浅草『米久本店』130余年続く牛鍋店、酒場好きにオススメの名店

浅草『米久本店』130余年続く牛鍋店、酒場好きにオススメの名店

2020年12月8日

観光バスのコースになるような東京の有名店と聞くと、東京在住者は意外と足を運ばないものです。

ですが、浅草の米久本店は別です。東京に旅行や出張で訪れる方にはもちろん、東京在住で観光名所に興味がない方も、ぜひ「食べに」ではなく”飲み”に行ってほしい一軒です。年中無休、お昼から夜まで休みなく営業しているため、浅草昼酒の定番として私も通っています。

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一世紀を超える老舗を訪ねる

創業は1886年(明治19年)。文明開化、牛肉を食す文化が欧米から伝わってきた頃、ハイカラな浅草では、日本人の味覚にあって、保存・加工技術が未熟な当時でも美味しく食べられる調理法として「牛鍋」(すき焼き)が流行りました。

浅草には100年以上続く牛鍋店がいくつかありますが、「米久本店」は手頃な価格となんといっても、飲み屋使いできるムードがおすすめの理由です。店先には、東京下町の老舗で長く愛されている灘の銘酒「櫻正宗」の菰樽(こもだる)が飾られています。

大黒様と大太鼓が入り口のシンボル。いまは珍しくなった下足番に靴を預け店に上がると、来店人数の分だけ太鼓が鳴らされます。

仲居さんの案内へ店の奥へ。中庭を眺める部屋や入り込みの大部屋などいくつかにわかれています。

牛鍋店なので、さっそく玉子などがセットされますが、まずはビールでしょう。浅草という場所柄、アサヒビールがよく似合います。それでは乾杯。

小鉢でついてくる牛肉の佃煮がビールとの相性抜群で、スーパードライ牛肉佃煮のために開発されたのではないかと思うほど。

メニューは牛鍋のみ

品書きはこれ1枚。選択肢は、牛鍋の(3,160円)かトク(3,780円)の2つから選ぶだけ。ザク※野菜(510円)や玉子(130円)などが追加可能。

アルコールは、アサヒスーパードライ大瓶(840円)、スーパードライ樽生中(840円)、櫻正宗(正一合510円)、櫻正宗生酒などの瓶(300ml900円)など。

左が「トク」で、右が「」。

価格差はわずか630円。トクにしてしまいがちですが、二人ならば二種類の食べ比べがおすすめ。トクはご覧の通り脂がかなりのっているため、満足感が早くやってきてしまいます。お酒を飲みながら…、ということであれば「上」を用意したいです。

3,150円でこのボリユームとサシ

トク(単品3,150円)※写真は二人前。サシの入り具合にうっとりしてしまいます。肉は近江牛です。

仲居さんが手際よく、牛脂を広げ、葱、豆腐、白滝、そしてお肉を広げるように並べ、割り下をそっと流し込んでいきます。セッティングはここまで。戻るタイミングでお酒をお燗でお願いしました。

燗酒の櫻正宗が老舗らしい

リターナブルのガラス瓶に詰められた櫻正宗は老舗の証。男酒といわれる灘のお酒としては辛さがおとなしく、それが気に入っています。

浅く敷いた割り下に半分浸かったくらいの一枚を、まずはそのまま一口。脂がふんわりと溶け広がり、やわらかな歯ごたえ。舌を包む牛の旨味がじんわりと甘く、その余韻は意外にもあっさりとしています。

お肉の色がほんのり変わるくらいで、今度は溶かした玉子を潜らせ、ひとくち。割り下の味付けは、これぞ東京のもの。これでお燗酒をちびりと飲めば、ちょっとした百年前の浅草にちょっとした時間旅行気分。

櫻正宗の珍しい清酒上撰 櫻正宗 クールチェリー(本醸造・300ml 900円)。ちなみに櫻正宗は、全国にある●●正宗の初代であり、櫻正宗の成功が全国に正宗とつく日本酒が増えるきっかけとなりました。

そんなお酒のうんちくなど、普段飲みながらするのは好きではなく、もくもくと飲んではつまみ…を繰り返し、この状態になりました。ザクと玉子を追加し、いい具合に飴色に染まったところで、牛鍋の〆であり、おつまみになるアレンジをしたいと思います。

卵で綴ると、もう一度お酒が進む

牛鍋の旨味をぎゅっと閉じ込めた玉子とじ。これで再びお酒が飲み始められるものです。

瓶ビールに戻り、最後まで牛肉の旨味を楽しみます。

昼食時は混雑しますので、落ち着いた店内でゆっくりお酒を楽しむならば14時以降がよろしいかと思います。

高級そうなイメージの老舗の牛鍋ですが、意外と手頃な価格で楽しめます。文明開化の味を楽しみませんか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名米久本店
住所東京都台東区浅草2-17-10
営業時間営業時間
12:00~21:00(L.O.20:00)
日曜営業
定休日
水曜日
開業年1886年