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ある日、角館駅前を散策中に偶然みつけた「居酒屋 華」。まだ明るい時間ながら、暖簾が掲げられていたのでふらりと入ると、そこには優しそうな白髪の店主さんが下ごしらえをされていました。
ここは深い自然に囲まれ、400年前の街並みを今に残す歴史ある町・角館。
秋田新幹線の開業によって東京まで3時間台で結ばれたとはいえ、三方を深い山に囲まれた角館は、いまでもみちのくの奥座敷といえる風情たっぷりの地です。
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JR角館駅は市役所などが集まる町の中心から少し離れています。町へは徒歩で10分ほど。食事やお酒を楽しむお店も、やはり中心街のほうが充実しており、少し歩きます。
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城下町だった角館は、内町に立派な武家屋敷がいまも保存されています。この武家屋敷通り沿いにも蕎麦やうどん、焼鳥などを食べさせてくれるお店がいくつかあり、風情に浸りつつ冷酒を一杯…なんていうのも贅沢です。
そうして観光を楽しんだならば、そろそろ地元の人が集う土地の店の暖簾をくぐりたい。それが「居酒屋 華」です。
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老舗の一軒で、カウンター、座敷という配置。店内は大将が撮られた写真が多数飾られています。「いらっしゃい、どうぞ飲んでいって」と笑顔で迎えてくれました。
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気候がよい季節の秋田内陸部は、乾いた涼しい風が心地いい。もろちん、冬は雪に埋まる大変な場所でもあります。
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お酒は秋田酒類の「高清水」一本という大将。ビールはキリンを置いています。トトトとビアタンを満たして、さぁ乾杯。
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瓶ビール(キリンラガー600円)、冷酒高清水(750円)、樽詰めチューハイ(450円)など。基本は高清水をちびちび飲む感じでしょう。
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焼鳥、天ぷら、鍋物、そばやうどんもあります。古くから馬肉を食べる習慣があった秋田内陸部。ここにも馬刺し(750円)がありますね。
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そんな品書きがありますが、実は大将は有名な山菜名人。開店前に摘んできた新鮮な山菜の数々を振る舞ってくれます。常連さんと一緒に山菜採りにいくこともあるそう。
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これがどれも絶品。めんつゆで軽く浸けただけだよ、とおっしゃっていますが、独特なクセはしつこくなく、むしろのお酒を誘う程良い個性。
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いっぱいとれるから、たくさん食べていって!と自慢の山菜が次々。
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採れたての天然のわらびってこんなに美味しいんだ!と再発見。いつも野菜少なめ、魚や焼鳥ばかりの居酒屋ごはんですが、今日はものすごく健康的です。
大将のお人柄もあって、美味しく心地よく、土地を感じるすばらしいひととき。狸にばかされているのでは?なんて感じてしまうほど、不思議で楽しい酒場でした。
角館で飲む機会がありましたら、ぜひ山菜ずくしを。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
居酒屋華
0187-53-3387
秋田県仙北市角館町中菅沢92-31
18:00~22:00(準備ができ次第、18時よりも早く開けることもあるそうです・不定休)
予算3,000円