台湾の豚料理とビーフンが名物、昭和38年に西荻窪に店を構えた『珍味亭』を訪ねます。古くからの飲み屋街が残るこの街でも、とくにディープな雰囲気を漂わせている大衆中華です。
目次
親子二代で守る台湾の味
台湾出身の初代が戦後、新宿で店をはじめたことが『珍味亭』の原点。1963年に西荻窪に移転し、現在は二代目と三代目が店を営んでいます。
店を構える西荻窪南口は、いまでもヤミ市の名残を濃厚にとどめた一帯です。とはいえ、周囲のもつ焼き店などと比べれば、珍味亭は一般的な大衆中華(町中華)のように思われるかもしれません。
外観
白い暖簾に赤文字で台湾料理の文字。お昼からやっていてもおかしくない雰囲気ではありますが、実は営業開始は午後6時からとだいぶ遅く、夜が深まるほどにお客さんが増えてきます。
ここは中華食堂ではなく「酒場」なのです。
なお、暖かい季節は店頭に丸椅子とP箱(ビールケース)を並べ、簡易的な外飲みコーナーが誕生します。もつ焼き、ジンギスカン、エスニックなどの香りが交じる飲み屋街の風を感じながら紹興酒を飲むのは結構楽しいものです。
内観
店は家族だけで切り盛りできるようにとコンパクトにしたといいます。小さな厨房とそれを囲むカウンターと2名用のテーブル席が1卓。
10人でいっぱいになるくらいで、お客さん同士やご主人との距離が近いです。そのため、店全体で同じ時間を共有している一体感があり、これが不思議なくらいに居心地を良くしてくれます。
乾杯はキリンラガー大瓶で
1960年代の造作がそのまま残る空間。朱色の化粧板にキリンラガーの赤がよく似合います。トクトクとビアタンを満たしたら、乾杯!
品書き
お酒
ビール大(キリンラガー・RL):700円、ビール小:400円、台湾紹興酒:450円、汾酒(フェンチュウ※白酒タイプ):450円、五加皮酒:450円、スッポン酒:350円、月桂冠:400円など。
料理
豚肉系・珍味
豚足:650円、豚足半分:350円、豚耳・豚尾、頭肉、バラ肉、胃袋、子袋、タン、ハツ:各400円、テバサキ:400円、魯卵(ローラン):400円
炒めもの・スープ
木耳肉炒:800円、炒米粉:650円、湯米粉:650円、野菜スープ:450円、高菜スープ:450円など。
豊富な中国酒と豚珍味で、異国情緒に浸る
台湾紹興酒(450円)
中国酒だけで10種類以上もあります。定番の紹興酒はもちろん、せっかくならば三鞭酒などにも挑戦するのも良さそうです。中国のお酒は体をポカポカにしてくれるものが多いですし、梯子酒の合間に飲めば冬の飲み歩きもへっちゃらです。なお、お酒は適量で。
豚足半分(350円)
八角の風味がしっかり効いた本格的な豚足、ここの名物です。台湾での呼び名は滷豬腳。台湾・高雄の食堂で食べた味と近い印象でした。
沖縄のテビチのようなトロトロさはなく、固いこんにゃくのような食感で、食べごたえとお酒を誘う力強い一品です。
豚尾(400円)
好みはわかれそうですが、豚のしっぽをぶつ切りにしたもの。肉も魚も骨の周りが美味しいものです。
これはウーカーピーなどのお酒を何杯も飲ませてしまう魔法のおつまみです。味付けは豚足と同じでほんのり甘くコク強め。潰し生にんにくとしょう油の小皿がでてきますので、これにつけて味に変化をつけるのが常連さんの食べ方のようです。
東京で豚の中華珍味をだすお店はいまは貴重です。西荻窪のこういうロケーションで食べられるのはとても素晴らしいことだと思います。
炒米粉(650円)
瓶ビール1本に中国酒を数杯。気持ちよくよってきたところで空席が埋まってきました。そろそろ〆にと、名物の米粉を注文。これがなかなかどうして、お酒をさらに進ませる素敵な一品です。
具は豚肉、もやし、ニラのみ。味付けはには滷汁(るうすい)とニンニクで、コクがかなり感じられます。茶色い見た目ですが、塩気よりは脂のこってりとした味が先にきます。
野菜スープ(450円)
豚骨の風味とニンニクの風味がしっかり効いた野菜スープを最後の一品に。春菊、豚の皮に近い部分、ネギなどが具材で薬膳スープに近いと言える味です。
常連さんも、はじめての人も楽しい店
ご主人の距離感がちょうどよく、飲み屋としてもとしても心地の良い空間です。店構えはやや敷居の高さを感じるかもしれませんが、おすすめしたい一軒。
西荻窪がもっと好きになるに違いありません。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 珍味亭 |
住所 | 東京都杉並区西荻南3-11-6 |
営業時間 | 営業時間 17:30~23:00 定休日 土曜日、日曜日、祝日 |
開業年 | 1963年 |