いわき『のんべえ』港町の酒場で、魚介料理と地酒又兵衛を愉しむ

いわき『のんべえ』港町の酒場で、魚介料理と地酒又兵衛を愉しむ

2020年8月25日

福島・浜通り最大の街、いわき市。太平洋に面したこの街には6箇所の漁港があり、水産業が盛んな地でもあります。

そんないわきで美味しい魚料理でもてなしてくれる大衆酒場といえば、1980年創業の「のんべえ」です。

看板料理のいわしをはじめ、いわきの魚河岸にはいる魚介類を刺身、焼き物などでささっとだしてくれます。それに合わせるお酒は、いわきの地酒「又兵衛」。観光や出張で訪れた人は、きっと「のんべえ」でいわきの夜が好きになるはずです。

かつての炭鉱町。産業の転換に合わせてエネルギー産業や工業で栄えてきたいわき。飲み屋街は、どこか”男くささ”を感じます。もちろん、いい意味で。

もし東京にこんな雰囲気の路地が残っていたら、きっと話題になるはず。いわきには、酒場好きの心の掴む飲み屋街の風情が今も広がっています。

のんべえは、いかにもな酒場の店構え。一歩入ったところにある店ながら、いわしと地酒が書かれた赤提灯に吸い寄せられるような感覚になります。

いらっしゃい!元気なホール担当のお姉さんと、白衣をぴしっと着こなした板前さんたちが迎えてくれます。

L字カウンターを中心にしたつくりで、厨房を見渡せるため広く感じます。お客さんは地元の方がほとんど。年齢層は幅広く、常連風のベテラン一人客や、夫婦で飲みに来ている方、30代で仕事帰りに同僚と飲みに来ている人など様々。なかなかの人気店で、カウンターの最後の一席に滑り込むことになりました。

お隣の方にご挨拶。仕事を聞かれたので、お互い簡単に自己紹介。聞けば、エネルギー産業で働かれている方。力仕事もあるそうで、仕事終わりの酒場通いがいやしの時間と話してくれました。

まずは生ビール。状態抜群の樽生キリンラガー(550円)をもらって、それでは乾杯。

お通しから海鮮というお店が好き。この日はまぐろタタキのとろろ添え。

さて、ビールは生ビールのほかにビンでヱビスビール(500円)も用意あり。定番酒は地元の又兵衛(いわき/四家酒造店)で1合300円と良心価格です。

海鮮をメインにした酒場のホワイトボードを眺めるこの時間がたまらなく好き。今日はほうぼう、たこ、ヤナギガレイ、そしていわしなど。夏季には東北太平洋側の名物「どんこ刺し(エゾアイナメ)」なども加わるそうです。

鮮度抜群のいわしをつかった料理は、長年価格据え置きの懐に優しいお値段です。刺身、なめろう、梅たたき。珍しいのは椀物のすり流しです。

なめろう(450円)。注文の声を聞くと同時に、手際よくいわしをおろし、包丁を小気味よいリズムでタンタンと叩いていき、みるみるうちに丸くまとめて出来上がり。

大きないわしなので、なめろうもたっぷり。味噌とネギの風味にいわしの脂のコクがまざり、プリプリとした食感も相まって大変美味。

これはたまらないと、又兵衛のぬる燗を。地元の魚に地元のお酒があわないはずがありません。水でつながったふたつの味を交互に味わい、じっくり酔いを深めていく楽しさがあります。

ヤナギガレイ焼き(850円)。焼き方がよく、上品な甘さとコクを感じる汁が、身にたぷたぷに詰まっています。お酒は同じお酒で今度はひや(常温)でひとつ。

常連さんが話してくれる街の話に、いわきの風土に魅力を感じ、さらにお酒が進みます。※お酒は適量で。

飲み終わりにビールを飲むと、リセット気分。ヱビスは今年130年目なんですよ、こちらも酒話をしたりして。

お店の方の近すぎず遠すぎず、常連さんから一見さんまで程よい距離感で変わらずに対応してくれるのも嬉しいです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

のんべえ
0246-22-2328
福島県いわき市平田町73
17:00~23:00(日祝定休)
予算2,800円