豊洲市場といえば、寿司や海鮮丼を思い浮かべる人がほとんどでしょう。ですが、築地時代から市場で働く人々の胃袋を支えてきた老舗の洋食店も、忘れてはならない存在です。なかでも魚介のソテーを食べるなら『小田保』が随一。知る人ぞ知る市場グルメとビールで、最高の朝を過ごしませんか。
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市場関係者に愛され続ける、築地生まれの洋食店

朝の通勤ラッシュとは逆方向へ。豊洲市場内に直接乗り入れる都営バス(市01系統)に揺られてやってきました。目指す『小田保』は、6街区と呼ばれる水産仲卸売場棟の3階、飲食店フロアの一角にあります。
豊洲移転後、場内の飲食店街はさらに観光地化が進み、有名寿司店には長い行列ができています。もちろんそれも市場の魅力ですが、本来は魚河岸ややっちゃ場で働く人々のための食堂街。ここ『小田保』は、そんな昔ながらの市場食堂の雰囲気を今に伝える貴重な一軒です。

創業は1935年(昭和10年)、築地市場の開場と同時というから驚きです。
店名の由来は、築地川が埋め立てられるまで架けられていた小田原橋(現在も築地魚河岸の建物名などに名称が残る)からきています。そもそも築地は江戸時代から南小田原町と呼ばれていたそうで、神奈川県の小田原とも関係があります。

創業時は酒場だったそうですが、戦後の困難を市場と共に乗り越え、腹を満たす洋食店へと姿を変えてきました。そうしたストーリーを知ると、なんだか『小田保』で飲みたくなってきませんか。

とんかつやフライが名物。普段から魚を扱う魚河岸の人々は、なぜか肉料理も大好き。そんなプロたちを長年唸らせてきた実力は本物です。
まずは赤星と鮪のブツ。これが市場の洋食店の流儀
朝から赤星と極上の鮪のブツ

広い市場を歩いて喉はカラカラ。席に着いたら、まずはサッポロラガービール(赤星)をもらって一息つきます。朝の光を浴びてから飲むビールは格別です。

そして、ソテーやフライの前にぜひ単品で楽しみたいのが、鮪のブツ(800円)です。「洋食店で刺身?」と不思議に思うかもしれませんが、ここは豊洲。

寿司店でなくとも、そこらの専門店にも引けを取らないほど質の良い魚介が揃います。

見てください、この見事な大トロまで混じったブツを。1階の仲卸フロアからエレベーターで上がってきたばかりの市場関係者も注文するのですから、その味は折り紙付き。ねっとりとろける脂の甘みと赤身の濃厚な旨味が、ビールの苦味と最高の相性を見せてくれます。これだけで瓶ビールが一本空いてしまいそう。
本命はバターソテー。旬の魚介を最高の火入れで
店先の黒板には、その日仕入れたとびきりの魚介を使ったおすすめメニューが書かれています。定番のメカジキやサーモンも美味しいですが、この日の黒板は「クロムツバター焼き定食」と「アイナメバター焼き定食」。

アイナメが一番脂がのって美味しい時期。迷わず「アイナメバター焼き定食(1450円)」をお願いしました。

表面は香ばしく、身は驚くほどトロトロ。鮮度が良いので臭みは一切なく、凝縮された旨味の塊です。

一切れはそのまま、もう一切れは軽く醤油を垂らして。特製のタルタルソースをたっぷりつけても、また違った美味しさが広がります。

そして忘れてはならないのが、アイナメの脂とバターを吸って、しんなりと甘くなった付け合わせのキャベツ。これがまた、ビールを進ませるのです。他にも夏はハモ、冬はカキなど、季節ごとのフライやソテーが楽しめるのも、市場の食堂ならではの魅力です。
豊洲の魅力は寿司だけじゃない

創業から90年。築地から豊洲へ、市場と共に歩んできた老舗の味。長年、魚のプロたちを満足させてきた洋食店のソテーは、間違いなく食べる価値のある逸品です。
市場の活気を感じながら、美味しい魚介のソテーとビールで始める一日。豊洲の新しい楽しみ方として、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょう。
店舗詳細



店名 | 小田保 |
住所 | 東京都江東区豊洲6丁目5−1 |
営業時間 | 6時00分~14時00分 市場カレンダーにあわせて営業 ※水・日は休市日 |
創業 | 1935年 |