小出『やまに』途中下車必須!昭和40年創業の名店で生ホルモンを堪能

小出『やまに』途中下車必須!昭和40年創業の名店で生ホルモンを堪能

2022年1月18日

魚沼でホルモンといえば、豚シロの生のこと。今回は小出の中心街で、長年親しまれてきたホルモン屋の銘店『やまに』から、魚沼ホルモンの魅力をご紹介します。用意されているお酒にも土地の色があり、酒場好きが楽しめること請け合いです。

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三国街道とダム建設で栄えた町

小出の歴史

江戸と新潟を繋ぐ三国街道と魚野川の水運で栄えた町・小出。河岸段丘に広がる田園地帯だったこの町が大きく動いたのは、1950年代のこと。1953年(昭和28年)からはじまった奥只見ダムの建設が、町の経済を大きく変えることになります。

日本最大の重力式コンクリートダムを建設するために動員された労働者は延180万人。開発の拠点となった小出は好景気に沸き、労働者向けの飲食店街が形成されました。現在も小出には50軒以上の飲食店が立ち並び、奥只見ダムと並び、魚沼市の観光資源のひとつになっています。

小出駅で途中下車しよう

JR小出駅は関東と新潟方面を繋ぐ幹線ルート・JR上越線の主要駅のひとつです。ここから会津若松方面をつなぐローカル線・只見線が分岐します。上越新幹線は延長約6kmの浦佐トンネルで素通りしてしまいますが、在来線ならば小出駅で途中下車し、小出の飲み屋街を訪ねてみるのはいかがでしょう。

小出は仕事で数回訪れたことがありました。近隣には酒蔵が多く、仕事ではそちらを取材し、残念ながら飲み屋街は未訪問のままでした。

それからしばらくして、町おこしの一環として只見線に臨時列車を走らせるという企画があり取材に招待されたことがあります。列車には小出町出身の俳優・渡辺謙さんがゲストとして乗車しており、このとき渡辺謙さんから「小出(魚沼)のホルモンが絶品」だという話を伺いました。

小出の中心街は駅から1km離れている

そういう背景もあって、今回の小出取材となりました。目指す小出の中心街(飲み屋街)は、駅から魚野川を挟んだ対岸にあり、駅からは徒歩15分ほど離れています。路線バスもありますが、降雪時はタクシーが良いかもしれません。

その名も「本町」というエリアにはいるとアーケードに銀行、書店、飲食店などがみえてきます。山間の静けさに包まれた小出駅の打って変わって、こちらはレトロながらに栄えています。

二代目と三代目が守る伝統の味

飲み屋街のやや奥まった場所で暖簾を掲げる『やまに』にやってきました。創業は1965年(昭和40年)。ダム建設に限らず、国道建設、上越線の複線化工事など、数多の国家事業の中で賑わっていた時代に開店しています。河川改修事業により移転し今の建物になりました。

現在店を守るのは、若き三代目とその父の二代目。カウンター席に座れば、調理場にたつ父子の息のあった仕事ぶりがみられます。

さて、17時の口開けからまだ僅かにしか経過していないのですが、店内はほぼ満席状態です。カウンターは6席で、あとは畳敷きの入れ込みという構造。予約できない先着順のカウンターは常連さんが一人、二人で利用していて、あとは皆さん入れ込みに通されます。こういう立地ですが、40席ある『やまに』は週末になると予約がとれないこともあるそうです。

乾杯はサッポロ生ビール黒ラベルで

長年ビールはサッポロと聞きます。長岡出身の中川清兵衛がサッポロビールの初代醸造技師だったという背景のほか、土木工事に北海道から多くの人が加わったということも理由にあるようです。『やまに』をはじめ、新潟はサッポロを置く老舗が多いです。

ホルモン焼とサッポロビール、どこか北海道の酒場を連想する組み合わせを揃えて、では乾杯。

品書き

お酒

米処で酒処の魚沼、品書きの筆頭に日本酒がきています。

日本酒は緑川酒造(魚沼市)の緑川:400円、玉川酒造(魚沼市)の玉風味:400円、青木酒造(魚沼市)の鶴齢:400円、八海醸造(魚沼市)の八海山:400円。

樽生ビールはサッポロ黒ラベルで中:520円、大:1,000円。瓶ビールは、アサヒスーパードライキリンラガーサッポロ黒ラベルで大瓶:730円。

料理

メニューはシンプルで、ホルモンのほかは箸休めが数品しかありません。

ホルモン(シロ):380円、ハラ肉(ハラミ):380円、レバー:380円、ナンコツ:380円、ジンギスカン:420円、タン:420円、ハツ:420円、コブクロ:420円、ヘラ:420円、おぼろ豆腐:390円、キムチ:390円、すじこおにぎり:290円など。

新鮮!絶品、雪国のホルモンには日本酒も

ホルモン(380円)

『やまに』だけでなく、魚沼のホルモンは下茹でしていない豚シロの生が基本。ダム建設などの土木工事で集まる労働者に親しまれたものが現在まで継承されています。

なぜ生の豚シロなのかというと、魚沼観光協会の資料によれば、小出をはじめ魚沼は養豚が盛んな地でありと畜場もあることから、鮮度がよいシロが入手しやすいことが理由のようです。

最初はトロトロでだんだんとプリプリになっていくホルモン。広げすぎず豪快に焼いていくのが魚沼流。クサミは皆無で旨味と甘さは格別です。串打ちしたもつ焼きのシロになれている私も、これは新境地を発見した気分。豚ホルモンのイメージがかわります。

おぼろ豆腐(390円)

水がきれいな町は、お豆腐が美味しい。ほら、やっぱり!

ハラ肉(380円)

ホルモンについで人気なのが、ハラ肉。シロとアカで紅白コンビです。こちらもみるからに鮮度がよく、ハリがあり身がみずみずしく輝いています。

注文が次々はいるなかで三代目が肉を手際よく切り分け、そこに絶妙な配合で塩と胡椒をふりかけ提供してくれます。ものがいいことは、食べてみてもよくわかります。上品な肉汁が噛むほどに広がってきます。

ヘラ(420円)

早いときは暖簾がでてから10分も経たずに完売してしまう希少部位「ヘラ」。顎のあたりのナンコツで、ノドナンコツよりもさらに柔らかな印象です。コリコリとしっとりとした脂の美味しさがたまりません。

もくもくと日本酒のお燗を片手に5人前くらいを食べるベテランさんや、井戸端会議的にホルモンを囲んで日常の話に花を咲かせている仲良し奥様グループなど、老若男女が豪快に肉をやいています。

それにしても、ホルモンなどはこの鮮度・下ごしらえで一皿380円は安すぎませんか。

玉風味(400円)

ビールで喉を整えたら、あとは日本酒というのが一般的な飲み方のようです。こちらも、最初からそのつもり。魚沼のお酒を、魚沼の豚モツをつまみにぐんぐんと飲んでいく…。旅先のこういう時間が何よりも好きです。

梅シロップチューハイ(430円)

豚モツには、ほんのり甘い梅シロップもあうよ、ということで梅シロップチューハイを。口の中をリセット、さぁ、ホルモンの続きを頬張りましょうか。

〆の魚沼のおにぎりか、もう1軒はしごするか

人気のおにぎりは新潟のすじこと魚沼のお米だそう。そういう〆なら食べてみたいかも?

食べて飲んで、2千円ほど。リーズナブルかつ、ここでしか食べられない美味しさを満喫しました。日本酒でほろ酔いになって、いい気分。

予想以上に立派な小出の町、おにぎりで〆ずに、もう1軒訪ねてみるのも良さそうです。服にもつ焼きのニオイをつけて、ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名ホルモン焼き やまに
住所新潟県魚沼市小出島124-26
営業時間17:00~22:00(日祝定休)
開業年1965年