ふぐやスッポンといった高級食材を、信じられない激安価格で楽しめると評判の老舗酒場『もみぢ』。創業からまもなく50年。破れた赤提灯の先には、ご主人の温かい人柄と、活力あふれる絶品料理が待っています。セピア色に染まったクセの強い店ですが好きな人にはたまらない!
陸の孤島に灯る、年季の入った赤提灯を目指して

新宿から中央線で約10分。荻窪は、かつて多くの文人が愛した屋敷街の顔と、戦後の闇市を起源とするような入り組んだ飲み屋街が共存する街です。しかし、今回目指す『もみぢ』は、そんな駅前の喧騒からは離れた場所にあります。

荻窪駅から徒歩ならば約15分。今回は関東バスに揺られて数分。環状八号線や青梅街道の気配を感じる住宅街のふちに、その店は静かに、それでいて強烈な存在感を放って建っています。風雨にさらされ、朽ちて植木の上にもたれてしまった提灯はかなりのインパクト。
酒場好きでなければ素通りするでしょうし、飲み屋好きでも人を選ぶ佇まい。ですが、こここそが、中央線沿線でも屈指のコストパフォーマンスを誇る、知る人ぞ知る名店なのです。

暖簾をくぐると、そこには昭和の時間がそのまま冷凍保存されたかのような空間が広がります。使い込まれたカウンターに、小上がり。壁一面に貼られた手書きの短冊メニュー。
「いらっしゃい!」
迎えてくれたのは、70代にはとても見えない、活力に満ちたご主人。この道一筋、まもなく半世紀を迎えるベテランです。常連さんが多い店ですが、お客さんも含めて一見さんにも優しいのでご安心を。ご主人の明るい声が、初めての緊張をすぐに解きほぐしてくれるはずです。
驚愕の500円ふぐ刺しと、活き締めスッポンの饗宴

席につき、まずはビールをお願いしました。キリン一番搾りの中瓶を手酌でトクトクと注ぎ、喉を潤します。
さて、ここに来たら頼まないわけにはいかないのが「ふぐ」です。
値段を聞いて最初は誰もが驚くはず。「ふぐ刺し 500円」。桁がひとつ間違っているのではないかと不安になりますが、正真正銘の価格です。

運ばれてきたのは、美しい薄造り。安かろう悪かろうではありません。透き通るような身を数枚まとめて箸で掬い、ポン酢ともみじおろしでいただく。

プリッとした弾力と、噛むほどに広がる淡白ながらも深い旨味。これがワンコインで楽しめるなんて、中央線沿線、いや東京中を探してもここだけではないでしょうか。

お刺身をもう一品どう?とご主人。酒場で店主さんに勧められたら、いつでも「はい!」と答えるのが私の流儀。だしていただいたのは、タチウオのお刺身。脂がのっていてるいいものが入ったんだよとご主人。確かにこれは上等ですね!

続いて「ふぐの唐揚げ」。骨周りの身には旨味が凝縮されています。揚げたての熱々を頬張れば、ビールがぐんと欲しくなる!

お酒を熱燗に切り替えようかと思案していると、ご主人が厨房から何かを持って出てきました。

「今日はいいスッポンが入ってるよ!」
見せてくれたのは、まだ元気に手足を動かしている生きたスッポン。このライブ感も『もみぢ』の醍醐味です。この命をいただくのだと実感し、自然と背筋が伸びます。

スッポンといえば、数万円のコース料理をイメージしますが、ここでは驚くほど手頃。

今回はスッポン鍋風のおじやを作っていただきました。

鍋の中でグツグツと煮立つ黄金色のスープ。スッポンの出汁がこれでもかと溶け出しています。ひと口含めば、濃厚なコクと野性味あふれる香りが鼻腔を抜けていきます。

身体の芯からカッカと熱くなるような感覚。コラーゲンたっぷりのエンペラや、旨味の強いお肉をハフハフと頬張る。

すべての旨味を吸い込んだご飯は、どんな高級フレンチのソースにも負けない深い味わいです。
好きな人にはたまらない骨太な酒場です

これだけ食べて、飲んで、お会計をお願いすると、なんと一人3,000円でお釣りが来てしまいました。
「細かいことはいいんだよ、たくさん食べて元気になってくれれば」そんなご主人の声が聞こえてきそうな昭和の価格設定。電車賃やバス代を払っても、まだ安い。遠方からわざわざ常連さんが通ってくるのも頷けます。
高級食材を日常の延長で満喫できてしまう。綺麗に整えられた店では味わえない、骨太な酒場の魅力がここにはあります。
冬場はスッポン鍋を求めて予約で埋まることも多いそうなので事前予約が安心です。
| 店名 | もみぢ |
| 住所 | 東京都杉並区荻窪2丁目24−10 |
| 営業時間 | 15時00分~23時30分 |
| 創業 | 1977年 |
![Syupo [シュポ]](https://syupo.com/wp-content/uploads/2022/01/syupo-logo.png)
