岡山『花門S』岡山駅前で40余年。牡蠣お好み焼きを頬張る。

岡山『花門S』岡山駅前で40余年。牡蠣お好み焼きを頬張る。

2020年4月10日

岡山県瀬戸内海沿岸の郷土料理といえば、バラちらしを筆頭に、「ままかりずし」や「鰆のこうこ寿司」、「たこめし」と魚介類をつかったものが非常に多いです。寿司やご飯ものに限らず、日常のあらゆるものに瀬戸内の幸が使われています。

そのひとつが、「牡蠣お好み焼き」、通称「カキオコ」です。岡山県は広島県、宮城県についで日本で3番目に牡蠣の養殖が盛んな地。戦後、瀬戸内の複雑に入り組んだ海岸線を活かし牡蠣の養殖が本格的にはじまり、とくに日生(ひなせ)の牡蠣は全国的にも有名になりました。


(日生漁港)

牡蠣のお好み焼きが広まったことについて、日生漁港近くの居酒屋の大将の話によると、「日生は牡蠣が比較的に安価で手に入り、お肉よりも身近だった。なにより牡蠣を日常的に食べる習慣がカキオコを生んだのではないか」とのこと。日生の居酒屋は牡蠣料理のオンパレード、ぜひ訪ねてみてほしいです。

そんなカキオコを日生まで行かずに食べられるお店が岡山駅前にあります。1977年創業の「お好み焼 花門S」です。Sの由来は今は不明らしく、「SuperのSだと思ってもらえれば」と現大将。大将と女将さん、そしてお手伝いの方で切り盛りするアットホームな雰囲気の店が、岡山駅徒歩1分の立地にあります。

東京から東海道・山陽新幹線ののぞみ号で約3時間10分、県内のみならず山陰・四国の玄関口でもあるJR岡山駅に到着。いぬ、さる、きじを従えた桃太郎像が迎えてくれます。

岡山駅前から岡山城や後楽園、そして天満屋本店がある市中心街へは路面電車が便利。

路面電車が走る桃太郎大通りより1本南側に入った高島屋浦の「本町」が駅前の主要な飲み屋街です。全国チェーンだけでなく、大箱の老舗大衆酒場や人気の焼き鳥店、オーセンティックバーと選択の幅が広い楽しいエリアです。花門Sもそのうちの一軒。

正午から夜10時まで通しで営業。ランチタイムを過ぎれば、高島屋でのお買い物帰りのマダムのランチや、平日でもビール片手にスタートダッシュを楽しむ昼酒の民の姿がみられます。テーブル席が7卓だけのコンパクトなお店です。

他のテーブルから香りたつソースの焦げる香りに誘われて、悩まず一杯、生ビール。キンキンジョッキに注がれる状態抜群の生。キリン一番搾りで乾杯!

花門Sは、国内ビールメーカー、大手4社の樽生をすべて取り扱い。居酒屋でも4社を置くお店なんて滅多にありません。樽生ビールは抜栓後なるべく早く空にして回転しないといけませんから、種類が多いと売り切るのが大変。お好み焼き店ながら、どれだけビールが売れるかおわかりいただけるかと思います。

アサヒはドライプレミアム豊醸、キリンは一番搾りプレミアム、サッポロは琥珀ヱビス、サントリーはザ・プレミアムモルツマスターズドリーム。各社のプレミアムビールが揃い、価格は共通で、中ジョッキ650円、大ジョッキ1,100円。加えて瓶もあり、キリンラガーなども選べます。大箱でもないのに、どこにそんなビールを保管しているのか、不思議です。

さて、ビール話が長くなってしまいましたが、続いて料理のご紹介。県北名物のホルモン焼きうどんや、定番のねりこみ系お好み焼き各種、そして牛すじ(630円)、海鮮チヂミ天(270円)、鉄板料理の数々と、飲めるお込みの焼き屋らしい豊富なおつまみが嬉しいです。

ねりこみのお好み焼きと、そば・うどんをあわせるもだん焼きの2種類から選べるほか、もんじゃもあります。

今日の目的は「牡蠣お好み焼き」、かき玉(1,150円)の登場。混雑していても全席の鉄板の面倒をみてまわる女将さんは、まさに職人さん。手際よく混ぜて盛り付けて、そうして手を動かしながらも会話で楽しませてくれます。

牡蠣は大ぶりのものが8個も入ります。まずは生地の上に4個をのせて、それを鉄板でジュージュー言わせ、鉄板の余白で残り4個の牡蠣を炒めます。

最後にそれらをあわせ、ソースをたっぷり塗ったら出来上がり。かなり分厚く焼き上がりは少し時間がかかります。鉄板から漂う牡蠣の磯風味を前にしてお酒が進まないはずがありません。

ビールのつぎは、サッポロの樽詰サワー「氷彩」です。岡山県赤磐市にあるサッポロ岡山ワイナリーに由来する、ホワイトブランデーベースの氷彩は、岡山で飲んでおきたい一杯。レモンや青りんごなどのコンクを入れたチューハイ(480円)で提供していますが、もちろんプレーンも可能。氷彩プレーンはソース味と好相性です。

焼き上がりました、かき玉。牡蠣から流れる半透明のエキスが鉄板の上でジュージューと音をだし、それを生地が吸い込んでいきます。

牡蠣そのもののコクとソース味のバランスがよいのですが、なによりも生地全体が牡蠣風味になり、旨味五割増しです。深い旨味と甘辛ソースのメリハリある味は、脳裏に残る美味しさです。

お昼から飲むもよし、〆の一軒に使うもよしの「家門S」。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名花門S(エス)
住所岡山県岡山市北区本町2-22 錦ビル 1F
営業時間11:00~21:30
開業時期1977年