上総一ノ宮「タカラ亭」 房総の一宮駅前で永年親しまれる魚屋食堂

上総一ノ宮「タカラ亭」 房総の一宮駅前で永年親しまれる魚屋食堂

東京駅から房総方面は高速バスやJRの特急列車の本数も多く、都民に身近な海の街が続きます。

夏場は海水浴や別荘地として賑わいますが、お酒を飲む人ならばあえてオフシーズンに訪れてみてはいかがでしょうか。ひなびた雰囲気の海の街で懐かしい佇まいの食堂に入れば、きっと非日常の時間を楽しむことができるはず。

 

東京駅から房総特急わかしおで1時間の上総一ノ宮。今回はそんな千葉の食堂で郷土料理なめろうを肴に飲みたくてふらりと旅をしました。

 

目的の食堂は駅の目と鼻の先。跨線橋から営業状況が確認できます。よしよし、やっています。

 

「お_事」と”食”の文字が取れてしまった看板建築の建物。いいあんばいに時間が止まっています。ですが、その雰囲気とは裏腹に、早い時間から魚で飲みたい地元のノンベエたちで大いに賑わう人気店なのです。

 

すぐ近くの国道沿いに本店を構える魚屋「タカラ鮮魚」の駅前支店で、こちらも店頭で鮮魚や干物を販売中。ビールや日本酒もあるので、簡単なつまみとお酒を買って電車できゅっと飲むのも楽しそうです。

 

魚屋の横の扉をあけるとそこに広がるのは古き良き大衆食堂。哀愁がありつつも、ノンベエの皆さんの笑い声がそれを打ち消しています。

 

壁に貼られた短冊が品書き。書いてあるものが微妙に異なるのでぐるり見渡さなくては、注文後に「あ、しまった!タイあら煮があった」なんて事態に。

 

朝9時から営業とスタートは早く、漁師さんから出張帰りのサラリーマンまで客層は様々です。小上がりであぐらをかいてきゅっと飲むお父さんがカッコイイ。

 

日替わりメニューがここの真髄か。お刺身、焼き魚、煮魚、天ぷらとその日の仕入れで変化する定食は500円からと破格。定食で松竹梅と3段階になっているのは初めて見ます。

千葉のブランド水産物「九十九里地はまぐり」の焼き蛤やさざえ、目的の郷土料理・なめろうもあります。

 

刺身はさすが魚屋さん、種類豊富でしかも産地がどれも上総一ノ宮の近隣というのが嬉しい。600円からとリーズナブルで数人ならば色々食べ比べられます。

 

ビールは状態抜群、サッポロ黒ラベルです。大きいジョッキ(600円)で乾杯です。

 

待ってましたの”あじなめろう”。注文を受けてからトントンとリズミカルに包丁を動かして慣れた手つきで仕上げてくれます。見た目の派手さはないけれど、ねっとり濃厚、軽いしその風味が余韻を適度をさわやかに。

なめろうには日本酒でしょう。地元一宮の酒・稲花酒造の稲花正宗をお燗で。

 

同じく、ちょうど焼きあがったサザエも登場。磯の風味はその香りだけでお猪口を乾かせます。もちもちとした食感とコクのある海の味、奥の肝の苦さも、まるでお酒とあわせるために作られたよう。

 

この日の煮魚はさより、ぶり、キンメから選べるそうで、せっかくなので千葉を代表する魚・キンメの煮付けを肴に。

 

夕日の差し込む店内で、地元のお父さんたちの笑い声やテレビから聞こえる情報番組のキャスターの声をBGMに、徳利をか向ける時間。これぞ、今日味わいたかった非日常です。

 

〆にもう一杯のビール。飲み屋街はなく近隣の飲食店は点在している程度なので梯子酒は電車に乗ることになり、それならばあと一杯だけ。

 

電車の発車時間までの時間調整に軽くひっかけていく常連さんもいて、私と同じタイミングでお会計。駅前食堂ならではの光景です。

ぶらりと海岸の街へ梯子酒、安くて美味しいいいお店。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

タカラ亭 (タカラ鮮魚駅前店)
0475-42-8100
千葉県長生郡一宮町一宮2647
9:00~21:00(不定休・日営業多い)
予算1,700円