福島『つやこ』大蒜味噌の餃子が愛され60年。駐輪場の名酒場

福島『つやこ』大蒜味噌の餃子が愛され60年。駐輪場の名酒場

2022年12月15日

一度は訪ねていただきたい名店、福島駅前『つやこ』。創業は昭和34年。店主やお客さんらが代々守ってきた地域密着の大衆酒場です。濃厚なニンニク味噌に浸して食べる名物餃子は唯一無二の味。連日、近隣の会社員で満員になります。

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円盤餃子以外の選択肢は、駐輪場の中

福島市の名物といえば何を思い浮かべますか?

「いかにんじん」や「凍み大根の煮物」、「ざくざく煮」など、ふるさとを感じさせる優しい料理が多いですが、お酒好き、酒場好きの間では餃子が人気です。

福島駅前には創業60年以上になる老舗から新進気鋭まで、合計約20軒の餃子店があります。餃子をメニューのひとつに入れている居酒屋を入れれば更に多いです。

福島の餃子は独自のスタイルがあり、フライパンいっぱいに並べて丸皿に盛り付ける「円盤餃子」が一般的。地元の人で連日賑わう餃子店は、福島の夜を代表する光景のひとつです。福島に来たら、餃子を食べずには帰れません。

福島駅前には昔ながらの細い路地が残っています。会津料理を掲げた小料理屋、庶民的なバル、長く続く大衆酒場、びっしりと看板がつらなるスナックビル。それらに囲まれた小路を歩くと、東京まで新幹線で1時間30分の近さであっても福島に一泊したくなります。

外観

そんな福島の飲み屋街ですが、残念ながら少なくない場所が空き地になっています。

今回訪ねた『つやこ』は、なんと店の3面が駐車場・公営駐輪場となっています。公道に面していないため、駐輪場を歩く必要があるのです。

かつて横丁があったことを思わせる場所に建つ平屋の店。暖簾越しにお客さんたちの笑い声が漏れ聞こえてきます。

内観

夜の街を歩いて偶然みつけるような場所では全くありません。それでも、店内はなんと満員状態です。

小上がりでは、ジャケットを脱いでワイシャツ姿になったお父さんたちがボトル焼酎を囲んでメートルを上げています。3名以上だと予約ができ、コース料理(餃子・イカ・やきとり)がオススメされる様子。

厨房を囲むカウンターでは女性二人組がやきとりに夢中です。黒帯呑兵衛のオーラ漂う一人飲みの常連さんは、清酒「夢心」のお銚子を傾けていてカッコいい。この雰囲気だけでもう嬉しくなります。

若い大学生風の店員さんがピシッとした姿勢で元気に「いらっしゃいませ!」と迎えてくれました。厨房で黙々と調理しているのが大将で、手伝う店員さんはよく教え込まれています。皆さんハキハキとしていて気持ちいいです。

カウンターの前には炭火焼の焼台があり、次々とモツの串が焼かれています。店内に漂う炭の香りと熱がカウンターに座る緊張を少しずつほぐしてくれるのです。

品書き

お酒

  • 樽生ビール サッポロ生ビール黒ラベル中:550円、大:1,100円
  • ビール大瓶(キリンラガー・サッポロラガービール):660円
  • 日本酒2合 夢心酒造(福島県喜多方市)夢心:660円

料理

  • 餃子:440円
  • イカ焼:550円
  • やきとり(レバー・ダルム・マーゲン):66円
  • やきとり(ヘルツ・ツンゲ):88円
  • 焼そば:440円
  • 野菜いため:440円

やきとりといっても豚モツ焼きで、久留米やきとりのように医学用語(ドイツ語)で名付けられているのが興味深いです。

餃子、イカ焼、漬物の3点すべてが個性的

キリンラガービール大瓶(650円)

お隣の常連さんに軽く会釈して席につき、注文を取りに来てくれたお兄さんにキリン1本と注文。こういう酒場はやっぱり大瓶が似合います。それでは乾杯!

突き出しの漬物

よくある漬物と思ったら大間違い!白菜や大根の漬物はかなりしっかり発酵しています。濃厚なコクと旨味は、普段口にする既製品にはない本当の漬物の美味しさを思い出させてくれます。

餃子(440円)

お皿に入り切らず無造作に積まれた餃子が、ここの看板料理です。大きめの餃子が10個。ハネも含めてワサッとなっていますが、一口食べれば人気のワケがわかります。

ずっしりと重たい餃子。皮は厚めで、しっかりと餡を包んでいます。一口では食べ切れず、途中で噛むとそのジューシーさに驚かされます。これらを受け止め、より特別なものにするのがニンニクを効かせた特製のピリ辛味噌タレです。こんなタレ、ほかで食べたことがありません。

肉多めでキャベツや白菜をあわせた餡がみっちりと詰まっいます。

サッポロ生ビール黒ラベル(550円)

美味しくてボリューム満点の餃子で、キリンラガーはあっという間になくなってしまいました。続きは生ビールで。油や炭火を使う厨房の中でピカピカに輝くディスペンサー(ビールサーバー)をみたら、頼まずにはいられません。

昔ながらのサッポロ型500mlジョッキが氷点下ギリギリまで冷やされていて、そこに状態抜群の黒ラベルがグーッと注がれていきます。完璧の一杯です。

イカ焼(550円)

餃子だけではありません。ここのイカ焼きも他の酒場では食べられない一品。酒、味噌、醤油、ショウガなどで味付けしているプリプリのイカは、きっと誰もが好きな味です。

焼き具合が絶妙で、やわらかい。噛むごとにプチプチと弾け旨味たっぷりの汁が滲み出てきます。ビールはもちろん、喜多方の日本酒「夢心」のお燗とあわせても間違いなく美味しいでしょう。

「餃子、やきとり、イカ焼」で長年続いてきた『つやこ』。60年以上、福島の人を虜にしてきた味をぜひ味わってみてください。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

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