西成のガード下で1946年から続いてきた『ホルモンうどん権兵衛』が、新世界に移転し営業を再開。生の牛ホルモンで作るホルモン煮やホルモンうどんをアテに、キンキンに冷えたキリンラガーで乾杯しませんか。移転後の新店舗をご紹介します。
環状線のガード下から新世界へ
(2011年に撮影したJR大阪環状線のガード下。右側三軒先の緑色のテントが『権兵衛』。)
大阪市西成区。戦後の混乱期や高度経済成長時代の名残を残すこの一帯は、現在都市開発が進行中。これも時代の流れでしょうか。多くの歴史ある酒場や食堂が移転や閉店しています。
紀州街道をまたぐ大阪環状線の橋脚にへばりつくようにして、戦後すぐから営業していた『権兵衛』も立ち退きすることとなり、2020年11月末をもって閉店しました。
ホルモンを食べさせる店が多い西成・新今宮でも、頭一つ抜きん出て評判だったホルモンうどんの名店でした。「豚ではなく、牛の生ホルモンを使うのが創業時からのこだわりで、味付けも変えていない」と二代目のご主人から聞いたことがあります。
それから約半年後となる2021年6月21日、『権兵衛』は通天閣が輝く新世界で営業を再開。酒類提供自粛等、昨今の飲食店を取り巻く厳しい状況下での船出となりました。
移転先はアーケードがある商店街「新世界マーケット」の中。こちらもガード下に負けず劣らず、昭和の残り香に満ちた空間です。
広くて使いやすい、新世界の昼酒処
店頭にもテーブルを置き、店内もガード下時代よりも何倍も広く、お客さんが多くても安心して入れる雰囲気です。一人で飲みに来る若い人も増えたとご主人。
店頭にせり出して設置された旧店舗時代から引き継がれた鉄板では、焼そば、焼うどんを調理中。アーケードに食欲をかき立てる香りを漂わせています。
うどんや焼そばを食べさせる食堂ではあるものの、多くのお客さんはアルコールも目的でやってきます。ガード下時代と変わりません。営業時間は19時までなので、昼飲みの〆として訪れる人の姿もちらほら。
ホルモン焼うどん・そばは、中華そばだけでなく、なんと和そばもあります。
乾杯は、やっぱり瓶ビール。旧店舗の頃から現役の水冷式冷蔵ケースで芯まで冷えたものがでてきます。レトロなビアタンに注いだら、それでは乾杯!
品書き
飲み物のメニュー
キリンラガー(小びん450円・大びん580円)、アサヒスーパードライ(大びん580円)、日本酒「大関」(コップ380円)、焼酎「甲類 三楽」(コップ280円)、レモンチューハイ「アサヒもぎたてストロング」缶(350円)、ハイボール「ブラックニッカハイボール」缶(400円)。
食べ物のメニュー
ホルモン煮(300円)、ホルモン汁(300円)、ホルモン焼(350円)、ホルモン焼トマトソース(400円)、ホルモン焼韓国風(350円)、ホルモン鍋(600円)、焼きうどん・そばホルモン入り(500円~)など。
牛すじ肉でつくる煮こごり(450円)は密かな人気メニュー。週末は品切れになることも。
あとひく美味しさ、権兵衛のホルモン料理
ホルモン煮(300円)
肝と小腸を配合し、旨さと脂の強さを調節している権兵衛のホルモン煮。ガード下で電車の轟音をBGMに食べていた頃と、味は何も変わっていません。
クサミは皆無で、塩とダシとがきいています。汁は透明度が高く、全体的にモツ煮とは思えないほどあっさり。たっぷりと粒状の唐辛子をかけることで、二度美味しくなります。
使い込んだ鉄板で、昭和味で豪快に仕上げるホルモン焼や、一番人気のうどんもビールを進ませること間違いなし。消費税改定や小腸の高騰などで全体的に多少の値上がりはありましたが、それでも1,000円ちょっとでだいぶ満喫できてしまいます。
「外食が厳しい頃に移転したこともあり、新世界でやっていることがあまり知られていないかも…」と、ご主人。昔のお客さんがあまり戻ってこないことを寂しがっていました。
それでも、週末は噂を聞きつけたお客さんで満卓になることもあるそう。75年目の再出発です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | ホルモンうどん権兵衛 |
住所 | 大阪府大阪市浪速区恵美須東1-23-5 |
営業時間 | 営業時間 12:00~19:00 日曜営業 定休日 木曜日 |
開業年 | 1946年(2021年6月21日に現在の場所へ移転再開) |