門前仲町『折原商店』1世紀続く酒販店が母体。参道の角打ちで黄昏酒

約100年続く酒販店がはじめた門前角打ち『折原商店』をご紹介します。日本酒は50ml・210円から揃い、豊富な品揃えの中からお気に入りの一杯が探せます。気候が良ければ店先で瓶ビールを飲みながら、東京湾からの風を感じるのも大変心地いい。門前仲町に用事があれば必ず立ち寄りたい1軒です。

業務用酒販店がはじめた角打ち

外観

大手町・日本橋から地下鉄東西線で5分で行ける下町情緒が色濃く残る街、東京都江東区「門前仲町」。成田山深川不動堂や富岡八幡宮といった寺社仏閣が集まる、文字通り「門前」に広がるエリアです。江戸時代の頃から参拝客で賑わっていた歴史ある商店街が広がっており、居酒屋や料理屋など、お酒を楽しむ店が大変充実しています。

深川不動尊の参道「人情深川御利益通り」では毎月数回の縁日が開催されており、普段でも賑わう門前仲町がより一層活気づきます。縁日にあわせて試飲会などを開催している”お酒屋さん”が今回ご紹介する折原商店です。

歴史ある参道に構える同店ですが、店はまだ新しく開店は2011年です。運営の母体は東京・池袋で1924年（大正13年）に創業した、株式会社 折原という業務用配達を主体とした酒類販売企業。「温故知新」を掲げる同社が、伝統的な日本のお酒をより身近に感じてほしいと、ここ門前仲町に小売酒販店兼角打ちスペースを誕生させました。

内観

板張りで昔ながらの酒屋の風情を感じる店内。中央には大きなテーブルが鎮座し、お客さんは思い思いの場所でお酒を楽しみます。

店はそれほど広くはないものの、冷蔵庫には500品を越えるお酒が所狭しと詰め込まれています。

焼酎などの常温保管が可能なお酒は木棚にびっしり。それほど大きくない店ですが、角打ちとして一杯売りをしてくれる店としては、筆者の知る中では日本トップクラスの和酒の品揃えです。並んでいるお酒は、そのほとんどに一杯売りの値段が書かれており有料試飲が可能。飲みたいお酒がみつかったら会計カウンターへ瓶を持参し、都度払いとなります。支払いはSuicaをはじめ電子マネーにも対応しており、つい予算オーバーしてしまいそうです。

冷蔵庫には、銘柄は多くないものの瓶ビールも用意されています。大瓶は赤星ことサッポロラガー（510円）、中瓶はキリンハートランド（430円）とサッポロヱビス（500円）ほか。クラフトビールの八海山IPA、ベアードビール ライジングサンペールエールなどもあります。

品書き

樽生ビールは日替わりですが取材時は、アサヒスーパードライ：500円、八海山ライディーン（ヴァイツェン）：650円、名古屋赤味噌ラガー：600円。

角打ちながらおつまみはバリエーション豊富です。鮭とばダイス：360円、ピリ辛らっきょう：150円、いか塩辛：200円などの乾き物・瓶缶類のほかに、酒屋のポテトサラダ：300円、ピーマンの塩昆布和え：150円、自家製奈良漬け：300円、冷やしトマト：250円など、いわゆる調理品もあります。

ゆりかもめの鳴き声をBGMに、黄昏の門仲で乾杯

キリンハートランド中瓶（430円）

太陽が傾き、ピンと張った午後の緊張感がやすらいだ頃に飲むビールは最高です。黄昏の参道を眺めて、キリンハートランドで乾杯。

1986年に誕生したハートランドは、よく海外のビールに間違えられます。初期の頃から製造はキリンビール取手工場ですが、聖獣麒麟のロゴどころか、ラベルすら貼っていない「麒麟らしさ」のない独特なビール。現代でも通用するソリッドなデザインが秀逸ですが、味もまた、多種多様なビールが存在する今日でもハートランドならではの妙味があります。

たまご焼き（250円）

分厚く甘い玉子焼きを、一人立ち飲みで食べやすいサイズで売ってくれます。

日本酒は、小・大・瓶単位で販売

お酒は正面に出ているだけでなく、瓶の後ろにも別の銘柄が並んでおり、どれを飲もうかと眺めているだけでも楽しめます。小売もおこなっている酒販店ですからボトル売りがあるのはもちろんのこと、首にかけられた値札のとおり、小（50ml）、大（110ml）で一杯単位でも売ってくれます。

麒麟山 伝統辛口しぼりたて生（小210円）

選んだお酒は阿賀野川沿いの新潟県阿賀町・津川にある酒蔵・麒麟山酒造の季節銘柄、伝統辛口しぼりたて生。奥阿賀野米でつくった新潟らしい爽快なお酒です。全国から取り寄せた限定銘柄も豊富に揃えているのはさすがです。

手頃な価格でさくっと飲んで次へ梯子するもよし、気に入った銘柄を購入し、自宅でじっくり味わうもよし。10年ほどの店ですが、ここで飲むと自分自身を門仲色に染めてくれるような気がします。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ）