門前仲町「富水」 鮮魚店併設の食事処。魚好き必見の名店です。

門前仲町「富水」 鮮魚店併設の食事処。魚好き必見の名店です。

日本橋から東京メトロ東西線で2駅。歴史情緒の溢れる街、深川は門前仲町。深川不動尊、富岡八幡宮などの門前町として17世紀・江戸時代から栄え発展したこの街は、いまも門前町らしいに風情が残っています。

また、深川仲町通り商店街をはじめとしたこの街の路地は、居酒屋が非常に多いのも特長です。小さな老舗焼鳥店に、姉妹が店を継ぎ元気な掛け声で迎えてくれる酒場など様々。かつては日本橋や築地、いまは豊洲の魚河岸も近いことから鮮魚を目玉にしたお店も数多。

今日ご紹介するお店は、70年余つづく鮮魚店「富岡水産」の売り場奥に併設された居酒屋・食事処の「富水」です。ここのお刺身は一度食べると忘れられない美味しさです。

 

食事処を併設したのは約50年前だそう。増設を行い、いまでは60席になる大箱。入り口は魚介類が並ぶ冷蔵ショーケースの横の小さな扉なのに、奥に行くと学校の教室1.5部屋分くらいの広間にでます。そこでは、笑顔いっぱいの女将さんを中心に、ベテランスタッフの方が素早く配膳を繰り返し、そして、黒帯のんべえを中心とした顔ぶれが魚を囲んで楽しそうに過ごしています。

店はその広間より先にもうひと部屋あり、テーブルは大変多いです。カウンターがないお店なのですが、「テーブルがいっぱいあるのでお一人客も大歓迎です、1席くらいはいつも空いているから気にせず入ってみて!」と気っ風がいい女将さんの言葉。

 

家族経営のお店でアットホームな雰囲気もありつつ、割烹のようなしゃきっとした空気もある富水。イケメン店員さんにまずは瓶ビールをオーダー。

トトトと注いで、では乾杯!

 

瓶ビールはサッポロ黒ラベル、大ビンで700円。樽生は同じサッポロの琥珀ヱビス(グラス500円)。深川から永代橋を渡った隅田川対岸の街・新川で「サカリさん」の相性で呼ばれる灘の下り酒、日本盛が定番酒。2合で600円と手頃な価格です。冷酒は京都伏見のお酒、月桂冠。男酒と女酒、ふたつの蔵のみを揃えた品揃えに、店の想いが感じられます。とくに、日本盛の惣花は特別なお酒。お祝いの席で飲みたいものです。

本格焼酎は薩摩川内の田苑ボトル。サワー類は400円から。

 

お昼は人気の定食処として門前仲町界隈で働く人々に長年親しまれていますが、夜の部もご飯物あり。刺身に天ぷらもついた富水定食が1,100円。これにお銚子一本つければ、夕食を兼ねた晩酌は幸せ間違いなし。

 

定番メニューは、桜海老かき揚げが人気メニュー。一人利用でしたら量と価格をほどほどに調整してくれるサービスもあります。

 

そして、なんといっても富水の魅力はこのホワイトボードにあり。どうですか、食べたいものだらけではありませんか。刺身、焼き魚、煮魚の豊富さが店の人気のバロメーター。人数が揃えばあれもこれも摘みたいものです。

 

まずはお通し。テーブルによっても違う小鉢がでる、日替わりならぬ時間替わりな富水のお通し。酢の物、煮物、イカ明太などいろいろ。今日はクジラ煮、お通しの美味しさは、これから運ばれる料理の期待をより高めてくれるものです。

 

一人前、いい感じでとお願いをしたお刺身盛り合わせ(1,000~2,000円)。

 

美しさ、食材のよさ、包丁の入り方がよさ、そして何より種類豊富にしてもてなしてくれるこの心意気。まぐろ、かに脚、マイカ、子持ち昆布、タコ、ホタテにカンパチ。刺身好きの心を鷲掴みするような内容です。

 

スジのほとんどない、上等なまぐろ赤身。ゆっくり舌の上で溶け広がるねっとりとしたコクと酸味が大変に心地よいです。

 

あわせるお酒は月桂冠生酒(280mlびん詰・600円)。業界初の常温流通生酒である月桂冠生酒は、いまもちょっと贅沢な気持ちにしてくれるいいお酒です。吟醸酒のような果実に近い香りと食事に寄り添う濃淡のバランスの良さ。

 

名物のひとつ、桜えびのかき揚げ(通常1,000円・写真は一人前盛りにしたもの)。彩り鮮やか、エビのこうばしさがお酒を誘う逸品です。

 

大根煮(通常400円・写真は1個にしたもの)。こちらも通常ですとボリュームがありますが、一個にしましょうか?と柔軟に対応してくれます。いくつもの煮魚をつくる傍らでクタクタと煮込まれたもの。

 

ちびりちびりとカツオ酒盗(300円)をつまみつつ、にぎやかな店内で徳利を口へ運びます。すると、酔いとともに精神が空間にとけていくような、そんな不思議な感覚に。スマートフォンはバッグにしまい、居酒屋でぼんやりと酔いの進みを楽しむひとときは大切な時間です。

今回ご紹介できなかった煮魚、焼き魚も、これまで良いもの揃いでした。魚好きの方ならば、一度は訪ねてほしい一軒です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)

 

富水
03-3630-0697
東京都江東区富岡1丁目10-3
17:00~21:00(ランチあり・土祝は20:00まで・日定休)
予算3,000円