秋田『なべ勝』50年の酒場。日本海の魚とブンブク煮豆腐。酒は太平山

秋田『なべ勝』50年の酒場。日本海の魚とブンブク煮豆腐。酒は太平山

2022年4月18日

秋田駅前で半世紀続く、魚介系が豊富な居酒屋『なべ勝』をご紹介します。近隣の会社員や居酒屋好きが集う地域密着の店ですが、店頭に並ぶ料理は地のものが中心で、出張・旅行で訪れた人もきっと楽しめる内容です。腕自慢の大将の魚料理に地酒が進むこと間違いなし!

スポンサーリンク

賑やかすぎず、静かすぎず。食いしん坊が集うカウンター

秋田を訪れたら、やはり食べたいのは個性豊かな郷土料理や地元食材の数々です。きりたんぽ、ハタハタ鍋、比内地鶏料理など有名な料理は一通り食べておきたいところ。その上で、次はもう少し落ち着きのある”地元の酒の肴”が欲しくなるのではないでしょうか。

今回ご紹介する居酒屋は、秋田に何度か訪れたことがある出張・旅行者、秋田市近隣が生活圏の人にオススメしたい一軒です。

JR秋田駅から徒歩7分ほど。料理自慢の大将を中心にご家族で約50年営んできた居酒屋『なべ勝』です。店頭に電照看板が灯る以外はあまり目立つ品書きなどもなく、知らなければなかなか入りにくい店構えと言えるでしょう。一見すると小料理屋のような店構えですが、実は奥に座敷もある50席ほどの大箱です。

店内は大きく立派な厨房と、そこに向いた開放的なカウンター席が並んでいます。取材時はまだ路面の積雪が凍結するような季節。そうした条件でも、カウンター席は会社帰りの人々や通い慣れた雰囲気の夫婦などで満席に近い状況です。さらに店の奥では少人数ながら宴会も行われている様子。聞こえてくる言葉は秋田弁ばかりで、地元率100%なのは確認するまでもなさそうです。

品書き

お酒

ちょうど先客のお一人が帰られた直後でしたので、入れ替わるように1席だけ残っていた空席へ通してもらいました。目の前は大将と二代目、カウンター中央は特等席のようです。

さて、品書きをみていきましょう。

樽生ビールはアサヒスーパードライ:450円。瓶ビールはアサヒスーパードライ(中瓶):500円、キリンクラシックラガー(中瓶):500円、サントリー モルツ(中瓶):500円。サワー類は樽ハイベースでレモンサワーなど各400円。

皆さんが頼まれているお酒はもっぱら秋田の地酒のようで、小玉醸造(潟上)の太平山2合:500円、秋田醸造(秋田市内)のゆきの美人純米:700円、栗林酒造店(仙北郡美郷町)の春霞 純米吟醸:800円、天寿酒造(由利本荘)の鳥海山 純米大吟醸:900円など。

通い詰めている常連さんは秋田県醗酵(湯沢)がつくる本格焼酎 米蔵のボトル:1,500円を入れている方が多い様子。秋田県産米でつくった、秋田のため米焼酎です。

日替わりメニュー

旅先の居酒屋の黒板(ホワイトボード)メニューを見る瞬間が好きすぎて、このために飲み歩いていると言っても良いくらいです。さてさて、今日は…

刺身は、ソイ刺:500円、生まぐろ刺:550円、ヤリイカ刺:500円、たこ刺:500円、刺身6点盛:1,000円など。ダダミ(鱈の白子)しょうゆ煮:650円、ダダミ天ぷら:600円、ガサエビ唐揚げ:450円、セリとじ鍋:500円、タラ鍋:800円と秋田らしさたっぷり。

自家製のナットーコロッケ:500円や春巻:500円も日替わりに書かれているとワクワクしてきます。

ほかにも、ほっこく赤えび刺サザエ刺ツブ刺ワラサ刺じゅんさいクロモ(ギバサ)、横手の郷土料理・ミズかやきなど、季節ごとに土地の料理が500円前後で並びます。

定番料理

通年で鍋料理あり。塩魚汁鍋:800円、岩のりとじ鍋:500円、肉鍋:700円など。

馬刺し: 500円、沖漬け:450円、イカ鉄板焼:600円、じゅんさい酢:450円、カニミソ貝焼:450円、コマイ焼き:450円など。その他、焼魚でアカムツハタハタアジブリホッケなど。日替わりメニューもそうですが、総じて値段が一回り安い。どうりで人気なわけです。地元の皆さんはよくご存知ですね。

地のものをちょっとずつ。地酒とともに。

乾杯はキリンラガー中瓶(500円)

日本酒のお燗気分ですが、暖かな店に入ったらやっぱり飲みたくなるはビールです。キリンの熱処理ビール「クラシックラガー」をいただいて、それでは乾杯!

突き出し

突き出しは山芋とアカモクの和え物。滋味深い料理に、しみじみとお酒が進みそうです。日本酒のお燗をお願いします。

太平山(2合では500円)

2合で500円と大変良心価格。みなさんクイクイと楽しく飲んでいらっしゃいます。こちらもひとつ。1合単位でも燗を付けてくれるそうです。一人なら冷めないようにというお気持ちが嬉しいです。

ナマコ酢(500円)

男鹿は全国的に知られるナマコの名産地です。コリッコリとの食感と噛むほどに滲み出てくる海の深い旨味がたまりません。

ホッケ焼き

なにか焼魚をと大将に相談したところ、アカムツ(のどぐろ)と並んで、手頃なホッケも提案してくれました。ホッケの水揚げは北海道が圧倒的に多いですが、2位は秋田です。秋田の酒場の定番焼魚。

脂がのっていてジューシー。かなり肉厚です。ホクホクとした食感と、思っていた以上に上品な味わい。

お酒の銘柄をかえて、さらにじっくりと秋田の夜を味わいます。はぁ、いい気分。

ブンブク煮豆腐(450円)

魚料理を揃えるなべ勝ですが、ロングセラーの名物料理は「ブンブク煮豆腐」という豆腐の玉子綴じです。季節の食材を摘んだあとは馴染みの料理にいきたくなる気持ち、わかります。

細かくさいの目切りにしたかための絹ごし豆腐と、豆腐と同じくらいの大きさの揚げ玉。これを出汁と、酒、みりんなどで甘く煮て玉子で綴じ、ネギ、おろし生姜を載せたものです。「2人前くらいあります」とのことでしたが、美味しくて一人で完食してしまいした。その間に何本かお銚子をたおして…。

アットホームな雰囲気と、お手頃価格ながらしっかり地元の旬をおさえた料理を揃える『なべ勝』は、遠方からでもリピートしたくなる名店です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名なべ勝
住所秋田県秋田市中通4-14-24
営業時間17:30~23:00(日定休)
開業年1972年