もりに、心も満たされる

長年愛され続ける店には、必ず理由があります。美味しい料理はもちろんのこと、そこに流れる時間や人の温もりこそが、人々を惹きつけてやまないのでしょう。『栄龍』の活気と居心地の良さは、まさにそのものです。
入谷駅から歩いてすぐ。この街の歴史と共に歩んできた町中華の暖簾を、ぜひ一度くぐってみてはいかがでしょう。
店舗詳細



- アサヒスーパードライ 生ビール 中ジョッキ 650円
- かめ出し紹興酒 630円
- レモンサワー・ウーロンハイ 各400円~
店名 | 栄龍 |
住所 | 東京都台東区入谷1-26-1 |
営業時間 | 11時00分~14時20分 17時00分~20時20分 木定休 |
創業 | 1947年 |