日本を代表するターミナル、渋谷。駅周辺は再開発で未来的な景観へと姿を変えましたが、この街で働く人々の心を掴んで離さない、歴史ある町中華が今も健在です。道玄坂『兆楽』は、昭和の時代から渋谷で老若男女の胃袋を支え続ける圧倒的な有名店。今回は、ここの名物、餡掛け系チャーハンをご紹介します。
再開発が進む渋谷で、変わらずにあり続ける場所

かつて渋谷には、安くて早くて旨い、学生や会社員で賑わう個人店がたくさんありました。ですが、近年の大規模な再開発でその数は減少し、街の景色は大きく様変わりしました。『兆楽』は、そんな渋谷の中心で60年以上にわたり暖簾を守り続けている、今や貴重な存在です。
道玄坂店と、センター街の奥にある宇田川町店の2店舗を展開。今回訪れた道玄坂店は、駅からも近く、常に多くの人で賑わっています。なんと朝から23時まで中休みなく通し営業で年中無休。新宿の闇市で創業したパワフル中華「岐阜屋」に近いエネルギーを感じます。

蛍光灯がこうこうと照らす店内は、大きなコの字カウンターが主役。その内側では、大勢の料理人が休むことなく中華鍋を振り、小気味よい音を響かせています。注文した料理が驚くほどの速さで運ばれ、客はさっと食べて席を立つ。空いた席にはすぐに次の客が吸い込まれていく…。この圧倒的な回転率と活気こそ、渋谷の熱気を肌で感じられる『兆楽』ならではの光景です。
名物マーボチャーハンによく合う一番搾り

まずは乾いた喉を潤したい!
単品でキリン一番搾りの生ビール(630円)を注文。ちなみにこちらには、麻婆茄子やレバうま煮などが付く、千円ぴったりの生ビールセットもあり、クイックな中華飲みにも最適です。
キンキンに冷えたジョッキを受け取り、それでは乾杯!

今回の目的は、数ある名物の中でも特にファンが多い「マーボチャーハン(900円)」。注文からあっという間に、湯気を立てて運ばれてきました。

都度、中華鍋をしっかりと振って作られるパラパラの玉子チャーハン。その上に、見るからに食欲をそそるマーボー豆腐がたっぷりと乗せられています。レンゲですくって口に運べば、チャーハンの香ばしさと、意外なほどピリッと本格的な麻婆の辛さが一体となって広がります。人混みを歩いてきた身体には、このしっかりとした味付けが実に心地いいんです。

『兆楽』のあんかけチャーハンといえば、豚肉とタケノコの細切りあんがかかった「ルースチャーハン(道玄坂店では肉チャーハンと表記)950円」が絶対的エースとして知られていますが、このマーボチャーハンも負けず劣らずの逸品です。夢中で食べ進め、ビールで流し込む。最高の〆時間がここにありました。

渋谷の文化を味わう

創業は昭和30年代。渋谷の移り変わりをずっと見つめてきたお店です。驚くべきは料理の提供スピードだけでなく、餃子(6個300円)という破格のメニューが存在すること。インフレ時代も、高層ビルの隙間で力強く安旨な料理を提供する同店。だからいまもライブ前の若者から通い慣れた常連さんまで、幅広い層が時間関係なく食べに来ているんですよね。
多様な人々が同じカウンターで食事をする光景は、まさに渋谷の縮図。こうした変わらない味と空間があるからこそ、街は面白い!
店舗詳細
- 生ビール・瓶ビール中瓶 どちらもキリン一番搾り 各630円
- 野菜炒め・マーボー豆腐・ハムエッグ・とん汁 各350円
- 肉チャーハン 950円
- ルース春雨定食 1,020円
- 特製味噌ラーメン 880円
店名 | 兆楽 道玄坂店 |
住所 | 東京都渋谷区道玄坂2丁目6−2 |
営業時間 | 7時00分~23時00分 無休 |
創業 | 1960年代 |