大曲「鳥八」 鳥だけじゃない、正統派の大衆割烹。海幸・山幸・里の幸。

大曲「鳥八」 鳥だけじゃない、正統派の大衆割烹。海幸・山幸・里の幸。

全国花火競技大会でその名を知られる大曲。羽後街道の宿場町、そして雄物川の河港として古くから発展した街です。現在も、東京と秋田をつなぐ秋田新幹線の停車駅として存在感は大きく、沿線でもひときわ立派な飲み屋街が広がっています。

水田広がる横手盆地の街で、ブランド米「あきたこまち」が名産ですが、昔から海鮮の幸、山の幸ともに食べられてきた土地。酒場のおつまみも魅力的です。そんな土地の味を楽しむならば「鳥八」がおすすめです。

 

大曲は秋田から新幹線で1駅。岩手県県庁所在地の盛岡からも1時間ほどです。花火の日は、全国から街を埋め尽くすほど観客が訪れる場所だけあって、駅も商店街も花火一色です。

 

駅から少し歩ければ、地域交通を担う路線バス・高速バスのバスターミナルもあります。

 

鳥八へはそんな駅前から歩くこと数分。この街で45年続く老舗の暖簾です。

 

鳥八という名ですが、カウンターの冷蔵ケースにはずらりと秋田の海の幸が並びます。長い付き合いの鮮魚店が、安くて質のいいものを入れてくれるとのこと。老舗の飲み屋の仕入れ力は、最終的に私たち飲みにいく者が恩恵を受けます。

 

ビールは昔からずっとキリンビールとのこと。大びんのラガー(600円ほど)を一本もらって、では乾杯!

お通しはマス、ミズダコ、甘海老などを添えた酢の物です。もみじと柚の風味がアクセントで、このあとの料理にも期待が高まります。

 

わらびのおひたし。この界隈は山菜が大変充実していて、地元の人はお気に入りの山菜採りの場所もあるそうです。クキクキとした食感としっかりとした滑りがお酒を誘います。

 

クエや平目などの魚も魅力的ですが、立派なトリ貝や帆立貝も食べてみたい。まだケースの中でもぞもぞと動いているホタテをお刺身にしてもらいました。

 

これが鮮度抜群!ぷりぷりもちもち。磯の旨味が口いっぱいに広がります。

 

海の幸、山の幸と食べたら、次は里の幸。ご当地名物のじゅんさいをお願いしました。大変立派ながら、味が繊細で寒天状のぬるぬるがたまりません。酢などを使わず、出汁でさらっと味付けされています。

 

採れたてナスを肴にして、いただくお酒はぬる燗の高清水。普通酒や本醸造のぬる燗を、こんな老舗のカウンターでちびり、ちびりと舐めていくのがたまらなく好きです。

 

ご主人の人柄も素敵で、とても心地良い時間。旅先の暖簾に旅情を感じながら、続いて飲むお酒は高清水をつくる秋田酒類製造の「しみずの舞 吟醸」。芳醇ながら、やわらかな余韻が軽く残り、吟醸香は穏やかにたつお酒です。

 

魚介類にぴったりの吟醸酒に、あわせるおつまみはサザエのつぼ焼き。大都市の割烹や居酒屋の価格と比べ、よりリーズナブルで、あれもこれもと頼んでしまいます。

 

比内地鶏だけではない、秋田の地鶏たち。店名の「鳥八」の通り、せっかくならば焼鳥も食べてみてください。フレッシュな鶏を毎日串打ちし、炭火でじっくり焼き上げ手間を掛けた串が楽しめます。

鳥八の店名の由来は、実はご主人が若かれし頃に大曲から東京へ料理の修行に出て、下積みを積んだ渋谷の焼鳥屋の名前からだそう。焼鳥屋の多い渋谷はレベルが高いですが、そんな渋谷仕込みの焼き方、タレの味を今も大曲で守っていらっしゃいます。

素敵な人柄のご主人との会話もお酒の肴。大曲でおすすめの一軒です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

鳥八
0187-63-5061
秋田県大仙市大曲丸の内町2-10 E&Mビル 1F
予算3,000円