膨大な数の料理が手頃な値段で楽しめる、1977年創業の家族経営の店『酒場おく』。大阪メトロ四つ橋線の北加賀屋駅すぐ。大阪の中心街からやや離れているものの、ここは大変素晴らしく、酒場好きならば絶対訪ねる価値ある一軒です。
目次
まるで映画のセットのような「北加賀屋一番街」
梅田から地下鉄で20分。やってきました、北加賀屋。
「加賀屋」という店舗のような地名ですが、由来は両替商で新田開発に力を入れた加賀屋甚兵衛が開拓した「加賀屋新田」からきているそうです。加賀屋はやがて造船などの工業が進出し、大阪湾に面した阪神工業地帯の一画となります。同時に公営団地の建設も進み、北加賀屋駅は働く人と日々の生活をする人が交わる賑わいのある場所となりました。
工場や倉庫群、地下鉄の基地など大規模な事業所が多い北加賀屋駅周辺。産業がある街に酒場あり。駅の直上ともいえる場所に、レトロ感たっぷりの小さな飲食店街があります。
外観
その入口角に構える店が、今回ご紹介する『大衆酒場おく』です。大きな暖簾と黄色い看板が目印。ふたつある入り口のどちらから入っても大丈夫です。
火曜日定休で、土日も含め14時から開店する界隈きっての昼飲み処でもあります。明るい時間から店内は”明け番”風の人々やご隠居さんたちで賑やかです。夕方を過ぎた頃には満席になる賑わいに。このあたり、決して飲み屋街とはいえないのですが、『大衆酒場おく』は特筆するほどの集客があります。
その魅力をみていきましょう。
内観
暖簾越しの日差しと、高い天井に開放感のあるL字カウンター。飲み慣れたお客さんが静かにお酒を楽しむ姿と、忙しく働くお店の皆さん。すべてがとても気持ちいいバランスで、私には理想の酒場という雰囲気です。
創業は1977年(昭和52年)。ご家族で切り盛りされていて、大将と息子さんの阿吽の呼吸が素晴らしい。膨大な品数でつぎつぎ注文が入るのに、あっという間に提供されていきます。
品書き
お酒
樽生ビール(アサヒスーパードライ)中:450円、瓶ビール(アサヒスーパードライ、キリンラガー、サッポロラガー)ダイビン:500円。日本酒(白雪):250円、大雪大吟醸:350円、冷酒:500円。ハイボール:300円、チューハイ:300円、赤ワイン:250円など。
造り(刺身)
まぐろ造り:400円、たこ造り:300円、もんごいか造り:350円、馬さし:600円、きずし:300円、ひらめ造り:400円、てっさ:500円、中おち:350円、ひらまさ造り:400円、さざえ造り:300円など。
すし
まぐろにぎり:200円、はまちにぎり:250円、えびにぎり:250円、てっか巻:200円、たこ巻:300円、にぎり盛り合わせ:800円など。
一品料理
サザエつぼ焼:300円、ふぐ皮ポンズ:250円、たら白子ポンズ:350円、肉どーふ:250円、たいの子:300円、あじ南ばん:250円、ポテサラ:250円、シューマイ:250円、グラタン:350円、ミニお好み焼き:200円、土びん蒸し:700円、かす汁:200円など。
煮物
たいあら煮:400円、まぐろ角煮:250円、ねぎまだし:250円、バイ貝煮:250円、豚角煮:250円、豚足:300円、カレービーフ:250円など。
天ぷら
天ぷら盛り合わせ:400円、はも天:300円、いか天:300円、小えび天:250円、きす天:300円、たら白子天:350円、わかさぎ天:250円、玉ねぎ天:250円など。
フライ・串カツ
串(牛肉、豚肉、かき、白身、いわし、はも、えび、いかなど):各100円、とんかつ:250円、カキフライ:300円など。
季節感ある料理が安くて美味しい
サッポロラガー大瓶(500円)と土びん蒸し(700円)
まずは、サッポロラガーで乾杯。
さて、訪ねたのは秋頃です。関西の夏を代表する魚のひとつ、鱧がそろそろおしまいの頃で、秋の食材の王様、松茸が出始めた頃。そんな時期が食べごろの料理は土瓶蒸しです。料理屋の贅沢な料理のイメージですが、なんと『大衆酒場おく』の膨大な献立の中にも「土瓶蒸し」の文字があるではありませんか。
かしわは入っているものの、松茸がご覧の通りたっぷりとはいっています。これで700円とは驚きの安さです。これはビールから早いうちに日本酒へシフトしなくては。
わかさぎ天(250円)
秀逸な美味しさ、液体おつまみ”土瓶蒸し”を摘んでいると、お願いしていたわかさぎ天が出来上がりました。
ふっくらと揚がっていて、身はちりちり。塩をふっただけの味付けですが、わかさぎの上品な香りがふんわりと鼻に抜け、お酒がますます飲みたくなります。
値段の話ばかりするのはどうかと思いますが、10尾ほどで250円というのはスーパーのお惣菜よりも安いのではないでしょうか。
お酒・白雪お燗(250円)
やっぱり土瓶蒸しには日本酒でしょう。珍しい白雪(伊丹・小西酒造)の小瓶が徳利がわりです。
チューハイ(300円)
日本酒でほろ酔いになったところで、チューハイでちょっと休憩を。樽詰のほんのり甘いタイプです。
かす汁(200円)
関東の酒場では滅多にありませんが、関西で粕汁は酒場の大定番ですね。とくに新酒のシーズンともなれば、各地で地元の酒蔵から調達した粕汁が品書きに並びます。『大衆酒場おく』の粕汁は魚のアラ入りで野菜たっぷり具だくさんです。
安くて美味しい、店の皆さんの人柄も素敵なお店、『大衆酒場おく』。近隣にお住まいやお勤めの方がほとんどで、馴染みの皆さんが楽しく飲んでいる雰囲気に癒やされました。他の地域から訪ねる人は、この空気感を楽しむために「お邪魔します」と、そっと潜り込んで、そしてほんわか満たさた気分になってほしいです。
ついつい長く飲んでしまい、外はすっかり暗くなってしまいました。
混み始める前に、ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 大衆酒場 おく |
住所 | 大阪府大阪市住之江区西加賀屋1-1-49 |
営業時間 | 14:00~22:00(火定休) |
開業年 | 1977年 |