JR大阪環状線の鶴橋駅は電車のドアが開いた瞬間から焼肉の匂いがすることで有名です。それは駅周辺だけでなく線路の下も焼肉店でいっぱいだから。
今回はそんなガード下の焼肉天国から、珍しい串焼き肉の店「大門」をご紹介します。
東の山手線も新橋や上野ではガード下に飲み屋がひしめき合っていますが、そのパワフルさは西の環状線のほうが圧倒的。酒場の大将も飲みに来るおっちゃんたちも元気いっぱい。毎日がお祭りのような賑わいです。
大門も17時の開店前から人が集まりだして、準備ができていたら「もう飲んでってええで」とのれんを掲げてくれます。人と人の付き合い、人情でいっぱい。
小さなL字カウンターとわずかなテーブル席だけのこじんまりとした屋台風のつくり。そこに「うまい」と聞きつけた人や毎日のように顔を出すおっちゃんたちがどっと押し寄せる。その理由は、絶品の串打ち焼肉にあり。
ネタケースには牛ホルモンや正肉がぱんぱんに詰め込まれ出番を待っています。
ビール(580円)は生樽がアサヒスーパードライ、瓶ではダイ瓶でキリンラガー。このほか、コップ注ぎのマッコリ、樽詰チューハイ(樽ハイ倶楽部・420円)、酒(420円)が用意されています。飲み物の種類は少なめでもこれで十分。
キリンラガーの大瓶を傾けてビアタンいっぱいにしたら乾杯です。
キャベツとあまくとろみのある特製タレがセットされ、スタート。焼肉店でも焼くのはお店の人。開店と同時、一斉に飛んでくる注文に目にも留まらぬ早業で焼台に串を載せ、勢い良くまわしていきます。
バラ、タン、ほほ、ハラミ、キモ、赤せん、ツラミ、ミノ、心臓、コリコリ、せんまい、すなづりが焼肉のネタ。生肉ではで皿にざっくり盛られるせんまいとこぶくろ。
まずはバラから。予め焼肉タレの下味がついていてにんにくの風味に甘辛さがあり、そして噛むとじゅわりと肉汁が溢れてきます。この一本で引き込まれちゃう。左手に串、右手にビアタンで交互に口へ運びます。
第4の胃・赤せん。あかせんまいのことで、ぷりっとした食感とジューシーさが格別。
こりこりと呼ばれる軟骨など気になる部位がいっぱい。キモはレバー、心臓はハツです。こぶりではあるものの、どれも部位ごとに焼き具合や味付けが異なっており、一本口にするとあれもこれも食べたくなります。
串は1本140円~で、二本からの注文です。本当に何を頼んでも思わず「おぉ」と口がでます。
焼肉といえば自分で焼くのが一般的。でも串だとこんなにも違うのかと感動します。
一軒目の前に、軽く乾杯の練習という気持ちでゼロ軒目。さくっと30分飲むというのが似合うお店です。次々やってくるお客さん、店内に充満する焼肉の煙、威勢がよくとも親切な店員さん。圧倒的なライブ感が最高のおつまみです。
ちゃちゃっと30分、二千円ちょっとでほろ酔い。あぁ、素晴らしき鶴橋のガード下。
お後お待ちのようで、ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
大門
06-6773-0075
大阪府大阪市天王寺区下味原町1-6
17:00~(日定休)
予算2,000円