2025年、北海道のビール好きにとってはちょっぴり特別な年です。北海道限定『サッポロ クラシック』が発売40周年を迎え、街のあちこちがお祝いムード。
すすきのの象徴、あの巨大看板もサッポロ生ビール黒ラベルからサッポロ クラシック仕様に変わっていました。そんな年にサッポロビールの聖地を巡れば、きっと一杯のビールがもっと愛おしくなるはず。さあ、ビール好きの知的好奇心を満たす、北海道旅行へ出かけましょう。


(取材協力/サッポロビール株式会社)
歴史が息づく赤レンガの街へ


真夏の太陽に迎えられ、新千歳空港から札幌市内へ。今回の旅のテーマは、ずばり「サッポロビールの聖地巡礼」です。

まず向かったのは、札幌市の中心エリアにありながら堂々たる歴史的な建物と大型ショッピングモールが融合した『サッポロファクトリー』。ここは単なる商業施設ではありません。1876年(明治9年)、サッポロビールの前身である『開拓使麦酒醸造所』が誕生した、日本人の手によるビール造り始まりの地なのです。

そびえ立つレンガの煙突は、この土地のシンボル。思わず見上げて、記念に一枚。旅の始まりを実感する、最高の瞬間です。
一歩足を踏み入れると、明治時代に造られたという赤レンガの建物が、圧倒的な存在感で迎えてくれます。壁にそっと手を触れると、150年近い時の重みが伝わってくるかのようでした。


創業の地で味わう、できたての開拓使麦酒

そんな歴史のど真ん中に、創業の精神を受け継ぐ醸造所『BREWERY1876』があります。ガラス張りのモダンな空間の奥で、職人さんがビールを醸造しているのが見えました。ここでしか飲めない一杯をいただくため、早速カウンターへ。

お願いしたのは、3種の『開拓使麦酒』が楽しめる飲み比べセット(1,100円)です。

黄金色に輝く『ピルスナー』は、創業当時の味を目指したという、まさにサッポロビールの原点。キレの良い喉ごしと麦芽の豊かなコクが、旅の疲れを癒やしてくれます。 美しいレンガ色の『アルト』は、香ばしい余韻が心地よい一杯。落ち着いた味わいが、この建物の歴史と見事に調和しています。 そして、白く濁った『ヴァイツェン』。フルーティーな香りと優しい甘みは、暑い夏にぴったり!

開拓使たちの夢に想いを馳せながら飲む、できたてのビール。これほど贅沢な体験はありません。
なぜ札幌に?物語を秘めたビールの博物館


ほろ酔い気分で、隣接する『サッポロビール博物館』へ。

今回はサッポロビールさんの特別な計らいで、まずは通常ツアーでは見ることのできないという、歴史ある貴賓室へと案内していただきました。明治天皇が座られたという重厚な椅子を前に、少し背筋が伸びる思いです。

そして、そのまま、予約があっという間に埋まるという人気の『プレミアムツアー』に参加させていただくことに。大型ディスプレイの映像と専門のブランドコミュニケーターの方の語りがまた巧みで、まるで大河ドラマを見ているかのような気分になります。

特に心を掴まれたのは、「なぜビール工場が、札幌に造られたのか」という物語。 この国家プロジェクトの技術的な心臓部となったのが、新潟出身の中川清兵衛。彼は、日本人で初めて本場ドイツでビール醸造技術を習得した、いわばビールのパイオニアです。

そして、その技術を最大限に活かす舞台を用意したのが、幕末の薩摩藩士であった村橋久成。彼は開拓使の官吏として、中川から「うまいラガービール造りには、冷涼な気候が不可欠だ」と聞くと、当初の東京建設計画に猛然と反対。「やるなら札幌だ」と強く進言し、その決定を覆したのです。薩摩の熱い魂が、北の大地でビールの未来を切り拓いたと思うと、なんともドラマチックではありませんか。



ツアーの道中、見上げるほどの大きさと荘厳な輝きを放つ、銅製の仕込釜(ケッセル)にも圧倒されました。


150年の時を超えて、いざ乾杯!

歴史をたっぷりと学んだツアーの最後には、最高のお楽しみが待っていました。お待ちかねの、テイスティングタイム。

提供されるのは2種類。まずは、このツアーでしか飲めないという「復刻札幌製麦酒」。グラスに注がれたビールは、酵母をろ過する技術がなかった開拓使時代の製法を再現しているため、美しく濁っています。口に含むと、アルコール度数6%の力強い味わいと、酵母が生きた複雑で豊かな味わいが広がりました。これが、150年前に夢見られた味なのかと、胸が熱くなります。

対するは、おなじみの「サッポロ生ビール黒ラベル」。飲み慣れた一杯のはずが、歴史を知り、復刻版と飲み比べると、その洗練された味わいが一層際立って感じられます。キレ、コク、香り。すべてが完璧なバランスで設計されていることが改めてわかりました。歴史あるメーカーだけに、背景を知れば知るほど美味しく感じますね!

歴史を頭で学び、舌で味わう。これほど知的好奇心と食欲を同時に満たしてくれる体験は、そうそうありません。

最高のビール体験にすっかり満足しつつも、旅はまだ終わりません(笑)
さあ、この感動を胸に次なる目的地、お隣りにある日本最大級のビヤホール『サッポロビール園』へと向かいましょう!