横手『食い道楽 本店』昭和51年創業、大箱の定番酒場でダダミ刺し

横手『食い道楽 本店』昭和51年創業、大箱の定番酒場でダダミ刺し

2022年3月20日

横手名物といえば、20年ほど前に町おこし企画で広まった「横手焼きそば」があります。ですが、この街は、焼鳥やいぶりがっこ、そして「阿櫻」や「まんさくの花」といった酒場を盛り上げる名産品や郷土料理も多数。羽後の味を駅前の酒場『食い道楽 本店』で楽しみませんか。

スポンサーリンク

日本有数の豪雪地帯、冬は「かまくら」の街

東京から新幹線とローカル線を乗り継いで4時間ほど。秋田県南部、横手盆地の中心に位置するJR横手駅にやってきました。横手は日本有数の豪雪地帯として知られ、2022年の2月には約2mの積雪を観測しています。駅周辺も大変な積雪で、鉄道は除雪をしながらなんとか運行を維持している状況でした。

一面の雪景色の中でも、ここには8万人の暮らしがあり、県庁所在地・秋田市に次ぐ秋田県下で2番目の人口を誇る主要都市。駅前には規模の大きな飲食店街があり、人間の背丈を越える雪の山の中でも営業しています。駅周辺には複数の温泉旅館もあります。

老舗で大箱。街の定番居酒屋『食い道楽』

地方都市には必ず一軒はある、宴会や冠婚葬祭関連で利用でき、一人客の晩酌にも応えてくれる大箱の食堂兼居酒屋。今回ご紹介する『食い道楽』は、まさしくそういう店です。創業は1976年(昭和51年)。駅前の目抜き通りである「阿桜通り」を歩くこと5分ほどの場所にあります。

外観

雪化粧をした東北の酒場は、実に味わい深いものがあります。地方の飲食店を巡る人には、このレトロな店構えも嬉しいのではないでしょうか。お店は広くとも、豪雪地帯だけに、店の入口は小さくて頑丈そうです。

内観

雪をはらって店内へ。正面に焼鳥台やネタケースを置いた大将が立つ調理場で、そこに面したL字のテーブルが広がります。奥には小上がりがあり、さらに2階は座敷というつくりです。

一人飲みは、大将前のカウンターが特等席でしょう。状況が落ち着けば、料理の話などを伺いながらお酒を飲むというのも良さそうです。

乾杯はキリンラガーで

冬の東北、寒暖差が一層ビールを美味しくしてくれます。トクトクとビアタンを満たして、それでは乾杯。

自家製のおしんこがお通しです。

品書き

お酒

アサヒスーパードライは、エクストラコールド:590円、大ジョッキ:870円。珍しくビール2社併売で、大樽のキリン一番搾り生ビール:590円も用意されています。瓶はアサヒスーパードライキリンラガー:各590円。

地元の人の人気はキープのボトル焼酎か、または地元の清酒・阿櫻1合:390円の様子。

期間限定・新酒初しぼり

さすが酒どころ。取材時は新酒がありました。季節によってひやおろしなどに変わっていくそう。

地元銘柄の阿櫻酒造の阿櫻 特別純米原酒初しぼり:600円や、木村酒造の福小町純米しぼりたて生原酒:600円をはじめ、秋田酒類(秋田市)の高清水新酒初しぼり:550円、秋田銘醸(湯沢市)爛漫本醸造新酒しぼりたて:500円が用意されています。

黒板メニュー

秋田名物、ダダミ刺:850円、馬刺し:840円や、山菜天ぷら:780円、かき酢:600円、郷土料理の山内いものこ汁:500円などが並んでいます。里芋のことを横手では「いもの子」と呼ぶそうです。これにセリや舞茸、比内鶏等の肉をいて「いものこ汁」になります。

品書き

昔からの看板料理は焼鳥です。一本税込価格100円と驚くほどリーズナブル。とりはつタンカシラレバーなど。その他、もつ焼(串焼きではなく、ホルモン焼きのこと):520円、鳥もつ煮:550円、牛バラ焼き:990円など。畜産が盛んな横手盆地ですから、やはり地域柄、モツ系料理が充実しているようですね。

肉料理の延長とも言えるのが、焼きそばです。ホルモンを具にした食べごたえのある焼きそばが、ここ『食い道楽』でも人気メニューです。居酒屋ながら、焼きそばを食べに来る家族連れや観光客も多いそうです。

牛バラやきそば:880円、特製ホルモンやきそば:660円、横手やきそば:550円など。

土地の人、土地の味、土地の酒。

ダダミ刺(850円)

ダダミとは、マダラの白子のこと。秋田の冬にダダミは欠かせないと言われるほど親しまれてきた酒の肴です。

一般的な白子ポン酢のように湯通しはせず、薄ピンク色の生で提供される、ダダミ刺。超新鮮だからこそできる旬の幸です。ニンニクと生姜を味のアクセントになる程度にあわせて、ちゅるんと頂きます。まろやかなコクが絶品です。

すかさず、阿櫻の上燗を。品のいい米の旨味とダダミの旨味があわさり、なんとも言えない幸せな余韻が広がります。

もつ焼き・焼鳥(100円)

食肉加工や卸しなど食肉に関わる企業や施設が多い横手ですから、もつ焼きで一杯というのもぜひ楽しみたいところ。目の前の冷蔵ケースにはハリ・ツヤのある串が積まれています。

40年以上提供してきた焼鳥は、肉の鮮度、串打ち具合、そして継ぎ足してきたタレのコクと秀逸で、1本100円とは思えない美味しさです。七味ではなく、カラシで食べるのがこのあたりの食べ方のようです。

爛漫本醸造新酒しぼりたて(500円)

限定のしぼりたての新酒も、1杯500円と良心的です。フルーティーで米の香りが華やかに広がりながらも、厚みのある余韻が心地いいお酒です。

焼きそばは食べずに酔いを楽しむ

ガイドブックなどでは焼きそばの人気店として紹介されている食い道楽ですが、焼鳥やホルモン料理をはじめ、ダダミなどのつまみを豊富に揃えた「食い道楽」は、もちろん酒場好きも楽しめる居酒屋です。

列車の乗り継ぎ時間を利用して、焼鳥をつまみに地酒で軽く一杯いかがですか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名食い道楽 本店
住所秋田県横手市前郷一番町7-13
営業時間営業時間
11:00~14:00( ランチ営業)
16:30~23:00(L.O22:30)
定休日
第2.4日曜日(基本)になります。
開業年1976年