流行がめまぐるしく変わる街、下北沢。その中心で40年近く愛され続けるお好み焼きの老舗『だいこんまん』。名物は「当店でしか味わえない」と謳う特製の極太麺です。昼から夜まで中休みなし、週末は始発電車近くまで営業しており、サブカルの街で時間を気にせずほっと一息つける飲酒スポットです。
にぎわいの中心で、時が止まったような空間
演劇、音楽、古着の街、下北沢。駅前は新しい商業施設が次々と生まれ、常に変化を続けています。この街は、夢を追う若いクリエイターたちが多く集まることから、安くてボリュームのある「粉もん」文化が深く根付いており、お好み焼きの「激戦区」としても知られています。

そんな競争の厳しいエリアで、40年近くも変わらぬ暖簾を守り続けているのが『だいこんまん』です。

下北沢駅南口の賑やかな商店街にありながら、その一角だけがタイムカプセルのように時が止まっています。気取らない店構えと赤い提灯に誘われて、いざ昼飲みを。

店内は、鉄板埋込み型のカウンター席とテーブルが並ぶ、西日本に多い粉もん屋の雰囲気。新しいものばかりがもてはやされる街にあって、訪れる人に不思議な安心感を与えてくれる空間です。
客層は、近所の主婦友達やライブ帰りのミュージシャン、アルバイト終わりの学生に演劇関係者など、実に多彩。これぞ「シモキタ」といった人々が鉄板を囲む光景も、この店の魅力のひとつです。
名物の太麺モダン焼きを味わう

まずは瓶ビールをお願いします。銘柄はサッポロラガービール、通称「赤星」。
それでは乾杯!
メニューはお好み焼きの「関西”型”」「広島”型”」に加え、両者の良いとこ取りをしたような大阪お好み焼き「モダン焼き」も揃えています。さらには明石焼きや、鉄板で仕上げるおつまみメニューも手頃な価格で充実しており、どんな好みやシーンにも応えてくれる懐の深さを感じます。

注文したのは、やはり麺が主役の「豚モダン焼き」。
この店の嬉しいところは、すべてお店の人が一番美味しい状態に焼いて、目の前の鉄板まで運んでくれること。私たちはただ、ビールを飲みながらその時を待つだけです。

高火力の分厚い鉄板で一気に焼き上げられたモダン焼き。主役はなんといっても、特注の極太麺です。

口に運ぶと、まず感じるのは「もちもち」としたコシのある食感。そして、鉄板の上で少し時間が経つことで、麺の一部がカリッと香ばしく焼き上がり、この食感のコントラストがたまりません。甘めのソースと豚肉、魚介の旨味、キャベツの甘さが一体となり、極太麺がそれらをしっかりと受け止めます。

夢中で食べ進めていると、あっという間にビール瓶は空に。予想以上のボリュームに、お腹はすっかり満たされました。この後、もう一軒はしご酒でも、と思っていましたが、それは嬉しい誤算となりました。

ごちそうさま

流行を追いかけるのではなく、本物の味で勝負し続けてきた、お店の心意気を感じるひとときでした。安くて、美味しくて、居心地がいい。激戦区・下北沢で長く愛される理由が、この一皿に凝縮されています。
店内に響く、学生バイトさんがひたすら刻むキャベツの千切りの音も素敵でした。
店名 | だいこんまん |
住所 | 東京都世田谷区北沢2丁目14−3 |
営業時間 | 11:00 – 23:00 金土は朝4時(27:00)まで営業 不定休 |
創業 | 約40年 |