日本でもおなじみ、150周年を迎えたビール『ハイネケン』。国内ではキリンビールが長年ビジネスパートナーとして製造販売を行ってきました。192カ国で販売されている世界的なブランドですが、うまれはオランダの首都・アムステルダム。創業の地には、「ハイネケン博物館」ともいえる巨大な体験施設『ハイネケン・エクスペリエンス』があり、世界中からビール愛好家がやってきます。
今回は、日本ではあまり知られていない、ハイネケンの聖地をご紹介します。
目次
アムステルダムの旧市街に鎮座する巨大なファクトリー
旧市街にあるファクトリーを目指す
オランダ国鉄線を快走する高速列車「タリス」に乗って、アムステルダム中央駅にやってきました。ヨーロッパらしいアーチ状の大屋根に包まれたホームには、ベルギー、フランス、ドイツなどから観光に訪れた旅行者でいっぱいです。
アムステルダムはオランダ(Nederland)の首都です。アムステル川にダム(堤防)を築き、そこに人々が暮らし始めたことが街のはじまりで、なおかつ地名の由来でもあります。貿易都市として発展し、17世紀のオランダ黄金期には、世界で最も裕福な都市と言われました。
日本との交流も深く、長崎の出島を通じて西洋文化の接点をつくった街でもありました。現在の町並みは、ナポレオン戦争後、産業革命により再び息を吹き返した19世紀後半に作られたものが多く、玄関口であるアムステルダム中央駅や世界的に有名なコンサートホール「コンセルトヘボウ」などもこの頃建てられました。
ビール好きならば、一度は飲んだことがある『ハイネケン』もこの頃に誕生しました。
1841年にアムステルダムで生まれたジェラルド・アドリアン・ハイネケンは、22歳で醸造所を購入。ラガービールの研究を進め、1873年に緑のボトルのラガービール「ハイネケン」を発売します。
ハイネケンが最初に開設したビール工場は、改築をしながら1988年まで醸造を行ってきましたが、生産量が需要に追いつかず、ライデンに新工場を造り移転しました。製造を停止したアムステルダム旧市街の施設は、『Heineken Experience(ハイネケン エクスペリエンス)』と名付けられたビール醸造設備を残した博物館に生まれ変わり、ハイネケンの世界観を体験できる場所になりました。
アムステルダム中央駅からはトラムで20分。地下鉄ならば2駅5分の「Vijzelgracht」駅下車すぐ。
ハイネケン エクスペリエンスは要予約
レンガを積み上げた7階建て相当の巨大な壁のような建物が、ハイネケン エクスペリエンスです。現存する日本最古のビール工場だった建物は札幌にあるサッポロビール系の施設ですが、それとは比較にならない大きさに圧倒されます。
さて、東京を発ってから丸一日かけてやってきたハイネケンエクスペリエンスですが、実は事前予約制です。ハイネケンのWEBサイトで簡単に予約することができますので、お忘れなく。また、ツアーは有料となっており、本記事掲載時点では €23,00 です。
入場を済ませると、ツアーの待機列が待っています。さすがは世界的なブランド。生まれも言葉も違う、でも「ビールが好き」という共通項をもった人たちでいっぱいです。
歴史をたどり、体験するハイネケンツアー
さあ、時間がきましたので進みましょう。オランダ語だけでなく英語でも案内してくれます。
創設は1860年代。1873年にファミリービジネスの小さな蒸留所を作ることで本格的なビールづくりが始まります。
ハイネケングリーンボトルの誕生
1873年、すでに現在のハイネケンの原型が出来上がります。グリーンボトルに詰めたラガービール「ハイネケン グリーンボトル」です。1880年代になると、ラベルも緑色を使用するようになります。
またこの頃、赤い星「ハイネケンスター」が登場しました。意味は、ハイネケンの公式自身も諸説あるとしていますが、醸造酒を守る神秘的な意味を持つマークとして中世の醸造家が好んだ説や、ビール造りに必要な土、火、水、風、未知の力を表しているなどがあるとのこと。
冷戦中は星マークを白くしていたというのは、トリビアです。
最盛期の中心街の工場は工場らしからぬ華やかなものだったそう。1900年代初期の写真が飾られていました。
工場設備を残した「Brew room」へ
日本でもサッポロビール博物館などで見ることができる、銅でできた巨大な仕込み釜が堂々と鎮座していました。35年前まで現役だっただけに、その規模は相当大きいです。見学での感覚的な話ですが、オリオンビールの現名護工場と同等程度の生産能力を持つ設備だったのではないかと思います。
ビールの製造工程も紹介されていました。これは麦と水を合わせて熱を加えもろみをつくる様子を再現しているようです。
製造されたビールは、木樽に充填され、緑の荷馬車に乗って出荷されていたそう。敷地内には馬小屋まであり、取材時は実際に馬が飼育されていました。いまでも式典などでは馬がビール樽を積んだ荷馬車を引くことがあるとのこと。
歴史を知り、製造工程を学んだら、いよいよ乾杯
皆さん、もう飲みたいでしょう?とヨーロッパらしい陽気な感じで話しかけてくるツアーガイドさん。ツアーは最後にバーへ向かう流れですが、その前から飲めるというのは粋なサービスです。
出来立て(現在の工場はアムステルダム郊外ですが)のビールを注いでもらい、ツアー参加者みんなで乾杯します。
皆さんそれぞれ母国語で乾杯。私も「乾杯!ハイネケーン!!」
5%のラガービール「ハイネケン」。注ぎ方が上手なのか、ガス圧がちょうどよく、喉をスルスルと流れていきます。
こんなにスムースな味だったとは、と改めて美味しさを感じつつ、フォトジェニックなスポットを飲みつつ進みます。
オリジナルボトルが作れるコーナーがあり、€6,00ほどでつくれます。私は荷物を増やしたくないので、飲む方専門です。
「Best’Dam Bar」は、テンション高めなクラブ的な場所
これまでは、1900年代初頭あたりの雰囲気でした。ツアーガイドに促されるようにエレベーターへ乗ると、まるでタイムマシンに乗ったような映像演出が全面に映され、時代は一気に現代へ。降りたところは、ノリのいいクラブミュージックが流れる、現行ハイネケンの世界観に浸れる「Best’Dam Bar」でした。
入場時に手渡されたブレスレットを返すとビールを2杯もらえます。ハイネケンがスポンサードしているスポーツのミニゲームなどもありますが、私は淡々と、極上の本国・アムステルダム郊外の工場で醸造されたハイネケンを味わっていました。
大満足です
日本では販売されていないブラウンエール「オールドブラウンビール」などもありますので、ハイネケンファンは必見の施設です。もちろん、ハイネケンに限らず、お酒がお好きな方はぜひ。オランダ旅行の良い思い出になるに違いありません。
海外のビール工場なら、こちらもオススメ
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
施設名 | Heineken Experience |
住所 | Stadhouderskade 78, 1072 AE Amsterdam, オランダ |
営業時間 | 10:30 to 21:00 (last entry 18:45) |
創業 | 1867年 |