西荻窪『戎 南口店』西荻の酒文化発信地。人に寄り添う酒の場所。

西荻窪『戎 南口店』西荻の酒文化発信地。人に寄り添う酒の場所。

2021年1月3日

西荻窪の飲み屋街は、どこか下町っぽさが感じられます。人と人の心の距離が近いように感じられるからです。暮らし方、時間の使い方が変化した今だから、心の距離というものを大事にしたい。西荻窪へ飲みに行くときは、街がもつ人懐こさを求めているのだと思います。

南口の三角地帯はバラックを起源とする小さな酒場が立ち並ぶ飲み屋街。

その中でひときわ目立つ赤い看板は、1973年に創業した駅前のやきとり酒場「(えびす)」。創業者が戎井さんだったことが店名の由来です。

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路地の左右に点在する戎の別館

焼台とカウンターだけの小さな店舗から戎は始まりました。今では「別館」と呼ばれる飛び地が横丁を挟んで両側に点在し、西荻窪駅をやきとりの香りで包み込んでいます。

JR西荻窪駅。筆者は杉並区荻窪育ちで、幼少の頃、よくこの界隈で過ごしました。無個性だった国鉄らしい無骨な高架駅も、いまはデパートのようなオシャレな雰囲気になりました。

ピカピカした西荻窪駅を一歩降りると、そこは変わらぬ昭和の世界。やっぱり、私の中での「西荻」はこちらの景色です。これを個性と認めずに、ただキレイにしようと再開発するようなことは望みません。

ドブ漬けで冷やした大瓶は美味しい

路地も店の通路のようになり、ベテラン揃いの店員さんが忙しそうに駆け回っています。それは、たとえ元旦であっても。

店頭に無造作に置かれた水冷ショーケースには、瓶ビールや寶の一升瓶が沈んでいます。真冬でも飛ぶように売れていく戎らしい、スピード重視のスタイルです。ドブ漬けで冷やすビールは、空冷よりも美味しく感じませんか。

ビールはかつてはサッポロのみ。現在はアサヒスーパードライキリンラガーサッポロラガーの3種類が用意されています。戎は家族との思い出の店でもあり、親が飲んでいたビールを私も引き継ぎたい。赤星からはじめます。

それでは乾杯。

もつ焼き店ながら刺身や揚げ物も充実

瓶ビール(大びん590円)のほかに、樽生ビール(サントリー・ザ・プレミアムモルツ)も用意あり。人気は日本酒で店名「戎」の名がつけられ、普通酒は260円と大変懐に優しいです。

このオリジナルブランドの「大黒 戎」は、福島県喜多方市にある酒蔵・大和川酒造店が製造しています。

(画像を選択すると拡大表示 2021年元旦のメニュー)

料理メニューは日々変わります。季節の食材や、お正月にはおせち料理の具材も登場。「今日はなにがあるかな」と飲みに行く度に楽しみにしています。

100円から小鉢があり、一人でお昼から摘むのには丁度いい内容です。冷奴にはミョウガとオクラを載せるなど、一工夫が嬉しいものです。

やきとり屋ながら、魚介類も充実しています。刺身は焼き物が焼ける前に一皿は摘んでおきたい。

お刺身には、やっぱり日本酒でしょう。目の前で豪快に一升瓶から注がれます。このダイナミックさが好きでした。

瓶ビールのあとは、樽生のプレミアムモルツという選択も。

昭和酒場の活気に浸れる

名物はやきとり。東京では、漢字で「焼鳥」と書けば鶏、「やきとり」と書けば豚と、やんわりとではありますが使い分けがされています。「やきとり戎」は主に”やきとん”串を揃えています。

1本100円と今どきとしては大変リーズナブル。1日に千本も売ることがあるそうです。

醤油の芳ばしさがしっかり効いたタレが私は好み。七味を気持ち多めにふりかけて熱々のうちに頬張れば笑顔間違いなし。余韻にすかさず、赤星を追いかければ、「今日も一日良い日であった・笑」。

常連さんに人気の串、「鶏皮ピーマン」と「ピーマンつくね」。カワピーの脂と青味のコントラストが絶妙で、2本目が食べたくなるかも。

名物はいわしコロッケ

名物といえば、こちらも人気・いわしコロッケ(490円)。本店開業から約10年経った頃に西荻窪駅北口にも戎がオープンし、その際に登場したメニューがいわしコロッケ。その後、南口にもフライヤーがはいり、現在は両店ともに名物料理になっています。

コロッケの具を大きないわしで包み込みまるごと揚げたもの。いわしとコロッケ、意外な組み合わせですが、クセになる美味しさです。

スタンダードなハムカツもあります。

串揚げ(5本盛り合わせ550円)。揚げたてホクホク、やきとり気分でなくとも戎は楽しめます。

プレーンオムレツ(230円)。

料理のバリエーションは本当に豊富です。大きい厨房があるわけもないのに、これだけ色々だしてオペレーションが回っていることは、「戎マジック」です。

戎が輸入した限定ワインまである

西荻窪の南口からはじまり、北口に出店。その後、ビヤホール業態を吉祥寺に開くなど、地域に密着した、いまでいう”ドミナント戦略”の戎。

実は書店や食品輸入業もやっていて、お店で提供されるスペインワイン「ASIDO」(スペイン語・豊穣の神の意味)は戎が仕入れているもの。これがなかなか美味しいので侮れません。

毎日午後1時から営業、いつも店員さんとお客さんの笑顔で溢れている戎。開放感にひたり、明るい気分で乾杯しませんか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名やきとり 戎 西荻南口店
住所東京都杉並区西荻南3-11-5
営業時間営業時間
[月・火・水・木・日]
12:00~22:00(L.O.21:30)
[金・土]
12:00~22:30(L.O.22:00)
日曜営業
定休日
無休
開業年1973年