大阪の酒場はパワフルです。意外な場所でもお昼から営業していたり、駅前にかかわらず瓶ビールが300円台で飲めたりします。あぁ、うらやましい。
今回は、そんな羨ましい酒場を、大阪は都島からご紹介します。1969年(昭和44年)創業の「酒の大丸」です。大阪で大丸といえばデパートが検索でヒットするので、お店を探される際には”酒の”をお忘れなく。
高度経済成長期に建設された団地等にみられる一階が商店街で二階に住宅というつくり。日中から渋い暖簾がたなびき、ノンベエを誘っています。こんなの、絶対はいりますって。
ここは駅前ということもなく、さほど人通りがない路地。ですが、酒の大丸の周囲には結構な数の飲食店があります。会社帰りというよりは、近隣に暮らす人々のための店という感じです。
正月を除けば毎日営業、しかも開店は15時からと早いです。JR大阪環状線 桜ノ宮駅から徒歩圏でもあるので、例えば大阪くいだおれの一軒目に使うなんていかがでしょうか。もちろん、地元の家族連れや常連さんのお父さんたちが醸し出す、マッタリムードに浸り楽しむのも素敵です。
店の中央に大きく配されたコの字カウンター。まさに正統派の酒場のつくりです。ショーケースには市場で仕入れたその日の魚や野菜がずらり。日が傾きそろそろお酒の時間。テレビから流れる情報番組のキャスターの声をBGMに、のんびりした雰囲気です。
白い短冊もよいですが、黄色紙に「あおりいか造り」なんて書かれると、少し冷静ではいられません。それは言い過ぎですか(笑)。今日のサービス料理の文字が誘います。
料理の名と金額の間に入る仕切り線をよくみると「代」の文字だとわかります。だからなんだ、と言わずに酔っ払ってくるとそんなのも楽しいものです。
瓶ビールはアサヒスーパードライの大びんが500円。なぜかキリンは少し安く一番搾り・ラガーともに480円です。酎ハイ類は350円。樽詰めの「樽ハイ倶楽部」のほか、甲類をソーダで割った酎ハイも別で用意されています。これもちょっぴり不思議。
さて、冷蔵ケースを見せていただきましょう。大阪の酒場はネタやつまみを見える場所に並べている店が多く、これも大阪らしさのひとつ。タコ、鮭、トビウオにイカ、ハモまで。もちろんマグロは定番です。
ブリ豆腐が激安で、300円。小さいのかと思ったら、しっかりボリュームです。日替わり料理も含めれば50種類以上、毎日のように通われている常連さんもいらっしゃるとのことで、これだけ揃えば飽きることもなさそうです。
キリンラガーの大びんを一本もらって、では乾杯!
お手頃な料理がびっしり並び、品書きを眺めているだけで幸せです。あれもこれも食べたい、でもしっかりボリュームがあるし…。
お隣の常連さんが頼んだハモ天ぷらが美味しそうで、こちらも便乗。お隣さんの食べ物に引きづられることは多々ありますが、いいじゃない。飲み屋では優柔不断でいたいです。
ほら、やっぱりちゃんとしたいいもの。350円とは思えない内容です。ししとうもついています。今日はなにが新しい?そんな会話をして注文を通す家族連れの会話を小耳に、こちらもまた夏らしく、夏の季語の鱧料理。
プライベートブランドだそう、ここのお酒は「山海川」。1合300円、目の前で注いでくれます。キリっとした味で、冷酒で飲めば夏にぴったりです。
元気のいいお姉さんとご主人、職人さんによって切り盛りされる安くて美味しいいい酒場。こんな酒場がある関西がうらやましいな。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
酒の大丸
06-6923-1397
大阪府大阪市都島区都島本通3-25-7
15:00~23:00(基本無休)
予算1,500円