櫻泉、飫肥杉、無月などのブランドで知られる井上酒造・櫻の郷酒造。その酒造場に併設された「焼酎道場」は、以前業界紙で見かけたときからずっと気になっていました。
今回は日南市の取材旅行の一環で、なんと念願かなっての訪問ができました。公共交通手段ではなかなか行きにくい場所ですが、JR日南線の特急列車も停車する北郷駅から、タクシーで10分ほどの場所にあります。無人駅ですが、特急の時間にはタクシーが駅前に止まっています。※確実に行くためには呼び出しておくことをおすすめします。
地元の飫肥杉でつくられた建物は、明治・大正の酒蔵をイメージ。オートメーション化が進む酒造工程においても、昔ながらの製造技術を継承を目的とした施設で、その中を見学・体験ができるようになっています。
無月の巨大なかめ。現代のプラント的な製造を行う他のアルコール飲料と比較し、本格焼酎は世界のワインと並び、長い年月が経過しても作り方は大きく変わっていません。
ここでは、焼酎のブレンドを体験できます。
本格焼酎に詳しい方や酒類業界の人には当たり前かもしれませんが、実は本格焼酎は、蒸留し貯蔵してできた焼酎の原酒のままでは商品になりません。複数の原酒をブレンドすることで、その蔵の味となり、商品として私達の元へやってきます。
ここでは、そんなブレンダーの仕事を体験できる、まさに大人のキッザニアとでも言える施設です。
年代別を混ぜる…と、そこまでは本格的にやらないものの、加水して度数をコントロールされた焼酎がずらりと並ぶ中から、麹別、減圧/常圧、芋・麦・米と原料別のものをテイスティングしながら混ぜていきます。
ご自宅や飲食店では、焼酎はメーカーのボトルままを飲むのが一番美味しいと考えるのが一般的ですが、いやいや、混ぜちゃってもいいんです。むしろ、蔵の人自身が、ごちゃまぜで飲むのが好きという人が多いくらい。
酔っ払う前に、自分の目指す味をみつけだし、ブレンドしていきます。
最後は瓶詰めと化粧箱までつけて、完成。1本つくるのに、試飲し放題でこの価格。ラベルはお洒落なデザインにするもよし。私は試作品風。 “TRY1″とでも書けばよかったかな(笑)
容器は持参もOKなので、大切なお酒好きの人へのプレゼントに、自分ブランドの焼酎をプレゼントするなんていうのも素敵。
ブレンド体験だけでなく、近隣12蔵の紹介や、同社の商品のほぼすべてを試飲することが出来ます。
公共交通のアクセスがやや難しいですが、これは自動車や自転車で来たらもったいない施設。焼酎好きにはまさに楽園です。
お湯・氷完備、ありとあらゆる本格焼酎が揃います。昔ながらの製法でつくられ、お湯割りに向いている常圧。現代風の飲み心地でロックに向いた減圧。意識して飲み比べると、本格焼酎の幅の広さを再発見。
もちろん、購入も可能。
要予約なのですが、麹造りコース、醪造りコース(各5,000円)で、実際に本格焼酎の製造も体験できます。まさに焼酎道場。メーカーよりも美味しい(個人の感想で)焼酎をつくって、道場破りだ!(笑)
本施設の地下は同社の製品用の瓶がずらりと並び、その時を待って眠っています。
蔵付き酵母が一面についています。密閉されていても広がる菌の力、お酒は生き物だと感じられる場所。
街の中心地から少し離れますが、焼酎がお好きでしたらきっと楽しめる施設です。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/宮崎県日南市)
焼酎道場(櫻の郷酒造株式会社)
0987-55-4134
宮崎県日南市北郷町郷之原甲888
9:00~4:00(無休)
メモ:タクシー 宮崎第一交通株式会社 日南営業所 – 配車室 TEL:0987232457