下高井戸で約半世紀に渡って親しまれてきた焼鳥屋『鳥たけ』。人気の理由は、大串の焼鳥が安くて美味しいこと。焼鳥だけでなく刺身や揚げ物も充実しており、何を食べてもハズレなし。若者グループからベテランの一人飲みまで、様々な客層で連日満席になるほどの繁盛店です。
目次
高架化進む下高井戸に、今も残る昭和を楽しむ
新宿から京王線で10分。世田谷区下高井戸は都心から近いにも関わらず、昭和の東京の街並みが色濃く残るエリアです。
駅前に広がる商店街は個人商店を中心に、生鮮食料品を扱う店や惣菜店、飲食店が軒を連ねています。お隣の「明大前」同様、下高井戸も学生街の一面を持ちますが、それ以上に働き盛りの人たちが大勢行き交っており、大変活気に満ちています。
駅前には1950年代に建てられたレトロな下高井戸駅前市場が鎮座し、これがアイコン的な存在となっています。
レトロな街は全国にあれど、これだけ活気がある街はいまは貴重な存在です。飲食店や商店から「いらっしゃい!」の声が聞こえてきます。そんな懐かしい景色を保ってきた下高井戸ですが、街の中心を走る京王線がついに高架化することになりました。すでに一部で工事が始まっており、今後街並みは大きく変わりそうです。
道幅が狭く、それがより人々の熱気を高めているように感じる下高井戸の駅前。メインの通りからひとつ曲がった先に、ひときわ賑やかな赤ちょうちんの店を見つけたら、そこが『鳥たけ』です。
店はレトロな木造2階建て。袖看板と二階にぶら下がる提灯がいい味をだしています。古くても毎日大勢の人が使っていると、建物そのものに熱量がこもっているように見えてくるから不思議です。
店頭で販売している焼鳥弁当や唐揚げなども人気の様子。近隣は惣菜店、弁当店、そしてスーパーと競合が多いにも関わらず、集客力は馬群です。
名物は大串の焼鳥で、店名は『鳥たけ』。こう聞くと東京の酒場ファンならピンと来るかもしれません。そう、ここは渋谷で昭和38年から続く人気の焼鳥店『鳥竹』からの暖簾分けの店なのです。初期の頃の暖簾分けで、すでに下高井戸の『鳥たけ』も、街を代表する焼鳥の名店として今に至っています。
店に入ると、すでに一階は満席です。トーク上手な大将を中心に手際よく焼鳥を焼き続ける厨房と、そこに向いたカウンター席。お客さんは皆さん地元の常連さん風です。テーブル席も、通い慣れた夫婦や会社の同僚といった雰囲気のお客さんで埋まっています。
二階もまたいい雰囲気です。飴色に染まった空間に、ざっと並んだ重たいテーブル。商店街を見下ろす窓はいまだに窓枠が木製で、ガラスも昭和の独特な柄入りの曇ガラスが使われています。開けると”ガラガラ”と大きな音をたてるのが懐かしい。
品書き
お酒
ビールは、樽生がサッポロ生ビール黒ラベル:小440円・中600円・大800円。瓶ビールはサッポロ黒ラベル(大瓶):620円。
サワー類は、レモンサワーや生グレープフルーツサワー、玉露入り緑茶割りなど450円均一。日本酒(白鶴)1合:400円、その他、300mlの冷やした瓶で、白鶴純米や菊水の辛口など:各790円。
料理
串焼きは、やきとり・とり肝・すな肝・なんこつ・ささみ・皮・首肉・手羽・はつ・ボンジリ:各230円。渋谷の鳥竹同様、大きくて人気のつくね:240円、つみれ(ピーマンの肉詰め):270円。串焼きに豚肉がないのも特徴の一つ。1本から注文可能です。
揚げ物、一品料理も人気で、巨大なアジフライ:290円や、山盛りに刺身がのった海鮮サラダ:800円、盛りの良い特製ポテトサラダ:420円は名物料理。これらに加えて、短冊のオススメと日替わりの刺身が並びます。
短冊・黒板メニュー
マグロ刺し、カツオ刺し、イカ刺し、イワシ刺し、シマアジ刺しなどの刺身が黒板メニューで加わるほか、短冊でホタテ入りクリームコロッケ:380円やマグロフライ:420円などが掲げられています。
すべて期待以上!量が多いので頼み過ぎにご用心。
サッポロ生ビール黒ラベル 中(600円)
ビールサーバーがピカピカなので提供品質にも期待大。昔ながらのたっぷり入るスタンダードなサッポロジョッキに完璧な一杯が注がれてきました。居酒屋の一口目の生ビールが美味しいと、注文もつい増えちゃいますね。では乾杯!
まぐろ刺身(600円ほど)
焼鳥屋ですが、刺身を注文している人がかなり多いです。こちらも合わせて頼んだところ、このクオリティ。盛り付けも丁寧ですし、これで喜ばないはずがありません。ねっとりとしたマグロに、日本酒が欲しくなります。
やきとり(230円/本)と日本酒(400円)
白鶴のお燗と一緒に運ばれてきました。名物のやきとりです。
うなぎの蒲焼などに使う一回り大きなボッカ串に、巨大なもも肉をネギ、ししとうと一緒に串打ちしたものです。串1つで一般的な焼鳥の2本分はあります。大ぶりで肉汁が滴るほどの鶏肉が、長年継ぎ足してきたタレのコクの強い甘さと相性ぴったり。
しいたけ(280円)
タレの美味しさを楽しむならば、しいたけ串はいかがでしょう。肉厚のしいたけから滲み出る旨味成分と相まって、かなり日本酒を進ませる一品です。
首肉(230円)
別名せせり。一羽からとれる量は70g前後と聞いたことがありますが、これもまた、ボッカ串にたっぷりと打たれています。独特な弾力と柔らかい部分のコントラストが楽しく、脂がのっているため他の串にもましてジューシーです。
玉露入り緑茶割り(450円)
老舗の酒場に似合う、サッポロ飲料(現ポッカサッポロ)が割材専用に開発した業務用玉露緑茶をつかった、緑色の発色がよい酒場ならではのお茶ハイ。旨味が強く、甲類の甘さと混ざるとまろやかでクセになる飲み心地になります。
ポテトサラダ(420円)
箸休めに悩んだら、ポテトサラダはいかがでしょう。玉子入り、ハムたっぷり。比較的かための仕上がりです。これまたボリュームがあり、一人飲みだと結構満腹になってしまいそう。でも、美味しいからつい頼みたくなります。
酒場の定番、王道の美味しさ
「酒場の定番料理をアレンジすることで価値を高める」最近はそういう店が人気ですが、王道の美味しさを安定して出す老舗の酒場というのはやはりとても良いものです。テキパキした店員さん、楽しく過ごす飲み慣れたお客さんたち。店の雰囲気もまさに正統派の焼鳥酒場です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 鳥たけ |
住所 | 東京都世田谷区松原3-29-22 |
営業時間 | 17:00~22:30(日祝定休) |
開業年 | 約半世紀前 |