東京の酒場にはサッポロビール。
鍵屋も、三州屋も、升本も、まるます家も、丸千葉も、いせやも、富士屋本店も、鳥竹も、とよかつも、新日の基も、和田家も、大越も、ニューカヤバも、大林も、千登利も、豊田屋も。みんなが大好きな酒場には星マークがよく似合う。
東京の酒場の、いつものテーブルに、いつものカウンターには星マークがあった。そしてこれからも。酒場好きが選び続けてきたビールメーカーは、歴史の重みが違う。サッポロの強みは、この重さにあるのではないでしょうか。140年目のサッポロビール。これからもお酒好きの心を夢中にさせてくれるビールメーカーであり続けてくれると期待しています。
私が最初に飲んだビールがサッポロでした。よくある、親の影響というもの。吉祥寺のいせや公園店の畳の上で。あのときの味が忘れられなくて、毎日欠かさず飲み続けているビールがあります。それが私の原動力。そんな私のパワーの源、サッポロビールの本社に訪問してきました。
サッポロビールの本社は札幌、ではなくて東京渋谷区にあります。もちろん、北海道発のビールメーカーですので札幌にも北海道本社があります。サッポロビールがなぜ東京にあるかは後ほど歴史のコーナーで。
設立の翌年、1877年。札幌ビール発売。ここから現代に続く大衆酒場で、いまこの時間も飲まれている日本一のロングセラー商品が誕生した瞬間です。多少ラベルのデザインは変わりましたが、これをみてお気づきではないですか?
そう、赤星です。いまは、生ビール黒ラベルと区別するためにサッポロラガーという名前で発売されていますが、このときからずっと赤い星マークのビールの歴史が始まり、そして吉祥寺の「いせや」で私が出会い、日々の原動力となっているのです。これを飲んでいた祖父や父、上司など、皆さん、「赤星」を囲んで飲んだ思い出は誰でもお持ちなのではないでしょうか。これこそ、サッポロの強み。
1889年に、いま取材しているここ恵比寿に日本麦酒が醸造所を造り、その商品に恵比寿麦酒という名前をつけました。この地が恵比寿になったことの始まりでもあります。
恵比寿はドイツのビールそのもののような品質で大人気に。日本最大の製造量を誇る銘柄となりました。急増する出荷に応えるために山手線に貨物専用駅「恵比寿」が設けられ、恵比寿ビールが全国へ出荷されました。
そして日本最大のビール会社となった日本麦酒は、先に紹介した赤星を作る札幌麦酒と大阪の旭麦酒を吸収し、大日本麦酒となりました。麒麟麦酒はあったものの大日本麦酒のシェアは7割と圧倒的だったそう。昭和24年に過度経済力集中排除法の適用を受け、朝日麦酒が分離され、現在のアサヒ・キリン・日本(後のサッポロ)の大手ビール体制となります。
ヱビスとサッポロを持つ日本麦酒はサッポロビールに社名を変え、現在に至ります。ですので、本社がなぜ恵比寿にあるのか、という答えは、日本麦酒時代の初代醸造の地だからということ。
恵比寿麦酒ありきで駅名が「恵比寿」になり、その後、地名までが恵比寿になり、そこに本社があるのだから、もう本社所在地そのものがこの会社の「重さ」なんです。
1977年、サッポロびん生登場。1985年にはサッポロクラシックが生まれました。私も生まれたわけですが、その頃おもしろいのは、黒ラベルという愛称のビールはあったものの、正式名称は「サッポロびん生」のままでした。それがなんと1989年、黒ラベルになったのです。名前を変えたのはファンの力。実は、1957年にも似たようなことが起きていて、ニッポンビールという名前の日本麦酒時代の主力商品をサッポロビールに返させたのはファンの意見が強かったそうです。
そんなファンの想いが込められて続いてきた140年の重さを抱え、それを誇りに新たなサッポロビールになって欲しいですね!サッポロは歴史的には色々と変わることが多かったけれど、軸はぶれない、いろんなことに取り組んで、それでも軸を守り続けて欲しいです。
そんな、ユーザーの心をこめて、今年も2トップ体制のサッポロビールです。尖らない、バランスの良さこそ黒ラベルの魅力。そして、深みのある味わいのヱビス。
さて、本社ロビーには同社の旬の商品がずらりと展示されていますので、順にみていきましょう。まずはヱビスのコーナーから。2016年3月よりヱビスビールのクオリティアップが発表されていますが、まだここにあるのも現行のデザイン。奥は現在限定発売中の「ヱビス with ジョエル・ロブション 華やぎの時間」。
ちなみにクオリティアップ後のヱビスのデザインがこちら。見比べてみると文字が濃い茶色でフォントデザインも変更になるようです。ラッキーヱビスはあるのかな?
続いて新ジャンル。安定した人気と発表されている極ゼロ。糖質・プリン体・人工甘味料、3つのゼロが特長の気になる人向けビール。これ、さすがにビールと間違えるほど…ではないのですが、すっきりしていて極ゼロという飲み物としてふつうに美味しいです。麦とホップは昨年出荷数は減ってしまったそうですが、麦芽量を増やすなどリニューアル。麦ホは私のお風呂あがりの一杯です。
トクホのSAPPORO+がいま好調だそう。そういえば、最近値段が下がりました?
。ビール飲めないけれどビールに合う料理と飲みあわせる、そんなシチュエーションだとやっぱり糖の吸収は心配ですもんね。同様の商品が他社から発売され今後が注目されます。
続いてワイン。サッポロがワイン事業を始めたのが1976年だそうですから、今年で40年目。マルケス・デ・リスカルはスペインリオハ地方のワイン。今年で25周年、なんだか2016年はサッポロにとってきりのいい年ですね!
サッポロワイン色々。ラグジュアリークラスのラインナップを増やす最近のサッポロ。
国産のグランポレールも価格帯がいくつか増えました。この冬、銀座にコンセプトワインバー「グランポレール」をオープンさせるなど、今年もいろいろ動きがありそう。
イエローテイルは変わらず飲まれるデイリーワインですね!昔、国際フォーラムでイベントをやっていましたが、ホットワインやはちみつを入れたりアレンジして、単に味わうだけでないカクテル的な飲み方が楽しいワインです。
つづいて焼酎部門。キッコーマンからやってきたサッポロ焼酎は、ラベルが数年前に星マークにかわり、いまはすっかりサッポロの主力メンバーの仲間入りといった感じ。白いラベルの和ら麦は2010年から発売のサッポロビール自身がビール工場品質で手掛ける麦焼酎。ふくよかな甘味があり雑みがなく食事によく合います。
まだ続きます。こちらはRTD部門。不二家とのコラボレーションで誕生したネクターサワー。ノーベルとコラボした男ウメサワー、バカルディ社とコラボしたモヒート。サッポロのRTDはコラボが中心だけど、いつかは定番であり続ける商品を生み出してくれると楽しみにしています。キレートレモンサワーはグループ会社のポッカサッポロとのコラボ。
2011年、バカルディ・ジャパン社との業務提携スタート。これまで洋酒やスピリッツはほとんどなかったサッポロにウィスキー「デュワーズ」やラム「バカルディ」、ジン「ボンベイ・サファイア」が登場。この年、サッポロビールの取扱商品は一気に厚くなりました。私もこの年から、マティーニはいつもボンベイ・サファイアになりました(笑)
そういえばこのときに始まったバカルディスペリオールをベースにしたマティーニはヒット商品でしたね!
そして2013年、ポッカとサッポロのグループ会社サッポロ飲料が統合し、ポッカサッポロフード&ビバレッジが操業開始。まさかじっくりコトコトがやってくるとは思いもしませんでした。
サッポロ飲料といえばリボンシトロンなどがありましたが、私の中では「おいしい炭酸」や「業務用玉露緑茶」のイメージだった同社になんとキレートレモンが登場。キレートレモンが統合前から好きで、たまに甲類焼酎を割って呑んだりしていたのが、まさか公式になるなんて。あとはポッカの傘下にあったポッカクリエイト、つまりはカフェ・ド・クリエがサッポロ傘下になったので、サッポロファンならばコーヒーはカフェ・ド・クリエでしょ(笑)
そして最後にご紹介、2011年、初の海外工場をベトナムに建設したサッポロ。
1985年頃からアメリカで人気だったコップ型の缶をイメージしたオリジナルのシルバーメタリックな缶で出荷され、これが大変好調なのだそう。私も自宅にありますが、プルトップの普通の飲み口とはいえ、日本のデザインとは大きく違うこともあり、とっても特別な感じがあります。
いかがでしたでしょうか。サッポロビールのロビー見学、と言いつつ、年表を解説してきたような流れになってしまいました。
恵比寿ガーデンプレイスと一体になった同本社。実は地下がヱビスビール記念館なんです。三越側から入ると、まさか上に本社があるって気づかないかもしれません。記念館の天井も高いですが、本社も一階ロビーはとても高く、窓の外には庭園が広がっていてホテルのロビーのよう。ビル中央が吹き抜けになっていてとても開放的な作りになっています。残念ながら生ビールはないもよう…(笑)
これからも、主力のビールに全力投球のサッポロ。それを支える商品群もしっかり揃い、今年の動きもとても楽しみです。
そして、もっと「重さ」を意識してよい開発、よいブランディング、よい商品づくりに励んで欲しいと思います。140年は昔話ではなくて、今の酒場にサッポロがあることも、いまこうしてサッポロファンが応援していることも、その歴史の中で作られてきたサッポロの財産なのだから。
※一般の見学はできません。特別に許可を得て撮影しています。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)