森下「山利喜」 東京の老舗はこういう進化もまた魅力です

森下「山利喜」 東京の老舗はこういう進化もまた魅力です

2019年11月11日

東京森下で大正時代から続く老舗酒場「山利喜」。創業は1925年で、一世紀近く続く暖簾です。現在は、煮込みともつ焼きが看板料理ですが、これは戦災後の復興めし屋として提供したのが始まり。東京の各地にある老舗もつ焼き店と同じく、ここもまた安価で美味しい豚モツで街の人々に活力を提供してきた酒場です。

 

現在の店舗は2009年に建てられたもので、地上5階建ての建物です。それでも、店内の雰囲気は個人経営の老舗暖簾のムードそのまま。ひとり飲みの特権、煮込み鍋と焼き台を目の前にしたカウンターで飲むのがおすすめです。

 

ビールは、樽生がキリン一番搾りとギネス。そして特別な銘柄、無濾過ビールのサッポロ白穂乃香。名物の煮込みを頬張る前に、まずはキンキンに冷えた一番搾りで喉の準備を。それでは乾杯!

 

お通し(300円)は日によって変わり、この日はかんぴょうのキンピラです。

 

山利喜は、三代目がフランス料理の修行をされてから継がれた方で、料理にもワインとのマリアージュを考えられたものが多く、飲み物メニューもワインが充実しています。620円のグラスワインは、赤、白だけでなく泡にロゼまで選べます。

 

こちらが定番のおつまみメニュー。名物はやっぱり煮込み。ガーリックトーストを合わせて食べるのが山利喜流です。

ほかの料理もレバーのテリーヌなどに三代目のテイストが入り、老舗酒場のオーソドックスな品書きに個性がでています。

 

セロリ、パセリの茎、ローリエを束にしたブーケガルニが出汁になり、加えて赤ワインも入っているため、典型的な煮込みとはことなる山利喜の煮込み。注文を受けてから取り分けて、熱々に熱せられて提供されます。

 

欧州のシチューに近いのですが、食べてみると、これは間違いなく日本の牛モツ煮込み。定番のビールや酎ハイだけでなく、ワインとの相性も抜群にいいのは言うまでもありません。野菜や豆腐はなく、ギアラとシロ、そして旨味を吸って琥珀色に染まった玉子のみ。

 

モツの脂はプルプルとしていますが、しつこさはなく意外なほどにあっさりとしています。煮込みに6時間以上かけているということですが、その丁寧な仕事が長年愛され続けてきた根幹でしょう。

 

ボトルワインの品揃えの良さはもちろんですが、ここはグラス売りのハウスワインも期待に答えてくれる美味しさです。一人ならば、煮込みとグラスの赤ワインをカウンターでマイペースに楽しむだけで、それはもう十分にハッピーです。

 

やきとんは2本300円。タレ、塩を選べるほか、おまかせも可能です。フレッシュな状態から炭火でじっくりと焼き上げていきます。

 

もし早い時間に尋ねることができたなら、ぜひ頼んでほしい串があります。軟骨と赤身肉を混ぜ合わせるように叩いたつくね「軟骨たたき」です。一日15人分程度しか用意がない限定品。コリッとしていてとてもジューシーです。

 

箸休めには、少しおしゃれに茄子のマリネ(350円)を。ホワイトボードに書かれる季節食材の刺身や洋冷製の前菜は要チェックです。

 

焼けた順に少しずつ出してもらえるやきとん。串打ちが丁寧で、身と脂のバランスも考えられているかしらなどの部位。辛子をつけて頬張れば、たぷたぷな肉汁が口いっぱいに広がります。

 

山利喜のもつ焼きには、サッポロラガーがよく似合います。肉の旨味を追いかけるように、ビヤタンをぐっと傾けて。

 

典型的な老舗酒場とは趣が異なりますが、こういう変化、いえ、進化したお店も東京で長く続く店らしさのひとつだと考えます。カウンターで一人自分の時間を楽しむもよし、数人で来ても対応してくれるお店なので、酒場好きの人同士でみんなで飲みに行くのにもおすすめしたい一軒です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

山利喜 本館
03-3633-1638
東京都江東区森下2-18-8
17:00~22:00(日祝定休)
予算3,000円