大阪の京橋駅は、JR大阪環状線・東西線と京阪電車が交差するターミナル駅。
京阪モールやホテル京阪などきれいなビルが並び、私鉄京阪、大阪側の拠点としての風格が漂う駅を持つ街。
歴史は古く、東海道五十三次の終点が京橋であり、昔から商売の街として賑わい続けていた場所になります。
そんな文化的・交通的にも厚みのある街には、だいたい良い飲み屋があるというもの。
そう、ここは名酒場がびっしりとひしめき合っています。
特に立ち飲みが目立ち、早い時間から大変賑わいを見せています。
ということで、大阪の朝ごはんは京橋の立ち飲みから始めましょう。
岡室酒店直売所はこの中でもひときわ評判のいいお店。
朝9時の開店から閉店までひっきりなしにお客さんが出入りしています。
「はい、お姉さん、どうぞ、いらっしゃい!入れる入れる」
そう声をかけてきたのは店員さんではなくお客さん。大阪のノリって素敵。
お姉さん、東京から?
まさか一人で来たの?
代わり代わり、お客さんたちから質問が飛んできます。
ここは年中おでんがあり、だしが透き通っている大阪風。
「東京のやつは黒いやろ?あれはあかんは~」
やっぱりおでんは透き通っているのを好むらしい。
大根、ちくわ、こんにゃく、すじなど定番を適当に見繕ってもらい、これで300円。安っ!
ビールはまずはダイビンのアサヒスーパードライ。大阪はアサヒ崇拝の人が多く、「お、ねーちゃんアサヒを選ぶの?いーねー」なんて言ってきます。
ダイビンで430円は東京の最低価格と同程度。これまた安い。
二本目はサッポロを。
すみません、生まれも育ちも東京で、サッポロのある酒場で育ってきたのでこれが私の定番なんです。
おでんのクジラがうちのおすすめ!と、焼き方の眼鏡のお兄さんが教えてくれたので、それを。うんうん、もっちりしていて深い味わいですね。
東京からか?東京言葉が眩しいねー。この店で東京のしゃべりを聞くなんて何年ぶりだろう。
常連さん率90%、私以外はみんな毎日のように通う人だそう。
店員さんもお客さんも、見慣れないお客さんがきてもすぐに会話の仲に入れてくれます。わいわい話していると時間が経つのはあっという間。
おっちゃんたちオモロイやろ?と言われて、笑っていると「そこは突っ込まなアカン」と言われてしまいました。
みんな漫才をやっているように、飲みながらずっとボケとツッコミを繰り返しています。
すごいなー、東京の飲み屋も盛り上がるとはいえ、こういうにぎわい方はないですからね。
クジラの刺し身をつまみつつ、一人旅のはずが宴会のような朝食になりました。
どんなに混んでいてもぎゅうぎゅうに詰めて、みんなで盛り上がる、こういう雰囲気大好きです。
取材ー?
わぁ、俺たち東京デビューかいな。
どんどん若い人たち来て欲しいからよーく紹介してね!と、白髪の重鎮。
夜勤明けの人、年金生活の人、みんなで朝から大笑い。50代のおっちゃんから上は80代まで、みんなドッカンドッカンしゃべっています。
女将さん「女性のおひとりさんも大歓迎!店が明るくなっていいよね!」と。
この方がカウンターからすべてのお客さんの会話をコントロールされていてお笑いの司会者のよう。
店の雰囲気は女将さんが作っているのがよくわかります。
俺の料理はピカイチだぜ!と、こちらは社長ハン。女将さんのご主人です。
うちの店、楽しいでしょ。料理は安くて美味しく、お酒の品揃えもばっちり。ビールは常連たちのわがまま聞いていたら3社全部揃っちゃったそう(笑)
お造り、大皿料理、揚げ物まで幅広く、リーズナブル。
大阪の立ち飲みって、ぼんやりとしたイメージは合っても、実際に探してみるとピンとくるお店は案外少ないもの。
こここそが、ザ・大阪の立ち飲み酒場ではないでしょうか。
こんなお店、東京にはありません。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見なゆ)
岡室酒店直売所
06-6358-6598
大阪府大阪市都島区東野田町3-2-13
9:00~22:30(水曜定休)
予算1,400円