直営化で再開!『晩杯屋鶯谷店』晩杯屋が一周して、面白くなってきた

直営化で再開!『晩杯屋鶯谷店』晩杯屋が一周して、面白くなってきた

2022年5月21日

休業していた『立呑み晩杯屋 鶯谷店』が2022年5月20日、営業を再開しました。フランチャイズ店舗でしたが、再開に合わせて直営化さました。再開初日を取材しましたので、その様子をご覧ください。運営が「骨太」になった、最新の晩杯屋情報もあわせてお届けします。

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立呑み晩杯屋、直営化で再オープン!

東京都台東区、根岸。JR山手線・鶯谷駅近くの言問通り周辺は個性的な街です。昔から、安く飲める立ち飲み、角打ち、大衆酒場が立ち並び、15時頃から飲兵衛さんたちが闊歩していました。裏路地に目を向けると、そこには東京を代表する名酒場があるなど、この街は飲み歩き好きにはたまらないエリアです。

そんな鶯谷・根岸に、2016年9月16日、晩杯屋が参入。新たなはしご酒場所として注目を浴びました。その後、昨今の酒類提供規制など社会環境の中で休業を余儀なくされ、そのまま再開せずに店の灯りは消えたままになっていました。フランチャイズ経営の店舗でしたが、そうした理由もあって再開できずにいたそうです。

そのような状況下でしたが、2022年5月20日、店舗運営を直営化し鶯谷店が再オープンしました。店内の一部修繕、POS導入などが行われています。

営業は土日祝日は13時から、平日は15時からと昼飲み対応。鶯谷の昼飲み選択肢が再び増えました。

オープン初日には、運営元のアクティブソース社長の池本さんや同社の本部チームの皆さんも来店していましたので、近年の晩杯屋の変化についてもインタビューしてきました。ですが、まずは鶯谷店の店舗紹介から。

品書き

お酒

品書きは各店舗で基本的に共通です。樽生ビールは以前の一番搾りから切り替わり、現在はキリンラガー:440円。その理由は、酒場好きの池本社長が、浜松町竹橋通り沿いの老舗もつ焼き店で飲むキリンラガービールが好きで、「酒場でラガー、いいよね」となってのことだそう。

酎ハイ類の人気は宝酒造のゴールデンチュウハイ:290円、創業時からのロングセラー 緑茶割り:290円、新商品のポッカサッポロ コーン茶割り:290円など。ベースの甲類焼酎は宝焼酎です。

割材系は、博水社のハイッピーセットやハイサワーセット:370円、コダマ飲料のバイスセット:370円など。日本酒はオエノングループの福徳長酒類がつくる富久娘 佳撰 菊源氏 1合:270円。キリン富士御殿場蒸留所の原酒に英国製造のグレーンウイスキーをあわせた新商品 陸ハイボール:330円が期待の新商品です。

料理

昔からの定番料理、煮込み:130円を筆頭に、100円台の料理が並びます。近年、低価格を掲げるチェーン店が増えましたが、一周して晩杯屋のメニューをみると、改めてその安さに驚かされます。

マグロ刺し:250円、いわし刺し:150円、黒ミル貝刺し:180円など、豊洲仕入れの魚介が店のウリです。

筆者のオススメは納豆オムレツ:180円。昔からのロングセラーは皿からはみ出すほど巨大なちくわ磯辺揚げ:130円、かき揚げの野菜天:150円、創業者の金子さんのお気に入りだったチーズカリカリ:180円など。

酒屋さんとタッグを組んで安さ・面白さを追求してきた

2008年、武蔵小山で4坪の立ち飲みとして創業した晩杯屋。開業を手伝ってくれた酒屋さんとの強い協力関係が、お酒の安さの理由です。晩杯屋を担当する営業さんは14年間変わらずアサヌマの寺内さん。(豆知識:息子さんは桃月庵白浪さんという二ツ目の落語家さん)

ゴールデンチュウハイ(290円)

まずは、宝酒造のゴールデンチュウハイで乾杯!昔ながらの500mlジョッキが嬉しい。

甲類最大手の宝酒造は、甲類を様々な樽で熟成しており、これら焼酎や香料をブレンドすることで、極上<宝焼酎>や、「純」、「レジェンド」などを生み出しています。そんな宝のブレンド技術が作り出す、ほんのり甘い香りとコクがある宝焼酎「ゴールデン」。

ゴールデンが発売したての2015年頃、赤羽の老舗立ち飲み「いこい」でゴールデンチュウハイを出したところ、一躍人気の飲み物になりました。そんな「いこい」を運営する会社は、業務用酒類卸を本業とする東京北区の酒販店「アサヌマ」です。そして、同社が晩杯屋へお酒を卸していることから、晩杯屋でもゴールデンを取り扱うようになり、こちらでも大人気になったという流れがあります。

飲み心地がよいお酒で、筆者も大好物です。

陸ハイ(330円)

晩杯屋のお酒の新商品をご紹介しましょう。こちらは、2020年に発売されたキリンの新・国産ウイスキー「」。2022年4月にリニューアルされましたが、晩杯屋にも登場。正直、一杯330円は安すぎると感じる、華やかで爽やか、香味豊かなウイスキーハイボールです。

業務用としてはかなり珍しい薄口の専用グラスも登場。キリンの物流センターから送られてくるグラスの配送ケースにもグラス底部にクッション材が敷かれてくるという(通常、各ビールメーカー共にダンボールの中にむき出しで入っています)、かなり繊細なもの。澄んだ口当たりが楽しめます。

富久娘 上撰 菊源氏 生貯蔵酒(1,450円)

ご存知でしたか。晩杯屋に4合瓶の日本酒があることを。

新商品ではなく、昔から飲まれてきた富久娘シリーズなのですが、ぜひご紹介したいと思いました。福徳長酒類の韮崎工場で製造する、南アルプスの伏流水でつくったお酒です。1,500円未満ながら、生貯蔵酒なのが嬉しいですね。

毎朝、豊洲仕入れ。いまも、社長が買い付け同行する

本マグロ刺し(250円)

晩杯屋の特徴を一言で表すならば「魚にこだわる立ち飲み」です。創業者で前社長の金子さんは、築地の魚河岸に直接仕入れに行き、手頃な価格で売れる魚を仕入れてきては、100円~200円ほどの超低価格で店のメニューに並べてきました。昔は、サンマ塩焼きが2尾で200円なんてこともありました。

飲食大手で東証一部上場企業のトリドールHD傘下になった晩杯屋は、運営体制も大きく変わりました。運営には大手酒類企業や他の上場飲食企業からの転職組が増えました。現社長の池本さんも、トリドール出身者です。

そうなると、かつての個人商店流ともいえる機動力のある仕入れは行わなくなるのかなと思いますよね。それが、なんと今でも社長の池本さん自身が、仕入れ担当者とともに豊洲へ買い付けにいっているというのです。

「信頼関係が重視される業界。市場で卸の皆さんと直接顔をあわせて仕入れることが大切です。社長決済で即決が求められることもあります。晩杯屋らしく、ご期待に添える魚介類をお客さまにお届けしたいです」と池本さん。

箱うに(1,700円)

この箱うにがまさにそれ。晩杯屋はたまに驚かせてくれます。1,700円と、晩杯屋の200円前後の料理と比べれば超高級品です。

食べてみれば、納得の美味しさ。本格的な寿司店で提供されるような上モノです。鶯谷店再開記念で導入された特別なウニですが、各店でこうした高級食材や珍味が突然でてくるのが晩杯屋の面白さです。

ふぐ白子

ふぐの白子焼きも登場。さすがにトラフグではなくマフグだそうですが、まさか晩杯屋にふぐ白子がでるとは。

シシャモ

魚種は2019年以前と比べ、かなり増えたように思います。

その理由について、アクティブソースの鈴木さんは、

「2020年から営業休止や酒類提供禁止などにより、非常に厳しい経営となりました。そこで固定費削減のため、セントラルキッチンを廃止したんです。店舗が営業できない期間中、全店の従業員を対象に調理研修を実施し、店でも魚を捌けるようになりました。店で捌けるから、少数の魚を一部店舗だけに卸すことができ、結果として魚種が増えたり、料理のバリエーションが増えるなど、強い店舗に育ったと思います。小さなマグロやカツオくらいでも捌けます!」

と話します。

最近の晩杯屋は店頭が鮮魚店のように丸魚を売っていますが、セントラルキッチン廃止や店内調理への切り替えが関係していたのですね。

イカリング(180円)

パリパリとしんなりのコントラストが心地良い、醤油味のイカリングフライ。

レバフライ(130円)

ロングセラー「レバフライ」。

“赤羽の「いこい」を運営する酒販店「アサヌマ」が晩杯屋にお酒を卸している”、と説明しましたが、晩杯屋の前社長も「いこい」で修行後に独立開業し晩杯屋を始めた人。チェーン展開していても、「いこい」の系譜なのです。

赤羽の硬派な「いこい」をより多くの人が利用できるようにしようというのが晩杯屋のコンセプトのひとつでした。

長い自粛期間の間、店舗調理への転換、運営体制の整備・強化が行われてきた晩杯屋。2022年度内に数店舗の新規出店を計画中とのこと。良いところは残しながら、今後、いかに時代にあわせた進化をしていけるか、楽しみです。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ Special Thanks/アクティブソースの皆さん、アサヌマ及び酒類・飲料メーカーの皆さん)

店名立呑み晩杯屋 鶯谷店
住所東京都台東区根岸3-5-7
営業時間15:00~23:00(土日祝は13:00~・基本無休)
開業年2016年FC店として開店。2022年直営化して再開