東京のご当地料理ともいえる豚モツの串焼きと梅割りの組み合わせが、秋田県南部のまち・横手でも味わえます。横手で創業45年以上、二代目が暖簾を守る『かしらや』です。名物は1本60円のカシラ焼。また、もつ焼きを使ったタコスなどの珍しい料理もあり、どれも梅割りがよくあいます。
目次
かまくらのまち・横手を訪ねて
東北新幹線の北上駅から、奥羽山脈を越える山岳路線・JR北上線に乗り換え約70分。秋田県南部にあり、県下で2番目の人口を誇る横手市の横手駅にやってきました。
日本有数の豪雪地帯として知られ、駅前の飲食店街でも背丈ほどの積雪があります。冬季は雪に包まれる横手は「かまくら」を観光資源とするほか、酒造り、漬物づくりなどで雪を活用した食文化を育んできました。
雪の壁の中を歩きながら酒場を目指すというのは、雪が少ない東京で生まれ育った筆者としては非日常の体験です。足元に気をつけながら、いつも以上に慎重に「はしご」しなければなりません。ですが、この緊張感が酒場に入った瞬間溶けていく感覚は冬の北国ならではの酒場の感じ方で、楽しみの一つでもあります。
ルーツは東京にあり。横手の老舗『かしらや』
外観
かしらやは、横手市内で一度移転しており、店構えは比較的新しく感じます。
街の人気店ゆえ、店内で飲食をする人以上に持ち帰りの利用者が多く、帰宅途中に車で寄り道し、数十本という単位の串を購入するお客さんが後を絶たちません。
夫婦二人三脚で、先代からの味を守る
ブーツについた雪を落としたら店内へ。氷点下からぐっと温かい空間へ入った瞬間、緊張がふっととけていき、同時に炭火の香りに満ちていることに気が付きました。
つぎつぎ持ち帰り注文の予約が入る中、休むことなく串を焼き続けているのが大将です。店は女将さんと二人で切り盛りされており、ご主人は常に炭火とにらめっこ。接客は女将さんの担当です。
『かしらや』は約半世紀前に初代が函館のもつ焼き店『かしらや』で修行したことがはじまりです。さらにルーツを遡れば、東京・上野のもつ焼き店にたどり着くそうです。無果汁の梅シロップを甲類焼酎に入れるという東京・下町のもつ焼き店のスタイルが横手にも継承されているということです。
内観:ちょうどいいコの字
広い空間にゆったりと配されたコの字のカウンターが特長的です。横手でコの字は珍しく、地元の人達にはこのライブ感ある店の雰囲気そのものも楽しみに一つになっているそうです。
かまくらを描いた絵画やスキー場のポスターの数々。旅情たっぷりです。
品書き
お酒
大樽はキリン一番搾り:480円、大瓶はキリンラガー:600円。ハイボールはホワイトホース:450円。チューハイはレモンサワー・ウメサワー・ウーロンハイ:各350円。日本酒は秋田酒類(秋田市)の高清水:290円です。
名物ドリンクは梅割り:300円です。珍しい梅ほっと:350円。
料理
料理は6種類の焼きとり(もつ焼き)を中心としたシンプルな品揃えです。
焼きとりは、カシラ:60円、タン:60円、ハツ:60円、ヒナネギ:60円、レバー:50円、ナンコツ:50円。※ヒナネギは鶏、ほかは豚モツです。
フードメニューとして、煮込み:250円、湯豆腐:250円、栃尾名物あぶらあげ:480円、焼きタコス:380円など。
背景や立地を考えると、奇跡のような店
乾杯はキリン一番搾り(480円)
駅からやや離れている『かしらや』ですが、店の雰囲気だけでも「来てよかった」と大満足。この空間で飲めることが嬉しいです。それでは一杯目、キリン一番搾り生ビールで乾杯。
おしぼりはコースターも兼ねています。
突き出しの漬物はお店の自家製です。ほどよく発酵しておりクタクタでコク深い味です。これでビールだけでも、十分に楽しめます。
横手のお酒好きを虜にしてきた、名物のかしら焼きがこちら。外はカリッとしていて中はジューシー。炭火の焼台を巧みに操り、火力が高いところで仕上げている様子。
創業時から継ぎ足し続けてきたタレはとろみがあり、やや甘めで旨味たっぷりです。東京の一部のもつ焼き店の系列同様に串は5本単位となっています。
これでビールが進まないはずがありません。5本単位もなんのその、ペロリと完食すること間違いありません。
梅割り(300円)
Syupoで取材してきた中では本州最北に位置する梅割りです。東京・城東エリアのもつ焼き店などで見かける甲類焼酎のシロップ割りと同じもの。梅酒や梅果汁を搾ったものではありません。この独特な甘みはまさに東京のそれと同じ。甲類焼酎のストレートに近く、度数が高いため飲み過ぎにご用心。なお、梅サワーという飲み物もありますが、こちらは梅割りのシロップとは別物です。
やきタコス(380円)
硬派なもつ焼き店ですが、タコスがあります。もつ焼きをタレで焼いたものを、しっかり炙ったタコス生地で包んだものです。野菜が山盛りな和風サラダもそうなのですが、若い世代向けの料理がおもしろいです。女将さんのアイデアでしょうか。
高清水(290円)
タコスと高清水。飲み飽きない高清水は、どんな料理ともよくあいます。
飲み慣れたベテランさんに混ざって若いグループも飲みに来る老若男女に人気の酒場です。賑やかすぎず、親切な女将さんの人柄もあってとても落ち着きます。
横手の名店『かしらや』へ、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 炭火焼き専門店 かしらや |
住所 | 秋田県横手市平城町5-24 |
営業時間 | 17:30~21:30(日定休) |
開業年 | 1976年頃 |