三軒茶屋『新華楼』世田谷線とともに50年。昭和の中華へタイムスリップ

三軒茶屋『新華楼』世田谷線とともに50年。昭和の中華へタイムスリップ

2022年5月20日

踏切をBGMに、餃子やヤキソバ、焼飯をつまみにキリンラガーを飲む。そんな平和なひとときが三軒茶屋にあります。創業半世紀になる大衆中華『新華楼』です。進化し続ける渋谷の輝きとともに、三茶のレトロな路地の魅力も増しています。

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軌道線の横にある家族で営むレトロ中華

三軒茶屋と下高井戸を結ぶ小さな電車・東急世田谷線。三軒茶屋駅を発車すると、進行方向左手にレトロな中華料理店がみえてきます。

「お昼は混んでいるけど、夜は穏やかに飲めそうだなぁ」と眺めていました。

店の名は『新華楼』。1973年(昭和48年)に開業した家族経営の日本式中華料理店です。いわゆる街中華。創業時からの佇まいをあまり手を加えずに残しているそうです。

世田谷区三軒茶屋は「住みたい街」や「ドラマに出てくる街」として知名度がありますが、実は細い路地が細かく入り組んでいて、昭和の街並みを色濃く残したエリアでもあります。

車窓から店が見えたように、店すれすれの場所を、2両編成の小さな電車が単線の線路をゴトゴトと走っています。東急世田谷線は、厳密には「軌道線」という路面電車の括りになるそうです。広島、長崎、高知…、そして三軒茶屋。路面電車が走る街は風情がありますね。

外観

古くても隅々まで手入れが行き届いていることがよくわかります。昔ながらの食品見本に誘われ、暖簾を向こう側へ。

カウンターへどうぞ、と女将さん。三軒茶屋に暮らす人の間では有名なお店と聞きますが、店はそれほど大きくありません。調理場に向いたカウンター席と、白い化粧板を貼ったテーブルにパイプ椅子をセットした2~4席が3卓という配置。

夕食を食べている子供連れや、一人、新聞片手に日本酒を楽しむご隠居さん、ビールと餃子で晩酌を楽しむ会社員などさまざま。

品書き

お酒

ビールは瓶ビールのみでキリンラガー大瓶:620円、紹興酒:450円、焼酎お湯割り:400円、お酒:400円。

おつまみ・一品料理

餃子:470円、肉豆腐:620円、肉野菜炒め:620円、鳥のからあげ:1,150円、エピうま煮:1,250円、酢豚:1,250円、ワンタン:570円など。

麺・ご飯類

ソースやきそば:700円、あんかけやきそば:800円、カタやきそば:800円、やきめし(チャーハン):700円、カニやきめし:900円

未来の渋谷から、三茶でタイムスリップ

店内は液晶テレビ以外、現在の時(とき)を感じさせるものがほとんどありません。ガタゴトと音を立て硬い振動とともに通過する世田谷線もまた、昭和感が強い。

さっきまで、未来的な渋谷ストリームを歩いていたのが嘘のようです。この緩急がなんと心地よいことか。

キリンラガー大瓶(650円)

ピカピカな空間に疲れたあとは、昔ながらの大衆店でラガービールを飲んで癒やされたい!それでは乾杯。

五目あんかけやきそば(900円)

餃子、ラーメン、焼飯など、この店を紹介する記者やメディアのスタイルで『新華楼』のオススメは異なります。酒場案内人の筆者としては、具だくさんの五目あんかけやきそばをご紹介したいと思います。

はじめに麺を焼き、それから餡をつくりトッピングを加えていく。手間のかかる料理ですが丁寧な調理が嬉しい。このボリュームと具の多さで900円はとても良心的です。

餡とは別に、厚切りのチャーシュー、大きなエビ、かまぼこ、なると、伊達巻がのっています。まるで、日本蕎麦の「おかめ」みたいですね。

このトッピングを、麺に対してやや多めの餡にたっぷりとくぐらせて頬張る。そして、その余韻にグッとくる美味しさのキリンラガーを追いかけます。

中でもしっとりとした舌触りのチャーシューはビールと相性抜群です。

ゴワゴワとして、一部がパリパリになった麺が、濃厚でコクのある餡に絡み、炭水化物ながらお酒を進ませるおつまみになっています。

だしが効いており意外と繊細な味のスープには、紹興酒をあわせるのもよさそうです。

日中は行列ができることもあるお店なので、腰を据えて飲むわけにはいきませんが、夜は平和な時間の中でしみじみと街中華飲みが楽しめます。女将さんの笑顔も素敵です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名新華楼
住所東京都世田谷区太子堂4-4-10
営業時間11:00~14:30(L.O14:00) 18:00~20:30(L.O20:00)(水日定休)
開業年1973年