浅草『多から家』九十余年続く老舗!芝海老と丼からはみ出す穴子の江戸前天丼

浅草『多から家』九十余年続く老舗!芝海老と丼からはみ出す穴子の江戸前天丼

多くの観光客が行き交う国際通りに、まるで時が止まったかのようにひっそりと暖簾を掲げる天ぷらの老舗があります。九十余年の歴史を重ねてきた『多から家』です。丼からはみ出す豪快な穴子天が名物。浅草の老舗ながら観光地価格ではなく良心的。今回は、そんな地元の常連さんも多い老舗天ぷら店をご紹介します。

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六区の賑わいと共に歩んだ、生粋の浅草の味

国際通りの近代的なビル群のなかに、そこだけ昭和の空気を纏って静かに佇むレトロな木造一軒家。知らなければ通り過ぎてしまいそうなほど街に溶け込んでいますが、これこそが浅草の歴史を見つめ続けてきた『多から家』です。

創業は昭和初期。かつて日本一の歓楽街として栄えた浅草六区や、松竹歌劇団の本拠地だった国際劇場は目と鼻の先。舞台を終えた芸人さんたちが、この店の暖簾をくぐり、空腹を満たしたといいます。いまも贔屓にする落語家さんもいらっしゃるそうです。

現在、厨房に一人で立つのは、浅草で生まれ育った三代目のご主人。多くを語らず、黙々と天ぷらを揚げるその背中が、この店の歴史の重みを物語っているようです。

店内はカウンターとテーブル席がいくつか。長年染み込んだ胡麻油の香りが、なんとも心地よい空間です。BGMはなく、聞こえるのはテレビの音と、ご主人が天ぷらを揚げるパチパチという小気味よい音だけ。この気取らない雰囲気に癒やされます。

これぞ江戸前!圧巻の穴子と芝海老の天丼

アサヒスーパードライ中瓶 600円

席に着き、まずは瓶ビールをお願いしました。銘柄はアサヒスーパードライ。キンキンに冷えたグラスに注いで、それでは乾杯!

厨房から漂う胡麻油の香ばしい香りを肴にビールを飲んでいると、期待に胸が膨らみます。

穴子と芝えびの天丼 1,500円

注文を受けてから、ご主人がひとつひとつ丁寧に揚げていきます。7分ほど待ったでしょうか。目の前に置かれた丼を見て、思わず「おぉ」と声が漏れました。

丼の縁から大きく、本当にはみ出している立派な穴子。そして、小ぶりながらも旨味が凝縮された芝海老が三本、いかだのように連なって揚げられています。これは老舗ならではの丁寧な仕事ですね。

芝海老は小ぶりですが、これぞ江戸前天丼の海老

さっそくいただきます。

長年継ぎ足し続けてきたという秘伝のタレは、見た目は濃厚な黒色ですが、口にすると驚くほどしょっぱくありません。甘さと辛さのバランスが絶妙で、胡麻油と綿実油をブレンドした香ばしい衣の風味をぐっと引き立てています。

主役の穴子は、仕入れ次第で変わるものの国産にこだわっているようです。衣はサクッとしていながら、中の身は驚くほどふっくらと柔らか。上質な脂の甘みが口いっぱいに広がります。

そして、この芝海老の「いかだ揚げ」。一匹ずつでは味わえないプリプリとした食感と濃厚な旨味の塊が、タレの染みた「ひとめぼれ」のご飯と一緒になって、もう箸が止まりません。

しっかりとした味付けは、ビールとの相性も抜群。あっという間に一本空けてしまいました。

浅草の歴史を味わう一杯

三代続く職人の技、選び抜かれた本物の素材、そして浅草という土地の記憶が息づく空間。これらすべてが一体となり、この一杯の天丼の深い味わいをつくりだしています。

派手さはありませんが、ここには失われつつある「古き良き浅草」の食文化が、今も確かに息づいています。

いま、全国的に食べられている天ぷらと、浅草の老舗などで提供されている江戸前の伝統的な天ぷらは、実は似ているようで意外と異なる点が多数。ごま油で衣たっぷりに揚げ、そこに黒いタレをしっかりかける。そのため、観光客には賛否あるようですが、私は、ここ『多から家』や「三定」「大黒家」のような味が好みです。

店舗詳細

品書き

お酒とおつまみのメニュー
天丼・定食メニュー
店名天麩羅 多から家
住所東京都台東区浅草1丁目11−6
営業時間12時00分~18時00分
木金定休
創業1920年代