台東区日本堤『一八寿司』観光地の舞台裏、庶民の町で愛される正統派の町寿し

台東区日本堤『一八寿司』観光地の舞台裏、庶民の町で愛される正統派の町寿し

浅草の北側、「山谷」と呼ばれたドヤ街の歴史を持つ日本堤。かつての労働者の街は、いまやバックパッカーや海外からの旅行者が集う、独特な熱気を帯びたエリアへと変貌しています。この地で1962年(昭和37年)から暖簾を掲げる『一八寿司』。観光地の喧騒から離れた路地裏で、銭湯帰りにふらりと寄りたくなる、下町の実力店をご紹介します。

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昭和の風情残る日本堤で、半世紀続く暖簾をくぐる

三ノ輪駅から土手通りを歩くこと10分ほど。有名な「吉原大門」交差点の少し手前、日本堤の路地裏に静かに佇むのが『一八寿司』です。

この界隈は、サウナ好きや銭湯ファンの聖地とも言われる「湯どんぶり栄湯」が近くにあり、お風呂上がりの「一杯」を求めるには絶好のロケーション。

引き戸を開けると、そこには清潔感のあるカウンター。寡黙ながらも几帳面で、丁寧な仕事ぶりが伝わってくるご主人が迎えてくれます。創業から半世紀以上。昭和、平成、令和と、この街の移ろいを見つめてきた老舗ですが、敷居の高さは感じません。むしろ、長い時間をかけて地元に馴染んだお店特有の、温かな空気が流れています。

まずは瓶ビールから。サッポロ黒ラベルの中瓶をもらい、手酌でグラスを満たします。湯上がりの体に冷えたビールが染み渡る瞬間。これだから町寿し巡りはやめられません。乾杯!

イカスミのブルスケッタ

お通しはサービスで、これがなんと洋風でびっくり。

「海苔アボカド」に感じる、下町とインバウンド

お品書きを眺めていると、老舗の寿司屋らしからぬ「海苔アボカド」の文字が目に留まりました。 気になって注文してみると、これが単なるアボカドではありません。中には脂の乗ったサーモンが隠れていました。

海苔のパリッとした食感、アボカドのねっとりとしたコク、そしてサーモンの旨味。わさび醤油を少しつけて頬張れば、口の中で見事な調和が生まれます。どこかイタリアンのような要素も感じさせる一皿です。

かつてドヤ街だったこのエリアは、いまや安宿を利用するバックパッカーの拠点。海外、ヨーロッパからのお客さんも多く、地中海沿岸からのお客さんもこの店を贔屓にしているのだとか。伝統的な寿司屋の技術と、新しい客層の好みが混ざり合い、こうしたモダンなつまみが生まれているのでしょう。

ここで飲み物をチェンジ。お寿司屋さんの「お茶割り」をお願いしました。粉茶を使った濃厚な緑茶割りは、香りが高く、口の中をさっぱりとさせてくれます。やはり寿司屋のお茶割りは格別なおいしさです。

驚きのコストパフォーマンスと、佐渡の銘酒「金鶴」

いよいよ握りをお願いしましょう。豊洲の水産仲卸に親戚がいらっしゃるそうで、仕入れの確かさは折り紙付き。特にマグロには自信があるとのこと。「上」や「特上」などのセットをお願いすると、その内容の豪華さに驚かされます。今回は店名を冠した一番贅沢なおまかせ握り「一八握り(2,580円)」を注文。

鉄火巻の左は珍しい牛ロース握り

マグロはもちろん、濃厚な甘みのウニ、弾けるイクラ。さらには、高級魚の代名詞である「のどぐろ」まで入っています。これだけのネタが揃って、お値段は3,000円以下。都心の寿司店では考えられない良心的な価格設定です。のどぐろは皮目が軽く炙られており、滴るような脂の旨味がたまりません。

おいしい魚には、日本酒が欲しくなります。選んだのは新潟県佐渡の銘酒「金鶴(きんつる)」。佐渡島内で消費されることが多く、東京ではあまり見かけないお酒です。これをお燗でつけてもらいました。

ふくよかな米の旨味が広がる熱燗をちびり。そこへ、セットの味噌汁が運ばれてきました。お椀からはみ出さんばかりの巨大な海老の頭が2つも入っています。海老の出汁が濃厚に溶け出した味噌汁は、五臓六腑に染み渡る深みのある味わい。ヨーロッパからの旅行者にも大評判だそうです。

国境を越えて愛される、日本堤の町寿司

お腹も心も満たされてお会計をお願いすると、改めてその安さに感動します。ご主人の誠実な人柄と、確かな目利きで仕入れた魚。そして、下町ならではの気取らない雰囲気。

下町の人々の胃袋を支えてきた大衆寿司で、今は世界中の旅人たちが箸を動かしている。客層は変われど、「安くて旨いものを食べてほしい」という店の根底にある精神は、創業時から変わっていないのでしょう。観光地・浅草のすぐ裏手にある、庶民の町の正統派。こういうお店を知っておくと、東京の夜がもっと楽しくなりますね!

店舗詳細

お酒の品書き
料理の品書き
お酒の差し込み
店名一八寿司
住所東京都台東区日本堤1丁目4−1
営業時間15時30分~21時15分
創業1962年