築地時代から場内で営業してきた豊洲市場の飲食店は、寿司や海鮮丼のイメージが強いですが、実は鰻、天ぷら、蕎麦、中華まで揃う、巨大な職域食堂です。1万人を超える市場関連従事者がお腹を満たしてきた名店が数多くあります。今回ご紹介する『とんかつ八千代』もその一軒。日本橋に魚河岸があったころから続く老舗の食堂です。
築地から豊洲へ、市場関係者に愛され続ける活気

屋号には「とんかつ」とありますが、魚介の揚げ物の名店として、市場内だけでなく東京全域にその名を知られています。今のように揚げ物の店になったのは築地へ移転した1935年以降のこと。
人気の秘密は、市場のすぐ隣という圧倒的な地の利だけではありません。修行をして家業を継いできた歴代の店主さんが選び抜いた上等の素材を、熟練の技で最高のフライに仕上げるのです。

築地時代は10数席しかない小さな木造店舗でしたが、銀座が徒歩圏で大手新聞社が近かったこともあってか、数多の文化人にも愛されてきました。豊洲へ移転し、近代的で清潔な施設になっても、威勢のいい声が飛び交う活気と、仲買さんたちと気さくに言葉を交わす店の人の姿に、古き良き江戸っ子の気質が今もしっかりと受け継がれていることが感じられます。
名物が全部のった「サービスC定食」をつまみに、いざ乾杯!

市場(しじょう)内食堂の良いところは、朝から飲めること。こちらでは、瓶ビールでアサヒスーパードライとキリン一番搾りから選べます。今回は一番搾りを注文。ビアタンに注いで、それでは乾杯!
とんかつももちろん美味しいのですが、やはりここで食べたいのは巨大な車海老を使ったエビフライ。いや、せっかくなら市場ならではの鮮度抜群のアジフライも外せない。それならばヒレカツも…という食いしん坊の願いを叶えてくれるのが「サービスC定食」(2,200円)です。観光客や私のような朝酒客だけでなく、市場関係者も注文する人気の定食です。

運ばれてきたお皿を見て、思わず息をのみます。隣の席で海鮮丼を食べていたご夫婦も、こちらの盛りの良さに一緒に驚いてくれました。このボリュームは圧巻です。

まずは主役の車海老フライから。どうですか、この有頭の堂々たる姿!

15cm以上もあり、ナイフとフォークが必要になるほどの大きさです。
まずはソースなどつけずに一口。ザクッとした衣の中から、ぷりっとジューシーな海老の身が弾けます。濃厚な味噌が詰まった頭まで美味しくいただけるのは、鮮度の証。この余韻に、すかさず一番搾りを喉に当てていく。心の中で「プハー」です(笑)

続いてはアジフライ。

牛脂・豚脂を配合した高温の油で揚げている『八千代』。衣は力強い歯ごたえがありながら、中の身はまるで蒸されたかのように「フカフカ」でしっとり。たっぷりかかった自家製のタルタルソースが、アジの旨味をさらに引き立てます。

ヒレカツは、粘度の高い辛めのソースでいただきましょう。魚介の合間に挟む肉の旨味が、良いアクセントになります。箸で切れる柔らかさ。

山盛りのキャベツは、すぐ近くのやっちゃ場(青果棟)から届くもの。シャキシャキで新鮮そのものです。

曜日限定のチャーシューエッグも必食
季節になれば、夏はハモ、冬は牡蠣フライが登場し、穴子やホタテのフライも人気です。そして、もうひとつの名物が、火・木・土曜日限定の「チャーシューエッグ」。箸で切れるほどトロトロに煮込まれたチャーシューと、半熟の目玉焼きの組み合わせは、多くの常連さんを虜にしています。この限定メニューを目当てに訪れる人も少なくありません。
市場で働く皆さんは、やはりパワーがつくのかカツ系の定食を頼む姿が多く見られます。そんな光景も市場食堂ならではの風情です。

豊洲を訪れたなら、ぜひこの市場の活力源ともいえる揚げ物を味わってみてはいかがでしょう。早朝から営業しているので、朝ごはんにもおすすめです。
店舗詳細
品書き
- 瓶ビール アサヒスーパードライ・キリン一番搾り 各700円
- 生ビール中 600円
- 焼酎 450円
- サービスC定食 2,200円
- ヒレフライ定食 2,100円
- 中落ち漬け丼 1,700円
店名 | とんかつ八千代 |
住所 | 東京都江東区豊洲6丁目6−1 7街区 管理施設棟 3階 |
営業時間 | 7時00分~14時00分 市場カレンダーにあわせて営業 ※水・日は休市日 |
創業 | 明治期から続く店 1935年に築地へ移転 2018年に豊洲へ移転 |