東京から10,840 km。ここはクリエイティブな街、アメリカ・ニューヨーク、ブルックリン地区。19世紀、ブルックリンは世界各国からの移住者によって多様なビールが生産されていた、全米トップクラスのビール生産地でした。
その後、経済・産業の変化や治安の悪化などでブルックリンのビール醸造は衰退の一途をたどりますが、いまや「ブルックリンブルワリー」といえば、アメリカを代表するクラフトビール銘柄のひとつとなり、復活しています。
2016年にキリンが資本業務提携契約を締結し、日本国内でも一部の飲食店で日常的に飲むことができるようになりました。2020年2月には東京・日本橋兜町に、「ブルックリン・ブルワリー」の世界初旗艦店「B(ビー)」がオープンしています。
今回の記事は「ブルックリンブルワリー」創業の地を訪ねます。(取材時期:2019年秋)
ブロードウェイでミュージカルを楽しんだあと、近くのパブでたっぷりとビールを飲んでしまい、だいぶ遅くなりました。それでも、昼間のような明るさと賑わい。世界の交差点は眠りません。
ニューヨーク・マンハッタン地区。ブルックリンへはタクシーでもよいですが、イーストリバーを越える橋やトンネルは渋滞が多く時間がかかるそう。最速のルートは、MTA(Metropolitan Transportation Authority)が運営する地下鉄です。
プリペイド式のメトロカードを購入。きっぷはありません。
グランドセントラル駅から約15分。イーストリバーをくぐり、マンハッタン島を抜けて最初の駅「ベッドフォード・アベニュー」が最寄り駅。高層ビル群に囲まれ空が見えなかった摩天楼エリアがうそのように、ブルックリンは落ち着いた町並みが広がっています。
ブルックリンは造船、製造業、そしてドイツなどからの移民によって拡大した街。19世紀、全米で製造されるビールの10%がブルックリンで醸造されていたと聞きます。
衰退したブルックリンの街と、ブルックリン産ビールの復活を願い、1988年、銀行員のトム・ポッター氏、新聞記者スティーブ・ヒンディ氏によって設立されたブルックリンブルワリー。
駅から徒歩10分ほど。かつての産業エリアを彷彿とさせるレトロな建物が目的の場所です。見学・体験だけでなく、醸造も行われていますから、ビール樽がいたるところにあります。
雨のブルックリン。ビールの香りに誘われて到着です。ブルックリンブルワリーの成功は、地域の再生にも貢献し、いまではニューヨークの新たなアートスポットとして世界的に注目されるようになりました。
入り口にいるセキュリティのお兄さんに年齢確認のためパスポートを提示すると、笑顔でいれてくれます。
入ると正面にシンボル的に設置された醸造タンク。ここで作られたビールを有料試飲することが今回の目的です。醸造所の見学ツアー(平常時)は30分ごとに開催されています。
ブルックリンブルワリーグッズもたくさん。いかにもアメリカテイストなラインナップです。
奥へ進むとタップコーナーと広いスペースが用意されています。あとは思い思いに、心ゆくまで(酔いすぎないように)飲むばかり。
20種類以上のビールたち。日本でもブルックリンブルワリーのビールが飲めるとはいえ、定番のブルックリンラガーといくつかのエクステンション程度ですが、本場はこんなに種類があるのですね。
値段はすべて、12OZ(約340ml)で$6(約640円)。クレジットカードで支払い可能。
ブルックリンラガーは創業時からの銘柄で、かつてこの街で製造されていたウィーンスタイルのビールを復活させたものです。加えて、ブリューマスターのギャレット・オリバー氏によって次々と自由な発想のビールがうまれ、いまに至ります。北海道空知地方で開発されたホップ「ソラチエース」を使ったビールもあります。
FLIGHT OFFERINGS($14)で4種類のビール類試飲セットが用意されています。セットは2種類。BROOKLYN O.G.’sのセットは、ブルックリンラガーをはじめとした定番の4種類です。
日本酒でもワインでも、世界中でこういうセットがありますね!最初は「うーん、これはこうで…」と頭で楽しむものの、途中から「全部美味しい」となっていくのはいつものことです。
ブルックリンブルワリーではフード類の販売は行われておりません。そのかわりフードの持ち込みはOK(通常時)です。ブルワリーの周辺でキッチンカーを発見。ハンバーガーを調達中のお巡りさんに混ざって、私も買い出しです。ニューヨーカー気分でテクスメクスやバッファローウイングを買って持ち込むもよし、どうしましょう。
ここはやっぱり、ニューヨークの郷土食・ホットドッグで。熱々のソーセージを小走りで買ってきて、さて、ビールと揃えていただきます。
広々とした空間。リズム・アンド・ブルースや、スローロック、JAZZなどが流れるなか、個性豊かなビールを味わうひととき。世界中の人々が集まり、文化が集積してきたこの街の魅力に触れられたとひしひしと感じます。
ブルックリンブルワリーを訪ねてみてわかる、アメリカのビール文化の魅力。記事ではほんの僅かも伝えらていないかも知れません。ただひとつ言えることは、行ってよかったということ。ビールの味、ほろ酔いになる心地よさ、空間や地域の色合いを見て感じること以上に、なにか特別な体験をしたように思います。
いつかまた、いけますように。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ブルックリン・ブルワリー
Brooklyn Brewery
https://brooklynbrewery.com/
+17184867422
79 N 11th St, Brooklyn, NY 11249 アメリカ合衆国